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――そして翌、十六日火曜日の昼休み。〝実戦〟の日。一年生クラス前廊下
「――よし、ではこれからさっそく、話し合いで決まった〝作戦〟を決行する。……泰介、準備はいいか?」
決まった〝作戦〟……それを簡単に説明すると、以下のような内容だった。
一、マナー(常識)について覚える。※意識改革をする。
二、即効性を高めるために、〝実戦〟式とする。……ちなみに実践ではなく、実〝戦〟がポイントだそうだ。
三、まずはボク一人だけでそれを行い、隠れて見ていたみんなが後でその改善点を述べる。
四、それをふまえた上で次の〝実戦〟へ向かい、最終的には克服を目指す。
――以上だ。とても分かりやすく、そして簡単な内容だった。
「もちろんだよ、甲呀! さっさとボクの〝変態性〟を治して、そして次の人へ繋げよう!」
「……だと、いいのだがな」
「ん? 今何か言った?」
いや、こちらの話だ。そう言ってから甲呀は、ビシリ! と前方を指差し、最初のミッションをボクに伝えた。
「泰介、すぐそこで会話に夢中になっている、短髪の二人組の女子生徒が見えるな?」
「え? ……うん。すぐそこ、って言う割には結構離れてるけど、いるね? ……それがどうしたの?」
「右側の女子生徒の〝スカート〟を見てみろ」
「〝スカート〟??? どれどれ……」
ボクは目を凝らしてそれをよく見てみると……あ!
「気づいたか……そうだ。あの女子生徒、おそらくどこか汚れた場所にでも座ってしまったのだろう。スカートが〝ホコリまみれ〟になってしまっている。――お人好しの日本人としては、あんな状態になっている者を見すごすわけにはいかん。……つまりは、だ。泰介……お前の最初のミッションは、〝あれ〟、だ。あれをお前が思うように、〝何とか〟してこい」
「〝何とか〟……って、そんな簡単なことでいいの? それじゃあ、やったところで何の意味もないんじゃ……???」
「いいから行ってこい。――それとも、お前は最初から〝難しい〟ミッションに挑戦する気なのか?」
……ああ、なるほど。言われてみれば、ゲームとかもそういうふうにできてるもんね? 最初はメチャクチャ簡単なんだけど、後の方に進めば進むほどクリアが困難になっていく……そういうことか。
「――よし、分かったよ甲呀!! 行ってくる!!」
ボクは気合も十分に…否! 〝二十分〟くらいに返事を返して、それから歩き出した。
――ボクが〝普通の人〟になるための、その〝最初の道〟を……!!




