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――体育館。
ぱちぱちぱち……盛大な拍手の中。この勧誘式、最初のデモンストレーションを終えたのは、演劇部の一団だった。
演劇のタイトルは、【生け贄の少女】……中世ヨーロッパを舞台とした、オペラ調の悲しくも温かみのあるストーリーで、短い時間ながらもしっかりと構成された素晴らしい物語を、見事、最後まで演じきっていた。
すごいな~! これほどすごいことができる部活なら、きっと部員もたくさん入って、賑やかな部活になることは間違いないよ!
と、体育館の端の方で見ていたボクは、そんなことを思う反面。――しかし、とはいえ、さすがにボク自身が今すぐ演劇部に入ろう、という気にはなれなかった。
なぜなら、そう。演劇とは〝チームプレー〟が肝心となってくるものであって、つまりはその分、長い時間部活の中で〝友情を深めて〟いかなくてはならないことになるのだ。
……演技力の方は、家での個人練習次第でどうにでもなるのかもしれないけれど、ボクにはその、〝友情を育む時間〟が絶対的に足りない状況だ。――中途半端な手伝い程度じゃ逆に迷惑がかかってしまうのは必然的だし、ここは、諦めるしかないな……。
ボクはそう、仕方なく思いつつも、どこか名残惜しく思ってしまい、最後まで拍手を送ってしまっていた。
――と、その時だった。最後に演劇部・部長に……なぜかバニーガール姿だった司会のおねーさんからマイクが手渡され、一年生へ向けてのあいさつが送られた。
『――えー、一年生の皆さん。今日はありがとうございました。時間があまりないので単刀直入にお伝えしたいと思いますが、我々の演技を見て興味を持った人は、ぜひとも放課後、演劇部の部室である四階多目的室に入部届けを持ってきてください。もちろん、演劇をやったことがない人でも大歓迎です。……以上、演劇部でした!』
ぱちぱちぱち。また拍手が起こった。それに見送られるように演劇部は体育館を出て――
『――あ! 大事なことを言い忘れました!』
突然。部長が司会のおねーさんにマイクを返そうとしたその瞬間、半ば叫ぶように、慌てて部長は話し始めた。……いったい、どうしたというのだろうか?
『――えー! 毎週火曜日は部活が〝休み〟ですので注意してください! その日はきても誰も対応できませんので!』
……あ、何だ。そんなことか。
……まぁ、とはいえ、入らない人にとってはどうでもいいことだけど、入りたい人にとってはすごく重要なことだから、言い忘れて慌てるのも当り前か。何しろせっかく入ろうとして部室に行っても、そこに誰もいなかったら、その人は怒って入るのをやめてしまうかもしれないのだ。そんなことがあっては元も子もない。
……って、どうせボクは演劇部に入る予定はないんだから、いちいちそんなことを考えていても仕方がないか……早く次の部活――
『――あと、〝変態〟はお断りです! 以上!』
――のデモンスト………………。




