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なにぃぃ!!???? ボクは心の中で叫んだ。
正気なの、甲呀!? え!? だって、お姉ちゃんを部活に引き入れるってことはつまり、ほんのちょっとした〝ミス〟で、キミたち全員の〝命〟が〝危機〟にさらされることを意味するんだよ!?
ふっ、そんなこと、百も承知さ……そう言わんばかりの態度で、一瞬ボクのことを、チラ、と見た甲呀は、再び、くい、とメガネを直して続けた。
「……いかがでしょう、師匠? ちなみに泰介には〝部長〟をやってもらうつもりでいます。師匠にはそれにもっとも〝近く〟、〝ふさわしい〟ポジション……〝副部長〟をやっていただきたいと考えているのですが……」
「……〝近い〟……〝ふさわしい〟……!!」
キラーン☆ その言葉を聞いた、瞬間。お姉ちゃんの眼には〝☆〟が輝いた。……もう、ボクはどうなっても知らないよ?
しゅばっ! 音速に近い速さで右手を、はいはーい! と振り上げたお姉ちゃんは、それから高らかに宣言した。
「お姉ちゃん、その部活に喜んで〝入部〟しまーす!!!」
……はぁ。ボクは、頭を抱えた。
これでめでたく部活発足条件その一を完全にクリアしたことにはなったけれど……何だか、先がものすごく思いやられる。というより、気苦労が絶えなさそうだ。
しかも、ボクが〝部長〟だなんて……
「――って! え!? 何!? ボク、〝部長〟なの!!?」
叫ぶと、すぐに甲呀は答えた。
「当然だ。というか、〝適任〟だろ? 何しろこの部活内においてお前と肩を並べることができるのは、それこそ師匠しかいないのだから」
「そ、そんな! ムチャクチャな!」
だいじょうぶだよ~、とお姉ちゃんはボクを抱きしめてきた。
「いざとなったらお姉ちゃんがまるっと全部〝何とかしてあげる〟から! たいちゃんは安心してお仕事がんばってね~❤」
「……」
本当にボクがしっかりしなければ!
今の今までの、ボク自身の反対意見はどこへやら? ――この時ボクは、固く決意した。
「――おーい! どうでもいいけどよー!」
……と、どうやらボクの合図が伝わり、なるべくお姉ちゃんから離れたのだろう。遠くにあった木の陰からひょっこり顔を覗かせていた鏡さんたちが大声で話した。
「もうそっちに行っても大丈夫なのかー! つーか、話はまとまったのかー!」
「あ……う、うん! もう大丈夫だよー! とりあえず戻ってきなよー!」
ボクが手を振ると、す、と二人は木の陰から出てこちらに向かって歩いてきた。
……やれやれ、何はともあれ、これでようやく本当に部活っぽくなってきた。――お姉ちゃんのこととかは、特に不安な要素が残るけれど、あとは来週になったら顧問の先生をどうにかスカウトして、それで本格的に部活動スタートだ!
がんばるぞ~! ……ボクはそう心の中で強く思い、お姉ちゃんから離れた。
――その時だった。
「――あ、ところでたいちゃん? まだ聞いてなかったんけど、〝部活〟って……いったい〝何の部活〟を作る気なの? ……この学校にまだない部活っていったら……囲碁とか、将棋とか???」
お姉ちゃんが、そう聞いてきた。
ボクは……別段、特に隠すような理由もなかったため、そのまま素直に話した。
「ああ、それなら、〝変態を迎える人生〟部だよ!」
「…………は?」
くにゃん、とお姉ちゃんの首が曲がった。どうやら、意味を理解できなかったらしい。
……まぁ、当り前か。そう思ったボクは、そこに説明を付け足した。
「だから、〝変態を迎える人生〟部っていって、ボクが〝変態〟から〝変態〟して――」
刹那、だった。
――ドンッ!!!
お姉ちゃんから放出されたのは、再びの〝殺気〟だった。