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 いったい、突然何のことを……?

 困惑するボクとは裏腹に、鏡さんは真剣そのものの表情で続けた。

 「……まさか〝変態〟が〝変態行為〟を謝ろうとしている、なんて、夢にも思わなかったもんでな。……もう一度言う。お前の話もロクに聞かず、いきなり殴って〝悪かった〟。今回ばかりはあたしにも非があったよ」

 ……。

 ぽかーん、としてしまった。予想外にもほどがある。

 だけど、鏡さんが言ったその言葉の意味は、そんなボクにもしっかりと理解することができた。

 「じゃあ――!」

 と、一瞬、喜びの声を上げた――その時だった。

 「――だが、〝勘違い〟すんじゃねぇ!」

 鏡さんはボクの言葉を(さえぎ)ったのだ。

 鏡さんはそのまま、腰に手を当てて続けた。

 「言っておくが、あたしはお前のことをこれっぽっちも信用したわけじゃない。ただ、お前は愛梨に〝謝りたい〟と言ったから、あたしはそれを許可しただけだ。……ただし、もしも愛梨をまた傷つけるようなことをしてみろ? 今度こそあたしはお前を……〝殺す〟!!」

 ま、愛梨に謝りに行く時はあたしも同行するから、心配はないんだがな? ――そう言うと鏡さんは、しっしっ! とボクに向かって手を縦に振った。

 「ほら、これでもうあたしに用は済んだんだろ? お前もさっさと帰れ。時間と場所とやらは、あたしが愛梨に頼んで作ってもらっといてやるから」

 「え……あ! うん! ありがとう!」

 ――な、なんだ! プレゼントなんか渡さなくても、鏡さんとはちゃんと会話できるじゃないか!

 誠心誠意、心から話せば分かってくれる……そんな人を相手取り……ははっ、ボクらは今日一日、あーだこーだといったい何をやってたんだ……!

 ――そう、自分たちの行いがどこか滑稽(こっけい)に思えてきて、ボクは思わず微笑してしまった。

 「……何が、オカシイんだよ?」

 と、それを見て不思議に思ったのだろう。鏡さんは首を傾げた。

 いや、ね? とボクはその質問にもすぐに答えた。

 「ボクは今まで、鏡さんのことを〝ただの怖い人〟だと思って、いったいどうすれば会話ができるんだろう? なんてずっと真剣に悩んでたもんだから……そんな自分がバカみたいに思えてきて、つい笑っちゃったんだよ。……ごめんね、鏡さん。今まで誤解してて……あと、メモ帳に書いていただけとはいえ、鏡さんのことを〝鬼〟だなんて……本当にごめんなさい! ボクはなんてデリカシーがない男なんだ! こんな自分が憎いよ!」

 「い、いや、いいよ。……いや、よくはねーが、とにかくいいよそんなこと……くそ、調子狂うな……」

 ガシガシ、と鏡さんは頭をかいて続けた。

 「おら! とにかくもとにかくだ! これでもう用事は済んだんだろ? だったらさっさと帰れよ〝変態〟! お前が帰んねーんなら放っといてあたしは行くからな!」

 「――あっ! 待ってよ鏡さん!」

 「まだ何かあんのかよっ!!」

 ごめんなさい! 若干キレつつある鏡さんに一度謝ってからボクは急いで続けた。

 「いや、実はその、鏡さんに〝渡したい物〟があって……」

 「は? 〝渡したい物〟、だぁ?」

 これだよこれ!

 ボクは本格的に、怒られる前にすぐにポケットから手の平サイズの〝それ〟を取り出し、鏡さんに渡した。

 ――〝それ〟とは、

 「……あ? 何だよ、この妙にコジャレタ包みは……ん? まさか、これって……」

 「〝プレゼント〟だよ!」

 〝プレゼント〟? また首を傾げてしまった鏡さんにも分かるように、ボクはそこに補足を付け足した。

 「いや、実はさ……当初のボクの考えとしては、ボクは愛梨さん……どころか、キミに近づいただけで殴られると思ってて、それで――」

 「――つまり、物であたしの機嫌を取ろうとしたわけか……」

 そゆこと……ボクは、えへへ、とまた笑ってしまう。

 「……まぁ、その……今となっては、結果としてこれは全く必要なかったんだけど……せっかく一生懸命選んで買ってきた物だし、どうせなら渡したいな……なんて思ってさ。――あ、もし受け取ってくれるんだったら、その場で開けてみてよ! 気に入らなかったら今度また別なやつを買ってくるからさ!」

 「ふーん……ま、いくら〝変態〟が選んだ物だとはいえ、仮にもお前はお前なりに色々と考えてこれを用意したわけだ……そういうことなら、いいだろう。もらっといてやるよ」

 「ほんと!? ありがとう!」

 べつにお前なんかに礼を言われたくねーよ……鏡さんはそう呟くと、また頭をかいた。

 「……そんなことより、じゃあこれ、遠慮(えんりょ)なく開けるぞ? いいんだな?」

 もちろん! ボクが答えたのを確認してから、鏡さんはゆっくりと、丁寧(ていねい)に包装を解き始めた。

 ……さて、鏡さん……喜んでくれるかな???

 良い意味での、ドキドキ、がもう止まらない。ボクは思わず(うず)き出す身体を必死に(おさ)えながら、ただ黙ってその瞬間を待った。

 ――そして、遂にその時が……包装紙の最後の折り目が、鏡さんの手によって、今、開かれた!

 ……鏡さんの反応は?


 ドキャアッッ――!!!!!






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