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桜花の場合。
……え? 何? みんな治したい(なりたい)んだよね? なのに何で出した意見を全面的に拒否して否定するの? それじゃあいつまで経っても変わらないままだよ?
「――そういえばゆりちゃん? 〝露出癖〟ってパンツを履かない……とか、そんなやつのことだよね? それって実際どうなの?」
おお! お姉ちゃんナイス・クエッション! そうだ、こんな時ゆりちゃん先生なら的確なアドバイスを――
「ん? そうね……健康的にはいいんじゃないかな?」
――くれなかった。ゆりちゃん先生はそのまま〝健康〟について語り始めた。
「パンツを履かないってことは、その分ゴムの締めつけがなくなるわけでしょ? となれば当然、リンパの流れも良くなるってことだし……あ、でも、スカートを履いている時は気をつけなきゃだめだよ? 地面とか、汚れた場所に直接座ると、もしおしりに傷とかがあった場合そこから細菌が入って――」
「――おーい、せんせー。男子の前だぞ~。パンツの話はその辺にしておいてくれ~」
――を、頼もしくも鏡さんが止めた。
鏡さんはそのまま、ついでに自分の意見を述べ始めた。
「……つーかさ? ストレスが溜まるって言っても、べつにそれをしなかったからって絶対に溜まるわけじゃないんだろ、愛梨? だったら、さ? 何か〝他の方法〟でストレスを発散させればいいんじゃねーのか? 例えば、あたしみたいに……ほら。何か〝スポーツ〟をやってみるとか?」
「あ、なるほど。それは確かに……でも――」
言い辛そうに、しかし愛梨さんははっきりと答えた。
「私……スポーツとか、すっごく〝苦手〟だから……桜花も知ってるでしょ? 小学校の頃から未だに跳び箱〝三段〟が跳べないってこと……」
……〝三段〟……いや、何も言うまい思うまい。だって、ボクも人のこと言えたもんじゃないんだから……。
「……一応聞いとくが、お前らは?」
――と、鏡さんが聞いてきたため、ボクたちは順番に答えた。
「んと、ボクも実際運動は苦手だし、何よりも家が遠いから……現実的にはちょっと厳しいかな?」
「お姉ちゃんはたいちゃんがやらなきゃ絶対やらない!」
「先生は教えるのは得意なんだけど、やるのはちょっと……あ、お散歩くらいなら……」
「俺は特に問題はないが……しかし、その提案自体には、かなり〝問題がある〟と言わざるを得んな」
あ? 何でだよ? 鏡さんが聞くと、甲呀は即答した。
「なぜなら、お前はスポーツをやりながらにして〝アレ〟らの本を読み漁り、ストレスを発散させているからだ。……全く〝無意味〟だろう?」
――パキーン。
……遂に、鏡さんの眼鏡は縁も割れて落ちてしまった。
「……じゃあ、この意見は〝却下〟という方向で」
そう自分で言い、鏡さんは俯いた。
……もう、何も言うまい。と心にでも誓ったのだろうか? その身体は、ふるふる、震えてしまっていた。




