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4-2改




 「もぐもぐもぐ……こうが~、やっぱりどの先生も話すら聞いてくれないよ~。……本当にこの部活、顧問の先生をゲットすることなんかできるの~?」

 ――四月十日、水曜日。昼休みの屋上。

 顧問獲得のため、月曜日から数えてのこの三日間。休み時間の度にみんなで顧問の先生捜しに走っていたボクは……正直、この()になりそうもない行動に疑問を感じて、お昼ゴハンであるおにぎりを片手に、手すりに身体を預けたままそう甲呀に投げかけてみた。

 すると……隣に座っていた甲呀からの回答は、予想外も予想外。とても〝シンプル〟なものだった。

 ――というのも、


 「……さぁ、な?」


 ……さぁ……な……???

 ……。

 「いやいやいやいやいやいやいやいやいや!!!!!」

 ボクは手すりから身体を起こし、黄河の方を振り向いて思いっきり叫んだ。

 「さぁ、な??? さぁ、な、って……どういうこと甲呀!?! えっ!!? だってこの部活……部員が揃ってても、顧問の先生がいないと〝発足すらできない〟んでしょ!? どうすんのさ! さぁ、な? じゃ済まないよ!!?」

 「……落ち着け。そしてメシを食いながらしゃべるな。米粒が飛ぶ」

 「これのどこが落ち着いていられる状況なのさ!」

 やれやれ……甲呀は一度ため息をつき、メガネを外して、そこに付いてしまったご飯粒をデコピンで弾きながら話した。

 「……もう一度言うぞ? まずは落ち着け。そして今一度冷静になって考えてみろ。どんなに足掻(あが)こうとも、俺たちがこの学校の〝生徒〟である以上、よほどの〝コネ〟でもない限り話し合いによる〝勧誘〟でしか顧問を獲得することはできないんだ。――となれば、今行っている俺たちの行動は〝最善〟の行動であり、この方法以外、俺たち生徒に残された手段はない、ということなんだ。……分かるな?」

 「う! それは……そうかもしれないけど……でもさ…………うぐぅ……」

 ……それ以上、言葉は出なかった。――当たり前だ。「でもさ? 他に何か方法があるかもしれないよ?」……なんて言ってみたところで、やはり現実は何も変わらない。甲呀の言うとおり、ボクたちに残された手段は〝勧誘〟以外に他はなかったのだ。

 しかし……となれば、なおさら〝気になってくること〟がある。

 ボクは不安に思いながらも、だけど、これだけは聞いておかなければならない……そう考えて、すぐに甲呀に聞いた。

 「……ねぇ、甲呀? どうしても聞いておきたいんだけど……もし……もしも、だよ? この勧誘に〝失敗〟した場合、ボクらの部活はどうなっちゃうの? まさか〝諦める〟……とか言わないよね?」

 「――いや、それは〝ない〟な」

 スチャ……即答し、拭いてきれいにした眼鏡をかけ直した甲呀は、それからさらに言葉を続けた。

 「……〝普通〟の人間にとってみれば、俺たちの部活は確かに〝いらないもの〟と思われてしまうかもしれない……だがな、俺たちにとってこの部活は、〝なくてはならないもの〟なのだ。――〝普通〟が何と言おうとも、俺たち〝変態〟と〝変人〟は、譬えどんなに〝汚い手〟を使おうとも、部活を発足させなければならん。……必ずな」

 「甲呀……」

 ――分かったよ。

 パシン、と一度、ボクは手すりを叩いてから話した。

 「甲呀だって、ちゃんと色々考えてくれてるんだもんね。――だったら、ボクはもう何も聞かないよ……ボクは、ボクにできる〝最善〟を尽くす……それでいいんだね、甲呀!」

 「ああ」――力強く、とまではいかなかったけれど、大きく頷いてから甲呀は答えた。

 「何にしても、〝やらなければ始まるわけがない〟からな……頼んだぞ、泰介!」

 「応ッッ!!!」

 ボクはそうはっきりと答えてから、むしゃり! と残りのおにぎりに食らいついた。

 ――その時、気がついた。あのさ? と今度はちゃんとゴハンを飲み込んでから聞く。

 「もぐもぐ……ごくん。――えっと、甲呀が言ってたその〝汚い手〟って……〝どんな手〟? 他に何か方法がある……って、ことなの???」

 「……ん? 聞きたいのか? だったら、そうだな……〝胃薬〟か、〝吐き気止め〟を用意しておいた方がいいぞ? せっかく取った栄養が全て〝入れた所から体外に出て行って〟しまうかもしれんからな。……先ほど俺に飛ばした米粒の比ではあるまい」

 「…………そっか☆ うん、やめとくよ♪」

 それからボクは、何も考えずに、とにかく今のボクにできる〝最善〟を尽くすことにした。

 ……それが、〝平和〟に繋がると信じて…………。





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