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2-12改




 ――昨日愛梨さんと話した公園……その中央。〝決戦の地〟。

 「……これで今日、いったい何度目だ、〝変態〟? そんなに死に足りないのか?」

 掃除当番が終わり、下校してくる鏡さんをその場所で待ち伏せていたボクは、公園の正面。民家の屋根にのぼっていた甲呀が出した合図で公園の外に〝手だけ〟を出し、その手で手招きをすることによって、見事、鏡さんを公園内に誘い出すことに成功していた。

 ――幸いにも、と付け足しておくと、どうやらこの時間帯、この公園はいつも無人になるらしく、会っていきなり殴られることもなかったことから……つまりはこの瞬間、ボクは鏡さんと会話するための、その〝全ての条件をクリア〟したことになったのだ!

 すーはー、すーはー……鏡さんに悟られないように、何度か小さい深呼吸を繰り返したボクは、カッ! と眼を見開いた。そして、〝最後の作戦〟を開始する。

 「――鏡さん! 実は……キミに謝っておきたいことがあるんだ!」

 「……謝る、だと? 〝変態〟がいったい何をだ?」

 「今朝の……〝愛梨さんにしたこと〟についてだよ!」

 そう答えてから、ボクは……両膝を地に付け、正座した。

 「……今朝のことは、本当にボクが悪かった。たとえ愛梨さん自身が忘れて行っただけのことだったとしても、外から中身が丸見えな袋に入れて女の子に〝パンツ〟を返すだなんて……本当にデリカシーというものがなかったよ。だから……このとおり! こんなボクだけど、どうか許してはもらえないだろうか……!」

 バンッ!

 両方の手の平で地面を叩いたボクは、続いて頭もそこに打ちつける――〝土下座〟だ。ボクは昨日、同じくこの公園でそれをした愛梨さんと同様に……その行動をとった意味こそ違ってはいたけれど、誠心誠意、心から鏡さんに〝謝罪〟をした。

 それから、数秒後だった。

 「……おい、〝変態〟。〝それ〟……〝愛梨〟にはもう……言ったのか?」

 ――鏡さんの、まるで日本刀のような切れ味を持つ言葉……ボクはそれに、そのままの姿勢でウソ偽りなく答える。

 「……ううん。まだ、言ってない」

 なぜだ? ――一瞬の間も置かずに鏡さんは聞いてきた。

 「普通、そのセリフはまず、当の被害者である愛梨に言ってから、あたしみたいなのに言うことだろう? まさか、そんな〝常識〟すらお前は知らない、何て言うことはないだろうな?」

 「もちろん、それは〝変態〟のボクにもちゃんと分かってるよ」

 鏡さんの問いに、ボクもすぐに答えた。

 「でも……いくら謝りに行きたくても、時と場所が悪いということもあったし、何よりも、ボクが愛梨さんに近づいただけでキミは真っ先に殴ってくるでしょ? ……それが怖いから、というわけではないけれど……いや、それは〝ウソ〟だ。本当は、すごく〝怖い〟――でも、これだけは信じてほしいんだ! ボクはたとえキミに殴られてでも、愛梨さんに謝れるのならいつでも〝謝る覚悟〟はあった! ただ、そうする前に……口を開く前に、キミは愛梨さんを〝護る〟ため、ボクのことを殴る。だから……こんな失礼なことをキミに言ったらまた殴られちゃうかもしれないけど、ボクは、〝愛梨さんに謝るために〟、キミに謝りにきたんだ!」

 「……なるほどな」

 そう、静かに呟いた鏡さんは、ざ、ざ、ざ……と、それからボクの方に向かってゆっくりと歩いてきた。

 そして、

 ――ざっ!

 地面におでこを擦りつけたままの、ボクのすぐ目の前。立ち止って、鏡さんは言い放った。

 「顔を上げろ、〝変態〟!」

 ビクリ、とその声に思わず身体が反応してしまう。

 だけど、ボクは言われたとおり、ゆっくりと顔を上げ、襲いくる恐怖と闘いながらも、真っ直ぐに、鏡さんの眼を見つめた。

 ――でも、

 「――〝悪かった〟な」

 予想外にも、鏡さんの口からはそんなセリフが――

 「――って! え!?」

 わ……〝悪かった〟???





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