4-8改
――で、飛ぶこと翌日十一日、木曜日の昼休み。保健室。
「――という経緯で、ボクたちはこの、伊東 百合根先生と会って〝勝負〟をすることになったんだ」
「なるほど、そんなことが……」
「ふん! 見事な茶番だな! まったく……」
昨日いなかった愛梨さんと鏡さんにそれを説明したボクは、さっそく……
「……いや、ちょっと待って? ……ねぇ、鏡さん? 言葉とは裏腹に……何で一人だけそんなに〝遠い所〟に立ってるの? ――ああ、〝お姉ちゃんのこと〟? 大丈夫だよ。暴力はダメ! って、ちゃんと言い聞かせてあるから」
「だだだ! 誰がお前の姉ちゃんなんか怖がるもんかよ! あたしはただ……」
……。
……。
……。
「がおー!」
「ひぃぃっッ!!?」
「コラ!」
ぺしん! ボクは突然吠えたお姉ちゃんを叱りつけた。
「お姉ちゃん! 鏡さんを怖がらせちゃダメって言ったでしょ? 次やったらキライになるからね!」
「えへへ……ごめんなさい。だって、あんまりにも鏡ちゃんがかわいかったものだから、つい……」
「ひ…人が怖がるのを見て楽しんでんじゃねー!!」
「あ、桜花が遂に〝認めた〟……」
あはは――と、桜花なだけに、文字どおり鏡さんの雑談に花が咲いていた、その時だった。
ごほん! ごほん!
ずっと黙っていた甲呀が、わざとらしく咳払いをして、ボクたちの注意を自分に向けた。
「……楽しんでいるところすまないが、今は昼休み……時間は有限だ。なるべく時間内に終わるよう話を進めたいのだが……」
「あ! う、うん! そうだったね……ごめんね甲呀? ――あ、ゆりちゃん先生もごめんね? せっかくの休み時間にわざわざ押しかけておいて……」
「ううん。先生は全然構わないよ? 仲が良いことはとっても良いことだし」
うふふ、と楽しそうに笑いながら、しかしゆりちゃん先生は、「でも、やっぱり山田くんの言ってることも正しいから……」とすぐに話題を本題へと移行した。
「じゃあ、そういうわけでさっそく〝勝負〟の話に入りたいと思うんだけど……覚悟はいい?」
「ええ! ボクはもう絶対に〝逃げ出さない〟と、心に誓ったんだ!」
「いや、何からだよ……」
鏡さんの絶妙なツッコミは置いといて、ボクの鋼鉄よりも固い意志を改めて確認したゆりちゃん先生は、何も隠すことなく、すぐに話した。
「では、〝変態を迎える人生〟部部長・緒方 泰介くんには、先生が出題する〝テスト〟を受けてもらいます!」




