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……。
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……ん? あれ? 今……何か部長が〝妙なこと〟を言っていたような気が……い、いや、たぶん、気のせい……だよね。あはは……。
……………………。
さ、さぁ! 早く次、始まんないかな~!
『――続いて、柔道部のデモンストレーションです。お願いします』
お! 柔道部か~……ボクは運動がちょっとだけ苦手だからこういうのにはあまり興味がないけど、見るだけならタダだし、面白そうだよね!
――そんなことを思っていると、さっそく柔道部は体育の時に使うマットを持ってきて敷き、その上で豪快な技を連発し始めた。
バシン! バシン! ……ものすごく大きな音が体育館中に響く。いや、実際それだけではなく、投げた衝撃で〝体育館そのもの〟が、ミシミシ! 大きな音を立てていた。凄まじい迫力だ。
そして、最後の大技が決まったその瞬間、
「せいれーつ!!!!!」
マイクなど必要なし! そう言わんばかりのたくましい部長のかけ声に、柔道部全員であろうおよそ二十名が、あの真っ白な道着姿で現れ、部長の後ろに一列に整列した。
まるで軍隊だ……そんなことを考えていると、司会のおねーさんがマイクを渡そうとしたけど……拒否し、部長は大声で話し始めた。
「――小賢しい話などする必要なし!! 我々は今年も県大会優勝を果たし、北信越大会優勝を目指す!! そして最終目標は全国大会優勝だぁーーーッッ!!!!!!!!!!」
「「「「「おーーーッッ!!!!!!!!!!」」」」」
す、凄まじい熱気だ……ボクにはその気が知れないけど、いったい誰がこんな軍隊みたいな部活に好き好んで入るというのだろうか? ……いや、でも待てよ? 実際、入っている人たちがあんなにも〝たくさんいる〟わけだし…………人間って、不思議だよね?
『あ、あの~……』
と、そんな中。司会のおねーさんに何か耳打ちされた部長は、また大声で話し始めた。
「入部届けは隣の武道館まで持ってくるように!! 休みの日などは〝ない〟から、いつでも持ってきてよしとするっ!!!!!」
……ね、〝年中無休〟ですか、この人たち?
『あ……ありがとうございました~。――それでは、柔道部の皆さんはご退場くださ~い』
若干…いや、すごく引き気味の司会のおねーさんに言われて、端の方から順に退場していく柔道部員たち。――しかし、なぜかあの熱血部長だけは、部員が全員退場した後だというのに、一向に〝動こうとはしなかった〟。
『……あ、あのぅ~……もしもーし?』
それに見かねて司会のおねーさんが話しかけると、突然、再び部長は大声を上げた。
「もう一言だけ言っておく!! 我が部には〝変態〟のような〝問題児〟はいらんッッ!!!」
――以上!! そう言うと部長は去って……
……。
……。
……。
………………よし、次、次。
『……つ、続きまして、野球部の――』
――お! 次は野球部か! やるのは嫌いだけど見るのは大好きだぞ! 選手までは憶えてないけど、とりあえず――
――以下略。
『――えー、ということで我が野球部は、〝変態〟のような〝チームプレイを乱す〟可能性がある者の入部をお断りしていますので、よろしくお願いします』
『はい。野球部の皆さん、ありがとうございました~。続きましては茶道部の――』
「…………」
にっこり、口だけボクは微笑んだ。
――以下略。
『――え~、ということで、我々茶道部は〝万年部員不足〟に悩まされておりまして、もし今年、誰も入部されない場合は、残念ながら〝廃部〟となってしまいますので、少しでも興味がある人がいたら、ぜひ一度茶道部の部室、旧館の方の家庭科室まできてください。……あ、でも〝変態〟だけは〝お断り〟させてください。それ以外の人なら大歓迎です。えーと、それから休みは――』
「………………………………」
……〝廃部〟…寸前でも……ダメ、なのか………………。
――それからまるっと二時間。〝勧誘〟式であるのにも関わらず、ボクは全ての部活動から入部を〝お断り〟され続けた。




