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 …………………………さっさと帰れなかった。

 ――学校の帰り道。

 はぁ~~~~……と、先ほどまでついていたため息とは少しばかり理由が異なるため息を一気に口から吐き出したボクは、すでに赤く染まりつつあった空を、ぼんやりと仰いだ。

 現在時刻、十七時ちょっとすぎ……家が遠いボクの場合は、今から帰っても、どんなにがんばっても家に着くのは十九時半すぎくらいだ。

 本来、今日は始業式が終わったら昼には帰れる予定だったのに……掃除のために……いや、それ以上に帰る際の、あのゴリラ(体育教師)の説教が長かったせいで、もうこんな時間だ。おかげでお昼は食べそびれるし体中ホコリまみれだし心はズタボロだし……ホント、今日は厄日以外の何ものでもないな。

 はぁ、ともうため息が止まらない。

 何かこのため息を止める方法はないものかと、ふとボクは、何となく……前と後ろを交互に見てみたけど……さすがにこの時間だ。もう見渡す限り、ボク以外の生徒は誰もそこには残っていなかった。

 当たり前か、と思った。だって普通、始業式の日っていったらどこも部活は休みだ。それを考えると当然、こんな時間まで残っている生徒はよほどの学校好きの変わり者か、あとはボクみたいに何かをやらかして残されているかわいそうな生徒……くらいなものだろう。

 ……まぁ、学校とは関係なく、どこかでバイトや店の手伝いをしているような生徒であれば、あるいはまだその辺にいるかもしれないけど……。

 …………。

 無駄なことを考えてないでさっさと帰ろう。どーせ、いたところで相手はボクを見た瞬間にシャウトな攻撃をしかけてくるに違いないんだし、そんなんならむしろ、誰もいない方がボクにとっては好都合(こうつごう)だ。

 やれやれだ……と、いよいよとそんな自分に嫌気が差してきた――ちょうどその時だった。

 すっ、と突然、前方二十メートルくらいの所にあった曲がり角から、一人。制服を着た女の子が現れたのだ。

 うわっと!! ――もはや条件反射である。それを見た瞬間、ボクは電柱に身を潜めて姿を隠していた。

 ……って、何でボクは隠れてるんだ? ここは学校から駅まで向かうための一本道。さっきも無駄に考えていたとおり、バイトをしているような生徒であればこの時間帯でもいても不思議はない。その生徒が電車を利用して通学しているのなら、帰る時にこの道で見かけるのは、至極当然のことじゃないか!

 こほん、と小さい咳払いを一つ……ボクは電柱からちゃんと姿を現し、何ごともなかったかのように前をしっかりと向いて歩き始めた。

 ――それから、三分後。

 ……あれ!? と気がついた。

 何に? それは……。

 ――ここは、時間帯的にまだ明るいとはいえ、ほとんど人が通らない道。

 前方――後ろから見ても、スタイル抜群の女子生徒が一人。

 後方――ボク(〝変態〟)、歩行中。

 答え……はい、な~んだ?

 ――ヤバイッッ!! 全力でボクはそう思った。なぜなら、そう、この状況……傍から見ればどう見ても、ボクがあの女子生徒に対し、〝(ゆが)んだ愛情表現(ストーキング)〟をしているようにしか見えなかったからだ!

 タラァ……妙な汗が首筋(くびすじ)(つた)った。

 ヤバイ……ヤバすぎる!! だってボクはもう、この学校では知らぬ者なき〝変態〟であるのだ。それはつまり〝そこにいるだけで犯罪者扱い〟を受け、たとえ冤罪(えんざい)であったとしても犯人として扱われる……そう、即ちこの状況! イコールとして〝死刑〟がボクに宣告されたのと変わりはなかったのだ!!

 ――はい、というわけで答えは〝死刑〟! みんな分かったかな~?

 ……って! そんなことやってる場合じゃないッッ!!

 難問を出しておいて言うのもアレではあるけど、ボクは必死にこの状況から逃れる(すべ)を、その〝答え〟を(みちび)き出そうと灰色の脳みそをフル回転させた。

 ――と、とにかく! この距離は危険だ! 二十メートルではいくら何でも近すぎる! これでは見つかった時に何の言いわけもできないじゃないか! あとせめて今の三倍……そう! 十五メートル級から一気に超大型級くらいにまでこの距離を伸ばさなくては、ボクに待っているのは〝死〟のみだ! 早く離れ――

 ――はっ!! と刹那、ボクはそれに気がついた。とは、前方を歩く女子生徒……その()が突然、キョロキョロ、と辺りを見回し始めたのだ!!

 ま、まさか! 〝変態(ボク)〟の存在に気がついて……マズイッッ!!!!!

 さっ! すぐに、ボクはまたとっさに近くにあった電柱に身を隠し、そして息を潜めた。

 ……これではまるで本当に、ボクが〝愛情表現〟をしているようにも見えたけど……今は仕方がない。ボクはただただ、あの女子生徒がボクに気づかず、そのまま歩いて行ってしまうことを願った。





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