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4-17改




 「――泰介さん、上がりましたよ~?」

 ――元いたリビング。

 私がそこに戻ると、泰介さんはお姉さんと一緒にテレビを見ていた。

 「――あ、お帰り、愛梨さん。早かったね?」

 そう呟きながら、泰介さんは私の方を向いた――とほぼ同時に、〝狙いどおり〟、わぁ! と〝驚き〟の声を上げた。

 「愛梨さん! すごく〝かわいい〟ね、その〝パジャマ〟! とってもよく似合ってるよ!」

 えへへ~❤ かなりテレくさく思いつつも、私はほっぺをかいてそれをごまかしながら、すぐに答えた。

 「ありがとうございます……その、これ……実はこの間の日曜日に、お母さんと買い物に行って、その時に見つけて買ってきたんです。……着るのは今日が初めてで、あんまりにもかわいい柄なので私に似合うかどうか心配だったんですけど……泰介さんにそう言ってもらえたのなら私はもう大満足です! 本当にありがとうございます!」

 「いや! そんなボクなんかにお礼なんか……でも、本当に似合ってるよ! いつもの、そのままでも〝かわいい愛梨さん〟がさらに三割増しくらいかわいく見えるよ!」

 「か! かかか! 〝かわいい〟!? 〝私〟が!!? ――そそそそそ、それは本当ですか、泰介しゃん!?」

 突然の泰介さんの言葉に、もはや私の頭は……口は、ついてこれなかった。

 だけど、そんな私をよそに、泰介さんは微塵も恥ずかしがるような様子を見せることなく、平然とした顔で続けた。

 「うん! 愛梨さんってその名前的に、なんか〝情熱の赤〟っていうイメージだから、今着てるそういうピンクのパジャマとか、赤系の物はすっごく似合うと思うよ? 今度〝私服〟姿も見てみたいな♪」

 「〝私服〟……ですか? ――はいっ! じゃあぜひ今度〝ぃ〟……っっ!」

 ――〝いっしょに〟、と言いかけて、私は慌てて口を閉じた。

 ……だって、私服姿を見せるということは、〝学校以外〟で……そう、日曜日とか、お休みの日に、どこかのお店で〝二人っきり〟……つ、つまり、で、ででで、〝デート〟……的なもので、ということに、必然的にな、なってしまうのでは、ないでございましょうか……!?!

 ――ムリっっ!! それも無理です、泰介さん!!! 私にはまだ、た、泰介さんを……その……あの……で、〝デート〟に誘うなんてこと……! そ、それももうちょっと〝仲良く〟なってからでお願いします!!!

 ……って、

 ――さっきから私、一人で〝何を〟考えているんだろう……? 今までの泰介さんのことを考えると、私をほめてくれたのだって、べつに〝そういう気があって〟ということではないことは明白だ。たぶん、思ったことをそのまま口に出したに違いない。だからこそそこに、恥ずかしさ、という感情がないのだ。

 ……でも、たとえ泰介さんの考えが、私の考えたとおりのことだったとしても、泰介さんは一応、私のことを〝かわいい〟って、思ってくれているんだよね? ――それなら私にだって、ほんの少しは勇気を出してこれを着てみた〝かい〟があるってものだよ!

 うふふ♪ 思わず微笑んでしまった私は、「――あ、そんなことより」と泰介さんに向かって話した。

 「お風呂、冷めないうちに入っちゃってくださいね? 冷めてしまってはお料理と同様に味気ないものになってしまいますので」

 「――うん! そうだね! じゃあ、愛梨さんはその間、ここで好きなテレビでも見て待っててよ。あ、リモコンここに置いておくからね? それと一応教えておくけど、トイレは今きたお風呂場のすぐ手前にあるし、のどが乾いたら冷蔵庫の中に牛乳とかウーロン茶が入ってるから、自由に飲んで。コップは晩ゴハンの時に出したのが流しに洗って置いてあるから、それを使うといいよ」

 「はい! 何から何までありがとうございます。泰介さんもお風呂にゆっくり浸かって、疲れを癒してきてくださいね。そして上がったらまたいっしょに勉強をしましょう!」

 「OK! 〝肺〟の勉強だね! 分かったよ!」

 ……違いますけど……まぁ、いいです。

 手を振ってくる泰介さんに手を振りかえすと、泰介さんはそれから、

 「――じゃあ行こっか、〝お姉ちゃん〟?」

 と、〝お姉さん〟のことを抱きかかえてお風呂場の方に…………。

 ……。

 ……。

 ……。

 ――おやぁ? 何で、お姉さんと〝いっしょ〟に???

 …………。

 ………………い、いや……〝まさか〟……ね……???

 ……たぶん、お姉さんを先にお風呂場に連れて行ってあげて、泰介さんはその間……その、間………………。


 ……いったい、どこで待っているつもりなのだろう? ……廊下???


 ………………。

 「……さ、さぁ、テレビでも見ようかな~♪」

 ――それから三十分後。〝二人同時〟に、ホカホカ、になって戻ってきたのを見て、


 私はそれ以上、考えることをやめた…………。






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