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5-8改




 ……しかし、本格的に困ったことになってしまったな……本当にこの部活、これからうまくやっていけるのだろうか?

 そう思った、その時だった。

 「あの……提案しても…いいですか?」

 おずおず、と愛梨さんが、ものすごく自信なさげに、ではあったけれど、この重い空気の中手を挙げてくれたのだ。

 どーぞどーぞ! ボクはさっそく手の平を上に、愛梨さんに気にせず発言してくれるようにジェスチャー(?)を送った。

 それを確認して、はい、と頷いてから愛梨さんは立ち上がって意見を述べた。

 「――あの、私……思ったんですけど、〝みんないっぺんに〟問題を解決しようとするからできないだけ、だと思うんですよ?」

 「〝みんないっぺんに〟? ……愛梨さん? というと?」

 はい。愛梨さんはもう一度頷いてからボクの質問に答えた。

 「一番わかりやすい例で言うと、例えば泰介さんは〝変態〟から抜け出したくて、太郎くんは逆に〝変態〟になりたいわけですよね? これを二つ同時にやろうとすれば、当然〝矛盾〟が生まれてしまいます。……これと同じように、私の〝露出癖〟と泰介さんの〝変態性〟は、似ているようで、しかし全くの〝別物〟です。――泰介さんは外で裸になったら、心がスッキリしたりしますか?」

 「――あ、確かにボクの場合、〝不本意〟で裸になってしまうことはあっても、何も自分から望んでそうしているわけじゃない……なるほど! そこがボクと愛梨さんの、〝変態性〟の違い、ってやつなのか!」

 「……いや、つーかどういう状況になったら〝不本意〟で裸になるんだよ……出○かお前は」

 ……やはり鏡さんはツッコミ職人にジョブチェンジしたらしい。――けど、まだまだレベルが低いな、鏡さん! 出○さんは〝本意〟で裸にされているんだよ! ゴッドなア○コさんにやられてる時はたぶん、〝不本意〟だろうけどね!

 こほん……愛梨さんは一度咳払いをして、散ってしまった注意を再び自分の方に向けてから続けた。

 「……この違いは本当に些細なことのようですけど、二つ同時に解決するのには、実はかなりの〝問題〟が出てきてしまうんです。何しろ片方は〝良く〟て、もう片方は〝ダメ〟……なのですから。――つまり、私の意見……提案としては、まずは〝一人ずつ〟抱える問題を解決していき、目標にたどり着けるように、手が空いている他のメンバーはそれをサポートしていこう。……ということなんですけど……えっと……どう、でしょうか……?」

 「――うん! 完璧な作戦だと思うよ! ねっ、みんな!」

 うんうん、すぐにみんなは頷いた。その上で甲呀は聞く。

 「そうだな……しかし、となればまず最初に誰から始める? いっそくじ引きで決めるか?」

 ――あ、それなんですけど……愛梨さんはもう一度手を挙げて意見を出した。

 「ここはやはり、部長の〝泰介さん〟から始めてみませんか? ――というのも、実は私、泰介さんの〝変態性〟がなぜ生まれてしまったのか、それに〝心当たり〟があるんです!」

 え!?! ――ボクだけじゃない。全員が驚愕した。

 「そ――それはどういうこと、愛梨さん!?」

 ボクが思わず叫ぶと、愛梨さんはそれに真剣な表情で答えた。

 「……はい。私自身、〝このこと〟はあまり考えないように、と努力をしていたんですけど……泰介さんのためだと思って、この際はっきり言わせてもらいます! それは――」

 ごく……ごくり。

 ――二度も唾を呑み込んでしまった……でも、それは仕方がないことだったのかもしれない。

 何しろ、今まで誰一人として……そう、誰一人として、だ。ボクの〝変態性〟の謎を解ける人なんかいなかったし、そもそも皆が皆……そう。〝ボク自身〟ですらも、ボクは生まれながらの〝変態〟であるのだと、それこそ確信を得てしまっていたのだ。

 それが、なんと! 出会ってからまだたったの〝二週間〟である! ……そんな僅かな時間いっしょにいただけの女の子が、〝解く〟段階にまではいかずとも、〝心当たりがある〟の段階にまで迫っていたのだ。これに驚くなという方が到底無理、というものである。

 ――だけど……さぁ! 愛梨さん! そんなボクの心の準備もやっと整ったよ! はっきり言っちゃって! ボクはなぜ、みんなから〝変態〟と呼ばれるようになったんだい!!?

 「それは――」

 次の瞬間、愛梨さんは衝撃の事実をボクに――


 「――泰介さんが、未だにお姉さんと〝いっしょにお風呂〟に入っているからです!!!」






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