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4-5改




 ――そして、以下略からの帰り道。

 「……予想どおり、〝全敗〟だったね?」

 「……今回は最初からそんな雰囲気の教師ばかりだったな」

 「……ごめんね、たいちゃん、甲呀くん……お姉ちゃんが去年、〝あんなこと〟を言い回らなければ、こんなことには……」

 「……いや、お姉ちゃんは悪くないよ。全ては〝変態〟であるボクのせいなんだから……」

 「……いや、泰介は悪くないだろ? そもそもそれを直すための部活なのに、それに賛同しない教師たちが悪いのではないか?」

 「……ううん。やっぱり、お姉ちゃんが…………」

 「「「………………」」」

 ――はぁ。

 ――ふぅ。

 ――しゅん……。

 自己嫌悪と落胆と後悔……各々抱えた思いをため息に変え、ボクたちは廊下を歩き続けた。

 にしても……ヤヴァイ。このままだと、絶対にヤヴァイ。

 何が? とはもちろん、この顧問獲得問題についてである。

 ボクたちは今日を合わせての、この四日間。顧問の〝こ〟の字すら見つけられていない状況にあるのだ。

 ……始める前にも言ったけど、ボクたちが捜している顧問はあくまでも、現在顧問を請け負っていない〝余り物〟的な存在……したがって、絶対的にその数は〝少ない〟状況にある。

 それなのに、とはっきり言っておこう。その総数から、この四日間でダメだった先生の数を引くと……〝いよいよ〟だ。いよいよ、〝後〟がなくなってきてしまったのだ。

 ――正確に言えば、あとたったの〝三人〟。……もしこれらが〝ダメ〟であった場合を考えると……ボクは、せっかくとった栄養が体外に排出されるのを防ぐため、

 〝目を(つむ)り〟、

 〝耳を塞ぎ〟、

 〝口を閉じる〟。

 ……そうするしかなくなってしまう。

 それだけは避けたい。絶対に……とは、思いはするものの、やはり、今のボクにできることといえば、無意味にさえ思えてくるこの〝勧誘〟という行為だけなのだ。

 ならば、少しでもそれの成功率を上げるためにも、何かこう……そう! お代官さまに小判型のお菓子をあげる的なことを……あ、いや、でも今ボク絶賛金欠状態だし……じゃあ……どうしよう?

 ――そんなことを考えていた、その時だった。


 「――あ、ねぇ? そこのキミたち?」


 と、唐突に、ボクたちは声をかけられたのだ。

 こんなボクたちに声をかけるだなんて……いったいどんな物好きだ?

 悲しくもそう思いながら、ボクたちは声がした方向を見てみると、そこは……

 「……〝保健室〟?」

 そう。誰がどう見ても〝保健室〟だった。

 つまり、この声の主は……

 「――あ、〝ゆりちゃん〟だ」

 ――お姉ちゃんが声を上げた。それを聞いて、〝ゆりちゃん〟と呼ばれた声の主も、保健室内から出てきた。

 「あら? ――なんだ、緒方さんじゃない。……今帰りなの?」

 ――そこから出てきたのは、黒い短髪で童顔な顔立ちながらも、母性溢れる豊満な胸に、決して痩せすぎていることのないウエスト。そしておしり……真っ白な白衣に全身を包んだ、その清楚(せいそ)な姿は、ザ・〝保健医〟! と誰が見ても一目で分かる、そんな〝安心感〟さえ抱かせる人物だった。

 お姉ちゃんはその人を見て〝笑顔〟で話した。

 「うん。そうなんだ♪ 今たいちゃんたちといっしょに帰るトコなの。――それよりゆりちゃん、どうしたの? 何か困りごと?」

 「あ、うん、実はね? これを――」

 「……ねぇ、甲呀?」

 ひそひそ、と……ボクは小声で、〝何でも知ってる〟甲呀に聞いてみた。

 「あの〝ゆりちゃん〟っていう人……〝保健の先生〟――っていうことでいいんだよね? 何であんなにお姉ちゃんと〝仲良さげ〟なの?」

 べつに、〝お前の姉に限ったことではない〟ぞ? そう一言置いてから甲呀は続けた。

 「師匠に〝ゆりちゃん〟と呼ばれている彼女の正式な名は、〝伊東(いとう) 百合(ゆり)()〟。見て分かるように、〝保健医〟だ。――ちなみに〝百に合う根っこ〟と書く、百合根、という漢字を間違える者はほとんどいないが、逆に伊東の〝東〟の字を、〝(ふじ)〟という字と間違うものはかなり多くいるらしい……と、自分で言っておいてアレではあるが、そんなことはどうでもいいとして、本題の〝お前の姉に限ったことではない〟、というのはだな……実は、あの先生。美人で、おまけに童顔であるから、ということもそうだが、その柔らかな〝雰囲気と態度〟から、どんな口下手な人でも〝話しやすい〟ということで、年代問わず〝大人気〟なんだ。そのため、先生であるのにも関わらず、就任当初から、生徒たちからはまるで〝友だち〟であるかのように気軽に話しかけられている状態にあるんだ」

 「なるほど……それで〝あの〟お姉ちゃんとも仲が良いわけね……うん、納得したよ。ありがと甲呀」

 「べつに礼を言われるほどのことではない。――それより、〝あれ〟を見ろ」

 「〝あれ〟?」

 甲呀に促されて、ボクは改めてゆりちゃん先生の方を見てみると……ゆりちゃん先生は、お姉ちゃんを連れて保健室に入り、テーブルに山積みにされていた〝紙の束〟の前で、何やらお姉ちゃんに頼んでいる様子だった。

 それから、数秒後。

 何度かゆりちゃん先生の話に頷き、そして走ってボクたちの下へ戻ってきたお姉ちゃんが、その事情を説明した。

 「――あのね、たいちゃん? あそこに置いてあるプリントとかを、三年生の多目的室まで運びたいらしいんだけど、ゆりちゃん一人じゃ何往復もしないと運びきれないらしいの。だから、たいちゃんさえよかったら……なんだけど、大変そうだし、手伝ってあげない?」

 「え? ああ、なんだそんなこと? それならもちろんOKだよ! ……甲呀も手伝ってくれるよね?」

 「無論だ。困っている人を見すごしたら日本人の〝恥〟になってしまうからな。喜んで手を貸そう」

 決まりだね! ボクはそう頷いてからお姉ちゃんに聞いた。

 「じゃあ、お姉ちゃん? ボクはどれを持てばいいの?」

 「あ、うん! じゃあ……とりあえずこっちにきて! ゆりちゃんと話して決めるから!」

 おっけ~! そう答えたボクは、すぐにお姉ちゃんの後に続いた。





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