5-19改
「――みんな! 待たせてごめん!」
――三年生クラス前廊下。
階段の付近で待っていたその姿を見つけ、ボクが声をかけると……すぐに甲呀が返事を返してきた。
「遅いぞ、泰介。いったいスマホを探すのに何分かかっているんだ」
「だからごめんって! スマホ自体は案外早く見つかったんだけど、長山くんが……」
「む? 長山だと? ……お前と同じクラスのか? それがいったいどうした?」
「え? いや……何かよく分かんないんだけど、とりあえずボクのスマホが頭に当たって、それで……」
それで…………。
「……?」
どう説明したらいいものか? それを必死に考えていると……どうやら待ちきれなくなってしまったらしい。甲呀が先に口を開いた。
「……ふむ。まぁ、よくは分からんが、とりあえずは何かしらの事情があった、ということだな? ならばもうこの話は終わりにしよう。――そんなことより泰介……もう昼休みの時間がほとんど残されてはいない。さっそく次のミッションに取りかかろうと思うのだが、準備はできているか?」
「え? ……あ、う、うん! それはもう大丈夫だよ! ボクはいつでも行けるよ!」
――すでに終わったことをいつまでも気にしている場合じゃないな。そう思ったボクは、ちゃんと気合が入っていることを甲呀にアピールするために、がっ! と握り拳を前に突き出して続けた。
「――さぁ! 甲呀! 次はいったいどんなミッションなの! 次こそボクは完璧なまでにそれをクリアしてみせるよ!!」
「うむ。気合は十分のようだな……ならば伝えよう。次のミッションは――〝アレ〟だ!」
ズビシッ! ――もはやこの流れにも慣れてきた。
ボクはさっそく甲呀が指差した方を見てみると、そこには……!
「――ッッ!! 大変だ! あの女の人……ボタンが外れて〝ブラジャー〟がほんの少しだけ見えてしまっている!!」
そう。そこにいたのは……今回は一人でスマホをいじっている状態ではあったけれど、Yシャツのボタンが一か所だけ外れ、桃色の〝ブラジャー〟…〝桃ブラ〟が見えてしまっていた女子生徒の姿だった。
甲呀は〝桃ブラ〟を指差したまま続ける。
「そうだ。……長引くと色々と面倒だから、お前の言葉を代弁してやるが……泰介。このままではあの女子生徒が〝変態〟扱いされてしまうのも時間の問題だ。――早急に〝アレ〟を解決させろ!」
「おっけー! まかせておいてよ甲呀! さっそく行ってくるね!!」
ああ! 甲呀が力強く頷いたのを確認してから、ボクはすぐに駆け出した。
そして!!
「へい! そこの――」
――いや、待てッッ!!!!!
ズザザー!
刹那、ボクは〝急ブレーキ〟をかけた。……幸いなことに、〝桃ブラ〟はスマホの操作に夢中で、そんなボクにはまだ気づいていない。
そこでボクは、改めに改めまくって、一回目と二回目……それらがなぜ〝失敗〟したのか? 考えてみる。
落ち着け、ボク……一回目の失敗の原因は何だった? ……そう、直接〝触った〟からだ。
ならば二回目は? ……写真に撮って〝見せた〟から…………。
――〝触る〟のもダメ。
――〝見せる〟のもダメ。
――では、あとは? あとは、〝何が〟残っているんだ……???
……。
……。
……。
……。
……。
……。
……ボクは、考えた。
考えて、考えて、考えに、考え抜いて、そしてようやく、ある〝結論〟にたどり着いた。
――その、〝結論〟とは……!!
バッ!!
次の瞬間、ボクは〝走った〟。――向かう先は、甲呀たちのいる階段……その〝先〟!!
「――泰介さん!?」
「――お、おい! おまっ…まさか〝逃げ〟んのか!?」
「心配しないで!!」
途中、そんなボクを心配したのか、愛梨さんたちが声をかけてきたけれど……ボクは走ることをやめずに、それにすぐに返した。
「――すぐ、戻るから!!」




