序章 4
また説明回です。おかしな部分があれば修正しますm(_ _)m
「さて、研修中にも説明があったと思うけど、対策課がやる業務を簡単にお復習いするね。それが終わったら社内を案内して今日は解散です。疲れてるだろうけどもう少し我慢してね。」
3人共静かにハイと返事をしてくれる。うん、素直な新人さんで安心だ。社長の『活きの良い』って何だったんだろう。
「まず、『対策課』の基本的な業務は人類世界・魔人世界の治安維持補助が主になります。
人類世界には警察や自警団、自衛隊・軍といったものはあるけど、それらに対応出来ないものや介入が難しい用件は総合対策部が請け負います。
対策課に業務が回るまでの流れですが…まず関係各所より要請があり次第、真偽確認の為に各調査が行われます。これは、悪戯や狂言、テロ行為であったりというものを危惧してのものですね。
その後、受理された案件は当部署の施策課によって、僕ら対策課の実力・能力に合った業務内容が立案されます。新入社員である君たちはまだ戦力には入っていません。なので、まずは施策課の指示の下で各人の能力判定を受けてもらうけどそれは明日以降になります。
後は施策課から通達された日時に業務のスケジュールに沿って実行するのが主です。
しかし、緊急時は真偽確認・各調査を省き、各自現場急行になります。なお、施策課から僕が指示を受けて、その後に各々への業務内容の伝達をします。伝達後は自己判断を含めた業務になる事を心得ていて下さい。
因みにですが、人類世界での業務では緊急要請は殆ど無いです。…が、魔人世界からの要請は殆どが緊急要請です。」
「…あの、いいですか?」
ライトイさんがおずおずと右手をチョコッと挙げる。どうぞ、と促すと少し口篭もるので僕は首を傾げる。
「…あの、とても……その、個人的なことで…すいません。…緊急要請は…その、やっぱり夜でも……ですか?」
あぁ、なるほど。言いにくいのも納得だ。
「それは心配しなくても大丈夫ですよ。説明の続きにもなりますが、先程の緊急要請業務はあくまでも勤務時間中の場合です。
今のところ勤務時間外での緊急要請は僕ともう1人が請け負ってます。これは固定ではなく立候補の結果ですけどね。時間外労働の規約もしっかりしてる会社なので、僕ともう1人の方は希望して請けてます。
因みに、ここ5年間の勤務時間外緊急要請は多くて月3回です。時間外出勤も希望であれば僕に言って下さい。」
僕ともう1人…東間さんという方は少しでも給金が増えるなら、と進んで時間外労働に勤しんでいる。いや、これは給金が少ないという訳では無い。僕も東間さんもとある事情があってのことだ。
ともあれ、残業代が出るからと言っても若い子たちは進んで残業したいなんて思わないもんな。一応、僕も上司になるのだから部下たちの気持ちを汲み取れる様にはしないと、等と思っていたのだが…
「あの、上野課長。ライトイさんが聞きたいのは残業代の有無じゃないですよ?」
牧下くんから僕が思っていた事は検討違いだという指摘が上がる。じゃあ、何だろうと再び首を傾げる。
「いや、女の子って仕事でも身嗜みは気になるじゃないですか。緊急招集があってもすぐにって難しいと思うんですよ。他にも恋人と一緒の時なんかも…だから、夜もなのかって質問だと思いますよ」
…おぉ、そんなこと僕には思い至れなかったよ。そっか、女の子って身嗜みに準備が掛かるって言うよね。
僕は恋人がいたことも無いから気付けなかった。孤児院に居た時もお母さんは僕が起きた時には既に動いてる人だったし、上の妹はまだ小学生だったし…いや、僕は30手前の社会人なんだ。そんな言い訳は通用しないな。
「ライトイさん、検討違いな返答しちゃってごめんね。今後はもう少し配慮出来る様に努力するよ」
ライトイさんへ謝罪をすると一度目を合わせてはくれたが、怒ってしまったのか涙目になって俯いてしまった。
「あぁ、その…上野課長殿。今のは牧下殿が悪いと思う、です。」
僕がどうしたものかと困惑しているとクレフトヤーヌくんはそんなことを口にした。
「ライトイ嬢は夜間の緊急招集に際して問い掛け、上野課長殿は自身らが担当していると答えた。よって、ライトイ嬢の杞憂はその時点で晴れたのだ。
つまり、牧下殿の補足は完全に蛇足だったのだ、です。」
「え?なに?俺またやっちゃった?!」
あ、なんとなくだけど分かった。社長の『活きの良い』って意味分かった。ライトイさんはともかく、牧下くんとクレフトヤーヌくんは個性的かも。
クレフトヤーヌくんの言った事が真実だと裏付ける様に、ライトイさんはライトイさんで恥ずかしそうに俯きつつ横目で牧下くんを恨めしげに見てるっぽい。…器用だな。
「えっと…クレフトヤーヌくん。無理に敬語を使おうとしなくて良いよ?」
「上野課長殿、心遣い感謝する。私は種族柄や族長なる立場だった故、威厳ある態度や崇高なる者の立ち振る舞いを求められていた時の癖が残っているのだ。寛大な御心で御容赦頂きたい。
それと、私の名は些か呼びにくいと度々苦言を呈される。なので『クレフ』で構わない」
……堅い。上に立って、部族を纏める者としての立ち振る舞いが求められたのは理解出来るけど、未だに堅いよ。
「それと、牧下くん。『またやっちゃった』って何?」
「あぁ…実は俺ですね、良く空気が読めないって言われるんです。こう、思った事をそのまま口に出しちゃうんです。それで、結構他人を傷付けたり、今みたいに恥かかせちゃったりしてて…実際、友だち居ないんです。かなり痛くて寂しい奴なんですよ、俺。上野課長も同類っぽいなって思ってたりしてちょっと親近感湧いてきたんですけど……って、また!すいません。本当にすいません!」
わお。強烈だなぁ。そっか、僕ってそう見えるのか。いや、合ってるけどね。同年代の友人と呼べる親しい人なんて居ないしね。
でも、同僚や上司との付き合いは多いし、孤児院に帰れば慕ってくれる妹弟はいっぱい居るし寂しくはない。
「…もしかしてだけど、ライトイさんは恥ずかしがり屋さんっていうか、結構人見知りする方なのかな?」
「……そう、です。私、凄く人見知りで…ある程度……仲の良い人なら、普通に話せるん…ですが。それで…好戦的な、獣人種が多い中で…生き辛くて、人類世界に…逃げて、きた…臆病者……なんです」
人見知りだと言いつつも、涙目の上目遣いでオドオドモジモジしながらも答えてくれる。うん、かわいいから許す。…って、違う!何だよ、3人共凄い個性的じゃないか。
社長め…面白がって僕に丸投げしたんだな、きっと。
次の投稿は少し間が空くと思います。