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「……ッッ!!! あの女ぁぁあああ!!!!!」
「だから師匠、落ち着いてください。これも泰介が〝成長〟するためなんです。……さて、では大師匠、お願いします」
「は~い❤ 先生参上!」
――と、そこに……たぶんこうなることを予想して甲呀が呼んでいたのだろう。ゆりちゃん先生が現れた。
ゆりちゃん先生はそれから、「ちょっと待っててね~❤」と何やら救急バッグから道具を取り出して……って、もう無駄だよ、ゆりちゃん先生。いくらゆりちゃん先生がネクロマンサーでも、すでに屍となっているボクをどうこうするなんて――
ドムドムドム――テンテンテレレン♪
HPが全快した。
「――はっ!!? そんなバカなッッ!!!」
がばぁ!! 急いでボクは起き上がって身体を確認したけれど……ない! どこにもないっ!! 傷が…否!! 踏まれたその〝形跡〟すらもが!!!!!
「――はい、終わり♪ 山田くん、また何かあったら呼んでね?」
「ありがとうございます大師匠。お手数をかけます……」
いいのいいの~♪ そう笑顔で答え、ゆりちゃん先生は去って行った。
……どうやらゆりちゃん先生はネクロマンサーどころではなく、〝神様〟か何かだったらしい。たぶんこの学校内にいる限り、どんなに重大な事故があっても死傷者は一人も出ないことだろう。……なるほど。どおりで〝お姉ちゃん〟が通っていても全員〝無事〟なわけだ。
「――って! いやいや! それどころじゃないよ甲呀! 何で今ボクは殺されたのさ! オカシイよね、絶対!? 今回はボク、ちゃんとできていたよね!!?」
「だからオカシイのはお前だと何度も言わせるな。捲れ上がったスカートの中身をスマホで撮るなど……お前は〝盗撮〟という言葉を知らんのか? お前の姉を押さえつけるこっちの身にもなってみろ」
「……へ? 〝盗撮〟??? ――それってあの、アイドルとかの私生活をカメラに写して、【現役アイドル○○、男性と自宅へ】って記事に載せる、あれ???」
「だから合ってますけど全然違います、泰介さん……本当に何にも知らないんですね……」
「はぁ、やれやれ……これはもう、〝アレ〟だな。お前の存在自体が〝罪〟だと言う他ないな。……よし、〝最後の手段〟だ。黙って〝死ね〟」
あ……あれ??? ……何で? 何がいけなかったの? ボクはちゃんと……え? ちゃんとやったはず……だよねぇ???
……はぁぁぁ~~~~~……もうほとんど諦めた状態になりながらも、愛梨さんたちはものすごく、仕方なく、といった具合に、〝死んだ魚の目〟でボクを見て話した。
「……泰介さん。今の場合はこんなふうに、〝ジェスチャー〟を使って教えてあげるといいんですよ~。絶対に写真を撮ったりなんかしちゃいけませんよ~」
「あと、ジェスチャーを使って教える場合は~、こう……ん、んんんっ! ……って具合に、咳払いとか、とにかく〝さりげなく〟やるのがコツだな。分かったか~?」
「……う……うん……分かったよ。胸に彫り込んでおくよ……」
……なぜだろう? なぜ、ボクの胸の中は、こんなにも〝悲しみ〟に溢れているんだろう?
……〝知らない〟って、本当に〝罪〟……なのかな……?
「……さて、アドバイスの時間はもう終わったようだな? では残り時間も少なくなってきたことだし、さっさと次のミッションを始めるか?」
「……そ――」
そだね。言いかけて、ボクは慌てて叫んだ。
「――って! ちょっと待って甲呀! その前にボクのスマホ! ヒモなしバンジージャンプさせられたボクのスマホを救わないと! あれが行方不明になったらボクはもう〝破産〟だよ!」
「……ふー……いいだろう。さっさと取りに行ってこい。――俺たちは、次は三年生のクラス前廊下で待っているからな?」
「分かった! 急いで行ってくるよ! ――みんな! ちょっと待ててね!」
ボクはみんなに手を振り、それから急いで駆け出した。




