第3話
あれから数日がたち、両親の遺体もないまま葬式が終わった
親戚や両親の知人、会社の同僚の人たちは葬式に参加してくれた
あの日から僕は完全に塞ぎ込んでしまい、誰とも話さない日々が続いた
光一だけは、毎日のように様子を見に来てくれた
そんな光一に僕はか細く一言だけ「ありがとう」そうつぶやいた
このままじゃ駄目だせめて、光一には普通に接しないと
翌日も光一は様子を見に来てくれた
「よう渚、調子はどうだ?」
「まぁ、悪くはないけど良くもないかな」
僕は乾いた笑みを浮かべながらそう答えた
「渚、あんまり自分を責めるなよ?
あれは事故だったんだお前のせいじゃない」
「うん、それは解ってる。でも、あの旅行が無かったら
父さんも母さんも死ななかった。それだけは変わらない」
「渚・・・」
そう、あの旅行さえプレゼントしなければ
父さんと母さんは生きていたのだ。その事実だけは変わらない
「あぁもう、湿っぽいのは終わりだ」
光一は声を荒げてそう言った
「明後日は、高校の入学式だ。渚は準備出来てるのか?」
「一応準備はしてる。でもあまり行く気にはなれない・・・」
「渚、こう言っちゃなんだが、お前は今生きてるんだ
もしお前の両親が生きてたら、学校にはちゃんと行かせたはずだ」
光一にそう言われ僕は俯いた
「渚、別に悲しむなと言ってる訳じゃない
二人ともお前が普通に生きる事を願ってるんじゃないのか?」
「そうだね、学校には行くようにするよ」
普通に接していく事が出来るかはわからない
でも、光一のお陰で少しは前を向くことが出来た
「光一、高校でも宜しくね」
「あぁ、同じクラスになれるといいな」
僕は精一杯明るさを持った笑みを
光一は満面の笑みを浮かべ互いに言葉を交わした