1-3改
――始業式が終わり、放課後。
「……厄日だ」
そんなことを呟きながら、あの体育教師に言われて……〝変態〟的な格好をしてきた罰として学校中の清掃を(もちろん、上着を含む、スカートはあの後強制的に脱がされ、体操着姿で)させられていたボクは、ずっと思いにふけっていた。
……というのも、
「――ねぇ? あそこにいるのって、例の〝変態〟ってやつなんじゃない?」
「しっ、聞こえるって! ヤバイやつだったらどうすんの! 近づかない方がいいって!」
「つーか何であんな〝変態〟がこの学校にきてんの? マジ死ねばいいのに」
「こんなとこにいたら〝変態〟が伝染っちゃうよ! 早く帰ろ!」
……などということを、その掃除中、ずっと後ろ指を差されながら言われ続けたからだ。
…………はぁ~~~……と、これでいったい何度目のため息だっただろう? ボクはそれを指折り数えてみようとしたけど……すぐに止めた。そんなことをすれば、この落ち込んだ気分がさらにどん底に……それこそ、もう戻れない所にまで落ちて行くのは間違いなかったからだ。それだけは絶対に避けなければ……。
――しかし、と考える。だって、実際これからボクはどうやってこの学校で学生生活をエンジョイしていいのか、全く分からなくなってしまっていたからだ。
事実、学校でのボクの〝地位〟はすでに、〝変態〟だ。――それはつまり、登校時に実証して見せたとおり、〝ただ近寄っただけ〟で女子生徒に悲鳴を上げられてしまうレベルであり、会話をするも何もあったものじゃないのだ。そんな状態から〝上〟に上がる方法を、いったい誰が思いつくというのだろうか? たぶん、エジ……何とか、という、電気を作ったらしいどこぞの天才発明家でもそれは無理だろう。ましてや多少頭の回転とキレが良いだけのボクがそれを思いつくことなんて……天と地がひっくり返ったところで不可能というやつだ。
…………。
……いや、まぁ? ボクが〝変態〟だから悪いだけなんだけどね? そんなの、言われなくったってちゃんと分かってるよ。
……はぁ~、とまた……何十回目かのため息をついた後、ようやくあの体育教師に言われた範囲の掃除を終えたボクは、それを職員室に報告しに向かった。
――と、ものの五分でそこに到着する。
……さすがに学校中を掃除させられただけのことはある。つい昨日まではこの学校のことは何も知らなかったはずなのに、ボクはもう、すでにそのマップを全て頭の中にインプットしてしまっていたのだ。……って、だからと言ってべつにそんなのを覚えたところで、何の自慢にもならないんだけどね? そもそも、自慢する相手もいないし……。
…………。
――よ、よし! さっさと報告して帰ろ。
そう、色々な思いをなかったことにしたボクは、すぐに職員室のドアをノックした。