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「……え? えっ?!?」
なぜ、急に怒り出したのか? わけも分からずボクはあたふたしていると、お姉ちゃんはなぜか、ふらふら、と覚束ない足取りで甲呀の方を振り向き、静かに話した。
「……ねぇ? 甲呀くん? これって……どういうこと? ――〝変態を迎える人生〟部? 甲呀くん、たいちゃんが〝変態〟って呼ばれるの〝嫌い〟だっていうこと……知ってるはすだよねぇ?」
「……ええ。もちろん。だから俺はそれを――」
ザザァッッ!!!!!
さらに、お姉ちゃんの〝殺気〟が増した。――もはや聞く耳すら持っていない。〝殺気〟だけで〝人が死ぬ〟レベルだ。
お姉ちゃんはその状態のまま、一歩、また一歩と歩き始め、甲呀に近づいて行く。
「……甲呀くん? 何? その〝ふざけた部活の名前〟? ひょっとして、たいちゃんのことをからかって、いじめてるの……?」
……どうやら部活名を聞いて、何やら誤解をしたらしい。今にも甲呀を殺しそうな勢いだ。
「……おい、泰介」
と、甲呀ももちろんそのことは分かっていたようだ。ボクにヘルプの視線を送ってきた。
ボクはそれを見て慌ててお姉ちゃんの前におどり出る。
「ま、待ってよお姉ちゃん! この部活の名前には、ちゃんと〝意味〟があって――」
「――たいちゃんは黙ってて!!」
ぎゅっ! と、その時だった。お姉ちゃんは〝涙〟を、ぽろぽろ、こぼしながらボクのことを抱きしめ、ボクの耳元で優しくささやいた。
「……〝かわいそうなたいちゃん〟……きっと甲呀くんに〝ダマされて〟そんな部活に入部させられたのね……待ってて、たいちゃん。お姉ちゃんが、〝助けてあげる〟からね……!!」
いや、全然そんなんじゃ――って! そんなことを考えている場合じゃない! ダメだ! ボクが〝ダマされている〟。そう思い込んでしまったお姉ちゃん止めることは、もはや誰にもできはしないのだ!
「ぷはっ! 逃げて、甲呀!」
ボクはお姉ちゃんの胸からなんとか顔を上げ、叫んだ……が、しかし、この〝殺気〟の中でも、自由に動けたはずの甲呀は、それを聞いてもなぜか、〝微動だにしなかった〟。
どうして!? ボクが思うよりも早いか、甲呀はその理由を説明した。
「……ふっ、お前の言うとおり、逃げてもいいんだがな……ただ、俺が逃げた場合、たぶんアイリサンや鏡が〝先に殺られる〟ことになってしまうだろうから……大切な部員だ。逃げたくても逃げられんのだ」
「そんな! ……くっ!」
ボクは二人の方を見ると、先ほど呼んでしまったせいか、二人はボクたちのかなり近くまできていて、そこでお姉ちゃんの〝殺気〟に当てられて動けなくなってしまっていた。
しまった! と思ってももう遅い。いったいどうすれば……!
――その時だった。
「……ふ、やれやれ、こうなってしまっては仕方がないな」
――ばっ! と突然、甲呀は上着を脱ぎ捨てたのだ。見ればYシャツ姿になった甲呀の身体には、手裏剣以外にも見たこともないような様々な〝武器〟が吊り下げられていた。
おお! さすがは忍者だ! そんなことを思っていると、甲呀はまたいつものように、くい、とメガネを直してから言い放った。
「――師匠。俺はあなたに、〝決闘〟を申し込む……!」




