しかし、そんなことはこちらの都合にすぎない。
写真の枠からはみ出そうな身体。
しかしながら、不自然にひょろひょろとしている。
それは撮影者の都合にすぎない。彼の技術の問題だ。
視るからに病的な身体は無言で人々に何かしらを訴えている。
あきらかに大勢が備えている、人間という概念から逸脱している。
しかし、そんなことはこちらの都合にすぎない。
あなたは何を見ているの?
整った顔立ちは、ただそれだけに余計に悲しみを誘う。
よく筋の通った鼻梁は、周囲の人間の苦しみを浮き彫りにする。
しかし、そんなことはこちらの都合にすぎない。
あなたは何を見ているの?
どういうつもりでそのとき、その瞬間が後世まで晒され続けることを了承したのか?
鼻筋に微かに入った力は、そのことを暗に示唆している。
わずかな皺が、年頃の女性らしくしっとりとした肌を台無しにしかけた。
完璧な構築物が多少なりとも崩れたが、それは珠に疵ということにはならなかった。
むしろその方がより見る人の意識を感動に持って行く。
しかし、そんなことはこちらの都合にすぎない。
病み上がった姿を晒した、いや、現在完了進行形で晒し続けることを、あなたが知っていたとは思えない。
カメラのレンズをけっしてみない。
暴力とわかっていながら甘受しているのはどういうわけ?
白い目をこちらに向ける、そんな眼差しが全身の毛を総毛立たせる。
しかし、やはりそんなことはこちらの都合にすぎない。
きっと、あなたはあなたでしかなかった。
そんな感慨も、しょせんはこちらの都合にすぎないのかもしれないが。