4-21改 四話目終わり。
いよっしゃああああああぁぁぁッッッ!!!!!
ボクは手を振り上げ――
「――え? あれ??? ゆりちゃん先生……今、〝なんて〟?????」
ぐるん。ボクはすぐにゆりちゃん先生の方を振り向いて聞いた。
――だけど、
「ん? だから、緒方くんは〝不合格〟だって。――だって〝30点〟しか取れてないんだもん。あと〝5点〟、先生としてはなんとか〝おまけにしてあげたかった〟んだけど……( )内を語群から選ぶ問題じゃあ……ねぇ? 〝おまけも何もできなかった〟の。……ごめんね?」
「………………」
……。
……。
……。
……ふっ、な、何だ。やっぱりボクの聞き間違いじゃないか。ボクはちゃんと、ごごご、ごう、かく……して…………
――ぽん…ミキィッ!
……その時だった。甲呀がボクの肩に手をそえてきた。
――まるで、そのまま〝握り潰す〟かのような勢いで……。
「……泰介。現実逃避している場合ではないぞ? いったいどう〝責任〟を取るつもりだ?」
「うわあああぁぁんっっ!!!」
――続いて、愛梨さんが床に崩れ、泣き叫んだ。
「私が! 私が悪いんです!! 〝おバカ〟な泰介さんにちゃんと教えられなかった私が!!!」
――さらに、鏡さんが……しかし甲呀とは逆に、空いている左肩になぜか〝優しく〟手をそえてきた。
「……終わったな。お前の〝人生〟……さ、そうと決まれば話は早い。〝死に場所〟を選ばせてやる。――〝どこ〟がいい?」
――大丈夫だよ~。最後に、お姉ちゃんが笑顔で話した。
「ゆりちゃんの他にも、まだ残っている先生はいるんでしょ? だったらお姉ちゃんにまかせて? 絶対、顧問に〝させて〟みせるから!」
……み……みん……な…………。
「……ごめん…………」
ガクゥ! ……ボクは、両手両ひざを床ににこすりつけ、勢いそのままに顔面を自身で床に打ち付けた。……つまり、〝土下座〟だ。
……ボクにはもう、頭を上げることはできそうにない……当たり前だ。部の長として、これだけの〝失態〟をさらしてしまったのだ。もはやその〝処分〟は、ボクには決める権利すら与えられないことだろう。
……でも、鏡さん……ボク、死ぬのは……イヤだなぁ…………。
――そう思った、次の瞬間だった。
「〝な~んちゃって〟❤」
てへ☆ と突然、ゆりちゃん先生が……
「……なん……ちゃっ、て……???」
〝なんちゃって〟……!!!!!?????
えっっ!!? ――ボクは思わず顔を上げてゆりちゃん先生の方を向いた。
この〝状況〟。
この〝状態〟!
今、この瞬間に〝なんちゃって〟という、〝場違い〟も甚だしいセリフを吐くということは、まさか……っっ!!!
ボクの真剣な眼差しにゆりちゃん先生は、ニコリ、と小さく微笑んで、しかしはっきりと、その〝言葉〟を言い放った。
「――ごめんね、緒方くん。本当は〝合格〟! 〝先生の負け〟だよ!!」
……。
……。
……。
……い、
「いやっっったあああああぁぁぁっっッッッ!!!!!!!!!!」
――二度と床から離れることはできない。そう思っていたボクの手足が刹那解放され、ボクはそのあまりにもな衝撃に思わず飛び跳ねて喜んでしまった。
――その時だった。ぱちぱちぱち、と小さいながらも、周りから確かに、〝拍手〟が鳴り響いていたことに気がついた。
ボクはそれを振り返って確かめると、拍手をしてくれていたのは甲呀とお姉ちゃん……それに、あんなにもボクに対して憎まれ口を叩いていた鏡さんと、そして……
「――〝愛梨さん〟!!」
――そう。〝愛梨さん〟……愛梨さんの表情は〝笑顔〟にこそなっていたものの、その瞳には今にも溢れんばかりの涙が溜まり、そしてボクとは違って、未だに立ち上がることができないでいる様子だった。
ボクはそんな愛梨さんに急いで駆け寄り、そして目の前でしゃがんで、すぐにその手を握って言った。
「――〝ありがとう〟、愛梨さん! ボク一人じゃ絶対に合格なんてできなかった……! これは、全部〝キミのおかげ〟だよ! 本当に、〝ありがとう〟!!」
「そんな! 私より泰介さんの方が――いえ! これは〝二人の力〟が合わさったおかげですね! 私も素直に喜んじゃいます! おめでとうございます、泰介さん!!」
「――まぁ、そう言う割には、さっき〝おバカ〟がどうのこうのと……」
「ちょっ!!? お、桜花! それは言わないで~!!!」
あははははは! ――愛梨さんは慌てていたけれど、〝おバカ〟と言われてしまったはずのボクは逆に、そんな愛梨さんの様子を見て〝笑って〟しまった。……まぁ、無理もない。だってこんなに〝うれしいできごと〟は、ボクの今までの〝人生〟には、一度もなかったのだ。
……何はともあれ、
――この日、こうして、ボクたちによる、ボクたちのための新しい〝部活〟。
〝変態を迎える人生〟部は発足されたのだった。
【視点・泰介→〝桜花〟】
「……なぁ、太郎? ところでちょっと聞きたいんだが……」
「……何だ、鏡?」
「……いや、そもそも保健医って…確かに先生ではあるけどさ? 顧問とか〝やっていい〟ものなのか? 病気やケガをした生徒を診なきゃなんねーのに?」
「……」
…………。
「……ふむ。まぁ、あとは俺が〝何とか〟するさ。安心しろ」
「………………あ……あっ、そう…………」
…………………………。




