4-3改
「――というわけで、全員集合!」
――放課後の自教室。
ボクは(まだ仮だけど)部長の権限でそうみんなに呼びかけた。だけど……
【愛梨さん】
「――ご、ごめんなさい、泰介さん……今日急にバイトが入っちゃって……あ、明日はちゃんと協力しますから……!」
【鏡さん】
「――愛梨がこないんだったらパ~ス~。じゃあな」
――というわけで、少ない部員……結果的に集まったのは、ボクと甲呀。そして声をかけてから僅か十秒ほどで〝窓〟から入ってきたお姉ちゃんだけだった。
……ちくしょう。ほぼ身内だけじゃないか。
「まぁいいじゃないか。軍曹」
と、そんなことを思っていたボクに、影が薄いようで濃い忍者が話しかけてきた。
「部活動というものはあくまでも〝自由参加〟であり、強制はできないものなんだ。……それに、現段階では部活動がその名のとおりちゃんと活動をしているわけではなく、言うならばまだ〝発足準備中〟の段階だ。……勧誘くらい、わざわざ全員集まらなくても、俺たちほぼ身内だけで何も問題はないだろう?」
「ん~……まぁ、そうなんだけどね、ドロ沼くん……あ、ところで、この〝ポジション〟で言うと、お姉ちゃんは〝誰〟なの?」
「…………クックルくん……?」
「……ああ、一応副隊長(?)で、性格が極端にねじ曲がっているからね……なるほど」
………………。
「――さて、では泰介。そろそろ始めようか?」
「そだね☆」
何とも悲しい雰囲気を雑談で吹き飛ばそうとしたボクたちではあったけれど……あまり効果はなかったようだ。
ボクは、ボクの後ろで会話の意味も分からず、首を傾げきってしまっていたお姉ちゃんを近くに呼び寄せ、改めて今日やることを説明することにした。
取り分け、まずは〝誰を勧誘しに行くか〟、だ。――ボクはお姉ちゃんに向かってそれをメモした紙を見せながら話した。
「――いい、お姉ちゃん? 今日はこの〝五人〟の先生を勧誘しに行くんだ。あ、〝暴力〟は絶対だめだからね?」
「えっと、なになに? 社会科副担当に家庭科副担当。それから数学Bの先生に…………ねぇ、たいちゃん? 昨日、一昨日と、その前もそうだったけど……何だかみんな普段いる場所が、〝バラバラ〟、な先生ばかりだね?」
「仕方ないよ」
やれやれ、とボクは腕を横に広げて話した。
「何しろその先生たちは、今までどの部活にも入っていない、言わば〝余り物〟の先生たちなんだから。だからどうしても、〝教務室〟とかじゃなくて、その先生たちがいる〝準備室〟の方に行って、直接勧誘しなくちゃならないんだ。……まとめて勧誘しようにも、先生によってはいる日といない日があるみたいだし……ちょっと歩き疲れちゃうかもしれないけど、我慢してね?」
「――あ、ううん! お姉ちゃん、たいちゃんが行く場所ならどんな所にでもついて行くよ! だからたいちゃんはお姉ちゃんのことは気にしないで、精いっぱいがんばってね!」
「うん! ありがと、お姉ちゃん!」
――よし、では話もまとまったところで……と甲呀が合図を出した。
「さっそく勧誘しに行くか? ……見つけることも重要だが、何ぶん俺たちの場合は家が遠いからな。結果がどうであれ、さっさと終わらせなければそれだけ帰りが遅くなってしまう」
「おっと! そうだったね……じゃあさっそく行こう!」
「お~☆」
お姉ちゃんが元気に返事をしたのを確認してから、ボクたちは最初の顧問候補、社会科副担当・大林先生の下へ向かって歩き出した。




