5-9改
――ずるっ!
……思わずコケてしまった。
……な、何だ。何を言い出すのかと思えばそんなことか……やっぱり愛梨さんも、所詮は出会ってまだ二週間……分かった気にこそなってはいるけれど、結局は――
「――何!? それは本当か、アイリサン!!」
「う……ウソだろ!? 信じらんねー! だって……えっ!? もう〝高校生〟だぞ!? いくらなんでもそんなことが実際にあるわけが……!!」
「……あれ?」
何か……変??? 聞くと、甲呀と鏡さんは即答した。
「変、などというレベルではないぞ、泰介? 高校生にもなればもはや身体つきは大人と何ら変わらん。譬え仲の良い姉弟であったとしても、〝常識〟的に考えて、もうその年齢で共に風呂にはいるのは〝オカシイ〟というものだ」
「つーかお前、そんなグラドルみたいなスタイルの良い姉ちゃんの身体を見て、〝何とも〟思わねーのかよ! いや、それこそ〝変態〟的に考えなかったとしてもだ! 年頃の男と女がいっしょに風呂に入っている時点で〝オカシイ〟とは思わねーのか!?」
「……い、いや、あの…………べ、べつに??? ――だって、〝混浴〟とか、それこそ、〝家族風呂〟だとか、そういうのを備え付けている温泉旅館だっていっぱいあるわけでしょ? ……え? 何が……〝オカシイ〟の???」
「「…………」」
……カチャリ。甲呀は無言でずれた眼鏡を直した。
それから数秒後、ようやく話し出す。
「……ふむ。なるほど、よく分かった。俺も泰介とは長く共にいる方だが……そうか。どことなく〝一般人が思い描く変態〟とは違っているな、とは思っていたんだが……そういうことだったのか。――アイリサン。つまりお前が言いたいこととは、泰介の〝変態性〟が〝無知〟によるもののせいだった……ということだな?」
「えと……はい。誰も教えてくれる人がいなかった、というのも原因だとは思いますけど、つまりはそういうことです」
「……」
……あれ? 何だかよく分からないままに話が進み始めたぞ? しかも〝無知〟って……つまりはボクのことを〝バカ〟って言いたいんだよね? そうなんだよね!
くっそ~……将来ダイナマイト賞(※ノーベル賞と言いたいらしい)だってとれるかもしれないボクの天才的な頭脳をバカにして~!!
「――ふむ……ならばこれで〝目標〟がはっきりしたな」
と、そんなボクの心の叫びも聞こえない甲呀は……会話に入ってこないと思ったら、いつの間にか二人でお風呂談議に入っていたお姉ちゃんとゆりちゃん先生の話を中断させてから、改めて今ボクたちがやるべきことを話した。
「……では、話をまとめるが、まず第一の目標は、部長である泰介の〝変態性〟克服とし、他の皆はそのサポートに回ることとする。具体的な内容は……今日はもう遅い。一度帰宅し、改めて明日の昼休みにここに集まって話し合うこととするが、話を早く進めるためにも、各自何かしら家でアイデアを出しておいてくれ。――以上だ。何か質問や意見がある者はいるか?」
………………。
……無言。ない、ということだ。
それを数秒、間を置いて確認した甲呀は、それから立ち上がって言った。
「――では、解散!」




