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「あ、ホントですね。〝倒れ〟――」
ええっ!!? 愛梨さんが大声を上げた。
「ちょっ!!? お姉さん!? ――大変!! 泰介さん救急車! 救急車を早く!!」
「あー……平気平気」
そう答えたボクは、いつものように靴を脱いで玄関を上がり、倒れているお姉ちゃんの上方に移動し、手を引っ張ってその身体を完全に玄関に上がらせた。――そして、今度はお姉ちゃんの足元に移動して靴を脱がせてから再び上方に移動し、肩を担いでお姉ちゃんを持ち上げる。
すると、そんなお姉ちゃんが〝うれしそう〟に声をもらした。
「たいちゃん~抱っこ~❤」
「――ね?」
「……え? ……え???」
くてん、と愛梨さんの首が横に倒れてしまった。……どうやらこの意味を理解できなかったらしい。ボクは改めてそこに説明を付け加えた。
「あー……あのね、愛梨さん? 実はウチのお姉ちゃん、学校とか、外ではわりと〝普通〟に活動できるんだけど、なぜかウチに帰ってくるとその気が緩んじゃうみたいで……玄関に着くとこのとおり。いつもここで倒れて、〝ふにゃっふにゃっ〟、になっちゃうんだ」
「〝ふにゃっふにゃっ〟、に……ですか?」
「うん。そう、〝ふにゃっふにゃっ〟。――外ではボクに対して〝過保護〟。ウチでは自分自身が〝要介護〟……っていうことになるのかな? まったく、大変ったらありゃしないよ」
「……そ、そうなんですね……それは確かに大変そう…………」
……他人の家の事情だ。これ以上は何も聞くまい。
どうやら愛梨さんはそう思ったらしい。それから、つつつ、と静かにボクから目を背けてしまった。
あはは……それに苦笑いをして誤魔化しにかかったボクは、その流れのまま愛梨さんに話しかけた。
「愛梨さん、お腹も空いたことだし、勉強の前にとりあえず晩ゴハンにする? ――腹が減っては〝ゲーム〟は楽しめない、って言うしね!」
「〝ゲーム〟? それを言うなら……あ、いえ、何でも…………そ、そうですね! 泰介さんがそう言ってくれるのなら、私も喜んでごちそうになっちゃいます!」
決まりだね☆ そう頷いて、ボクはお姉ちゃんを引きずりながら愛梨さんに向かって手招きした。
「じゃあこっちにおいでよ。すぐに用意するから」
「あ、はい。じゃあ――お邪魔します!」




