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愛すべき“いつも通り”の日常  作者: ラフトL
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序章 5

だいぶ前回の投稿から間が空いてしまった…

ふと、気付きました…まだまだ説明回が続きますが、これってまだ本編に入ってない気がします。

 

 

どうしたものか。新人が3人共に個性的だ。まぁ、僕も個性的な方だと自負してはいる。具体的には、無愛想・無頓着・無気力などと良く言われるくらいには個性的だ。


おっと、また話が脱線している。お復習いとはいえ一応は業務内容の説明をしていたはず。気を取り直していこう。と、思ったのも束の間だった。


「上野課長。俺たちの事はもう良いんで、課長の事教えて下さいよ。俺たちの話はしたのに課長の自己紹介が名前しかないのは不公平です!」


不公平って言われてもなぁ…牧下くんは何だかグイグイ来るな。あれかな?僕の話を聞いてどこかしら共通項を見つけたいのかな?


仲良くなるには共通の話題があった方が良いというし、牧下くんなりの気遣いなのかもしれない。


「うーん、まぁ良いけど…」


僕の時は南田課長も説明は程々に色んな話を聞かせてくれたのを思い出す。互いの親睦を深めるという点ではとても有効だった。


南田課長はその辺りの話し方が上手かったな。自身の自己紹介に仕事内容を散りばめながら、僕を飽きさせずに尚且つ僕からも話しやすい様に誘導してくれた。


とはいえ、僕はそんなに話上手って訳ではないから少し迷ってしまう。一応、事前に言い訳はしておこう。


「うん。僕は話が上手くないからつまらないかもしれないけど、僕の事を知ってもらう良い機会だしね」


牧下くんが自分たちの恥ずかしい話だけでは不公平だ、と言ったのは本心らしい。計画通り、とニヤリと笑い頷く。


ライトイさんは自身の話題から話が離れる事にホッと安心したように頷き、クレフトヤーヌくんは僕よりも上司っぽく暖かい目をして小さく何度も頷いた。…何でさ。


「じゃあ…そうだね、まずは僕がなんで『アベ』って呼ばれるかって事から話そうかな。

ご存知の通り、20年前この国が中心となって『新人類』の人権・保護制度を確立したのは有名な話だね。

今でこそ人類世界と魔人世界を繋ぐ『門』と言うけど、当時はその見た目の通りに“罅”と言い表していた。

そして、その“罅”を視認出来る少数の人たちを調べた結果が人類の遺伝子との差違だった。それが起因で新人類だと言われていたけど、後から判明したのは“罅”を視認出来るのは『人間の遺伝子』に『魔人の遺伝子』が含まれているから、という事。

そこで本題だけど、僕は“罅”を視認出来る側なんだ。つまり、人間に魔人の遺伝子が含まれた新人類。別の呼び方で言うと『魔人間-append-』。だから、アペンド→アペ→アベってあだ名なんだ。安直でしょ?社長のセンスって変だよね」


そう、僕は魔人間という種族にあたる。単純に人間と魔人のハーフだという人も最近では居るが…20年前、門が開く以前に存在している魔人間はほぼ『隔世遺伝』に因ってもたらされたと言われている。


そもそもの原因の1つなのだが…この国では“神隠し”という、人が突然行方不明になる事件が昔から度々起きていた。しかも、その内の数名は『数年後突然帰ってくる』という奇怪な現象。


もちろん、単純に失踪したり他国から誘拐されてたり、事件等で遺体が隠蔽されて発見されていない方もいるだろう。だから、突然行方不明になる=神隠しではない。


それでも、神隠しの真実は部分的に解明されている。その内容は、“罅”を視認出来ない人間が偶然“罅”に触れ、何らかの理由で門を開いて魔人世界へ渡ってしまうという、というもの。


偶然渡った魔人世界の高濃度な魔素に適応出来なかった者は文字通りそのまま帰らぬ人となった。しかし、適応してしまった者は、姿はそのままに遺伝子が魔人のものへと変質してしまうらしい。


この場合は進化を遂げたとも言えるが…現段階では非人道的だという理由でその辺りの実験・研究は中止されているので未だ謎多き部分だ。


そして、魔人世界の魔素へ適応し遺伝子が変質した者が再び何らかの理由で魔人世界から人類世界へと戻って来た後に子孫を残す。その子孫に魔人へと変質した遺伝子が『隔世遺伝』として表れる、という訳だ。これが一般的に言われる魔人間・新人類の正体だが、悲しいことに僕は特殊な例であり、これには当てはまらない。


尚、残念ながら現代では存在しないが、魔人へと変質した人間を『始祖』と呼んだりする。人間として生まれ、不幸にも始祖となった方達だが、それを知らないまま人間として亡くなった方達の人権を尊重し、始祖の種族は人間のままになっている。


「課長が、アペンド…あの噂、本当…なのかな?もし本人なら…感激、ですね。」


「あぁ、アレね。でも、課長のイメージと合ってないよね?噂の時点で信憑性にも欠けるものじゃない?」


「いや、他人を自身の想像通りに見てはいけない。能ある鷹は爪を隠すと言うだろう?噂は噂として留め置き、直接本人に確認すれば良いだけではないか」


僕の話を聞いて3人は身を寄せてヒソヒソと小声で話合い始めた。早速新人さん同士仲良くなってるが、いきなりの疎外感に寂しさを覚える。


「課長!あの噂って課長の事なんですか?」


「噂って何?何か出回ってる話があるの?!」


やだ…何それ、怖い。今の話の流れなら魔人間の噂って事だろうけど、本社勤務の魔人間は僕だけ。つまり、内容は分からないが僕の噂だという可能性が高い。何か噂になるような事はしてないはずだけど…


「世間での噂…って言うか都市伝説的なものですかね。実は不老不死とか、瞬間移動するとかに始まって、眼力だけで魔人の暴徒を鎮圧したとか、魔人世界の現魔王と婚約してるだとか…まぁ、色々聞きますね。

研修中に聞いたのは『噂はほぼ真実』だということと『本社にその魔人間が居る』って事くらいでしたけど?」


「…因みにだけど、研修中に聞いたのは誰から?」


「確か、陸井課長…という方、でした」


人事課の陸井課長だったのか。そりゃあ、人事課の人が研修の担当をするのはおかしな事じゃないしな。しかし、陸井課長って事は他にも色々と言い回っているはずだ。


なにせ、人事・経理部門の空知部長と経理の海家課長、人事の陸井課長の3人は『陸・海・空情報網』と呼ばれるほど話好きなお三方で、他人のプライバシーは毛ほども気に掛けない事で有名だ。


反面、人心掌握も巧く嫌われたり疎まれたりは殆ど無い。魔人世界の情報にも長けているので情報戦にはめっぽう強く、会社からは重宝されている人材だったりする。


「…はぁ。その噂っていうのも誇張表現が無ければ本当なんだろうね。思い当たるのはあるし」


僕からすれば不老不死とか瞬間移動は全く違うが、何も知らない者が傍から見たらそう見えるような事はしている。世間一般で都市伝説になる程って、魔人間への偏見に繋がらなければ良いんだけど…


今まで特に考えた事は無かったけど、たまに社長が僕を見てニヤついてたのはそういう話を耳にした時だったのかな。今後は気を付けていこう。


「不本意だけど、そういう噂が出回るのも僕が魔人間で、継承した力が原因なんだと思う。

本来、魔人も魔人間も魔素に適応した人間も魔人世界でないと『魔法』は扱えない。それは知ってるよね?」


「うむ、魔人世界の魔法と人類世界の科学の相違点と類似点であるな。

魔素の存在する魔人世界、魔素が存在しない人類世界。

魔人世界は魔素を扱い、魔法にて発展してきた。人類世界は魔法の代わりに科学で発展してきた。

魔素の存在しない人類世界では魔法が使えず、魔人世界では魔法がある故に科学が成り立たない、という理論であるな…です」


流石は元部族長。魔人世界だけでなく人類世界の情報にも精通しているみたいだ。最近では中・高の世界史なんかでも軽く触れるらしいけど、詳しく学びはしない。


「うん、クレフくんありがとう。

魔素は人類世界には存在しないから魔法は使えない。魔法とは自身の体内を巡る魔素と大気中に漂う魔素を感応させて放つものだからだ。まぁ、人類世界でいうところの放電現象を自分の意思でやるみたいなものだね。

それで、僕は『術式』という3代前の魔王…通称“魔術師”の力を継承していて、それは元来の魔法とは少し違うんだよ。詳しくは省くけど、術式は人類世界でも使用出来るんだ。だから、それが殆どの噂の元なんだろうね。

因みに、現魔王は“魔術師”の孫にあたるから僕とは遠い親戚みたいな感じかな。同じ『術式』使いだしそれなりに話すくらいはするよ。だから、婚約はしてないからね。断じて婚約者なんかじゃない。」


うん。あの魔王と婚約なんてありえない。多分、僕は彼女に好かれてはいないだろう。何故なら、いつもいつも睨まれるからだ。普通に会話する間柄だから嫌われている訳ではないと思うが、僕が訪ねる毎に「また来たのか」「お前は暇なのか」とネチネチ小言をもらう。


だから、魔王と婚約なんていう噂はキッパリと否定しておく。ちゃんと否定しておかないと今後どんな噂が出回るかわからないし。


あの引き籠もり魔王の事だからそんな噂は知らないだろうが、もしその噂が本人の耳に入っていたらと思うと胃が痛くなる。



転勤の引き継ぎや顔合わせ等は殆ど終えましたが、引っ越し作業が遅れててあまり書き進められてないです…orz

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