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4-12改




 「――え、えっと……じゃあ、こうしようか?」

 ――ミニ実力テストの結果を受けて……ボクの実力ではおそらく合格は〝不可能〟だろう。そう判断したゆりちゃん先生の提案により、〝勝負〟の内容は以下のように変更された。

 一つ、全三十問の保健体育の一発勝負テストで、部長のボク以外はテストを受けられない、ということ自体は変わらないけれど、通常のテストと同様に赤点を回避できる〝35点以上〟を採れれば合格とする。

 二つ、出題範囲は、教科書のP12~16、23~25までの、〝たばこ〟〝アルコール〟〝(危険)ドラッグ〟の害についてから出るものとする。また、全て語群の中から選び、( )内を埋める形式とする。

 三つ、テストの日にちは、翌十二日金曜日の放課後、保健室で開始とし、時間は一時間(以内)とする。

 そして、四つ……。


 「――あ、あの……泰介さん! 本日は……よろしくお願いします!!」


 ――緒方家、玄関。

 普段……基本自由人で家には帰ってこないお父ちゃんとお母ちゃんのことはこの際どうでもいいとして……お姉ちゃんと二人暮らしをしているそのボクの家に、この日突然、〝初めて〟家族や親戚以外の人を招き入れることになった。

 その人の名前は、ボクの数少ない〝友人〟の一人……〝小出 愛梨〟さん。

 ……なぜ愛梨さんがボクの家にくることになったのか? というと、それこそがこの四つ目の変更点――ボク自身が部員の中から〝自由に一人〟を指定し、必ずその人と〝いっしょに〟勉強をすること……だ。

 ゆりちゃん先生は、「特に、この四つ目の変更点は絶対に守ってもらうよ!」となぜだか妙に張り切って(?)いたんだけど……あれはいったい、何だったのだろうか?

 ……まぁ? ボクとしてはちゃんと教えてくれる人がいた方がありがたいのは、確かなんだけれどね? 実際、たぶんボク一人じゃ合格は難しいわけだし……。

 ――というわけで、愛梨さんがウチにやってきたのだ。

 ……あ、ちなみになぜボクは〝愛梨さん〟を選んだのかというと、それにはちゃんと理由がある。……というのも、例えば――

 【甲呀の場合】

 ……ウチに入れたが〝最後〟。家中に〝隠しカメラ〟をしかけられ、二十四時間行動を〝監視〟されてしまいそう。

 【鏡さんの場合】

 ……どうせ、〝拒否〟られた上に、〝殴られる〟。

 【お姉ちゃんの場合】

 ……教え方が〝甘〟すぎて、勉強になりそうもない。……てゆーか、たぶん間違えても「や~ん❤ かわいい~❤❤❤」……で終わるよね、絶対。……それ以前の〝問題〟も多々あるわけだし。

 ……。

 ……ほら、ね? もう分かったでしょ? つまり、指定も何も、最初からボクには愛梨さん〝一択〟しか道は残されてはいなかったわけだ。

 ……あ、ちなみに、愛梨さんには〝そこんトコ〟とボクの家の〝事情〟は、電車の中ですでにちゃんと説明してあるから、安心してね? ――いっしょに帰る際、ボクが電車で通学していたことに気づいて、初めて出会った日(※【#1,〝出会い〟と〝変態〟。】参照)のことを必死に謝ってきたのは……まぁ、余談だ。

 「でもさ、愛梨さん……」

 とボクは、そんな、最初にして〝最後の希望〟である愛梨さんに向かって呟いた。

 「実際、よかったの? だって学校であんなにも鏡さんに反対されてたわけだし……それに、ルールと時間の都合上、仕方がないとはいえ、勉強を教えてくれるためだけにわざわざこんな遠いボクのウチに〝泊まり込み〟で教えにきてくれるだなんて……」

 「いえいえ! それくらいして当然ですよ!」

 愛梨さんは満面の笑顔で答えた。

 「だって、泰介さんは部活のために……部員のみんなのために、一人でこんな〝重役〟を負っているんですよ? それに協力もしないで、誰が〝部員〟だと胸を張って言うことができますか! ――私にできることがあったら何でも言ってください!」

 「愛梨さん……っ!」

 くぅっ!! ボクはなんて……なんて良い〝友だち〟を持つことができたんだ……! そうだよね! 友だちは数じゃなくて、〝質〟だよね! 愛梨さんはボクの〝最高の友だち〟だ!!

 ほろり……ボクは思わずこぼれ落ちた一粒の涙を指で拭い去り、はっきりと言い放った。

 「――ありがとう、愛梨さん!! ボク、がんばるよ! がんばって、ゆりちゃん先生をゲットして、それで無事〝変態を迎える人生〟部を発足させてみせるよ!!」

 「――はいっ! その意気です、泰介さん!」

 ニッコリ。ボクと愛梨さんは笑顔を交わし合った、

 ――次の瞬間だった。

 パタン――。

 「……あ、お姉ちゃんが〝倒れた〟……」





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