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 け…〝決闘〟!!? ――甲呀、いったい何を考えて……!

 慌ててボクはそれを止めようとしたけど、しかしその前に甲呀は続けた。

 「〝決闘〟の日時は今で、場所はここ。勝負の方法は至極簡単。何でも有りの、ただし寸止め方式。〝相手の命を断つことができるような一撃〟を与えた方が勝ちとする。またこの勝負、負けた方は大人しく相手の望みを〝何でも一つ〟聞き入れることとし、決闘前にそれを互いに誓い合ってもらう――以上の条件で受けてはいただけないだろうか?」

 「ふーん。いいよ~」

 「いや! ちょっと待ってよ甲呀!!」

 ボクは今度こそ声を上げた。そしてお姉ちゃんのホールドから、するり、と抜け出て急いで甲呀に耳打ちする。

 「ちょっ……! 正気なの、甲呀!? お姉ちゃんの〝いいよ〟は、〝どうでもいいよ〟のことなんだよ!? ――寸止めとか、そんな〝細かい〟ルール、お姉ちゃんが守るわけがないじゃないか!」

 「ふ……安心しろ、泰介。そんなものは当然この俺も理解しているさ。――俺が重要視しているのはむしろ、この〝勝敗を決める〟、というところだ」

 え……? ボクが首を傾げると、甲呀は静かに、それについての説明を始めた。

 「……考えてもみろ。お前の姉は確かに、見た目に反して〝強力な身体能力の持ち主〟ではあるが、所詮は〝素人〟なのだ。ただ闇雲に突進し、何の小細工もなしに殴るか蹴るか……当たれば怖いものがあるかもしれんが、〝当たらなければどうということもない〟。――俺はそんな姉の攻撃をかい潜り、〝一本を入れて〟すぐに〝退避(たいひ)〟する。あとはお前が姉を押さえつけてルールを振りかざし、ルールを守らないお姉ちゃんなんか〝嫌い〟だ、とでも言えば大人しくなるだろう。……どうだ? 良い作戦だとは思わないか?」

 な、なるほど……ボクは心底納得した。確かに、甲呀は素人のお姉ちゃんとは違い、正真正銘、それも次期頭領となることが確定している〝プロの忍者〟だ。普段目にしている瞬間移動も然り、お姉ちゃんの攻撃がまさか〝当たるわけがない〟のだ。それを考えればこの勝負……甲呀の作戦どおり、もはや〝決まった〟と言っても過言ではないだろう。

 「……ふっ、どうやらボクの心配のしすぎだったようだね。――あとはまかせたよ、甲呀!」

 「お前も事後のフォローを忘れないでくれよ、泰介。あてにしているぞ……!」

 ばっ! ボクたちは互いにバックステップし、そして甲呀はすぐに臨戦態勢に入った。

 「……ん? たいちゃんとのお話は終わったの、甲呀くん? じゃあ……〝始める〟?」

 「ええ。俺はいつでも――」


 ずだーーーんッッッ!!!!!!!!!!


 ――刹那、だった。

 グラグラグラ……突然の〝爆裂音〟。そして〝地震〟……甲呀が応えようとしたその瞬間、いったい〝何が〟あったのか? ボクは恐る恐るお姉ちゃんの方を見てみると……そこには、片脚を〝地面に大きくめり込ませた〟お姉ちゃんの姿が…………

 ……え?

 「――きゃはははははははは!!!!!」

 ……お姉ちゃんは、狂ったように笑った。


 「お姉ちゃんはたいちゃんのことを護るんだ!! たいちゃんのことを……あは! あはは! あははははははははははははははは!!!!!!!!!!!」


 「「…………………………」」

 ……ふっ。甲呀は、くい、とメガネを直した。

 そして、

 「――さぁ! 今こそお前の出番だ、〝鏡〟!!」

 「なにぃぃぃぃッッ!!???」

 突然のバトンタッチ。今回あまり目立っていなかった鏡さんに、ライトが浴びせられた。

 「おおお! おいっっ!? ふざけんなよ!!?」

 と、あくまでも遠くの方から、当然のように鏡さんの猛抗議が始まった。

 「何であたしがそんな〝化け物〟とやらなきゃなんねーんだよ! お前だろ、勝負を挑んだのはよ!!?」

 「……確かに俺は勝負を挑んだが……しかし、何も俺〝自身〟が勝負をするとは一言も言ってはいなかったはずだ。……上着を脱いだのも、ただ単に〝暑かった〟からにすぎんしな」

 「ウソこけこの忍者野郎!!! だいたいあたしは〝大切な部員〟じゃなかったのかよ!?」

 「……そうだな。だが、俺もまた〝大切な部員の一人〟であることには違いない。……どちらも大切な部員同士ならば、困った時に〝助け合う〟のは当然のことだろう?」

 だー! くっそー!!! 鏡さんは頭をかきむしった。どうやら甲呀に何を言ったところで時間の無駄だ、ということに気づいたらしい。

 しかし、それならと鏡さんは今度はボクのことを指差した。

 「おい〝変態〟! お前部長なんだろ!? だったらお前が姉ちゃんを何とか――」


 「――〝変態〟ぃぃぃ~~~??????????」


 ――はっ!? 鏡さんの手が、瞬間固まった。見れば、お姉ちゃんの〝殺気〟はもう完全に、〝鏡さんに〟へと集中してしまう形になってしまっていた。

 どうしたのだろう、とボクは一瞬考えたけど、すぐに思い出して鏡さんに向かって叫んだ。

 「――鏡さん! 今思い出したんだけど、そういえばお姉ちゃん、ボクのことを〝変態〟って呼ぶ人のことが〝世界で一番嫌い〟って、言ってたよー!!」

 「そぉぉぉいうことはもっと早く思い出せぇぇぇーーーーーッッ!!!!!」





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