2-11改
――放課後、駅までの一本道。
「はぁ! はぁ! マズイマズイ! 選ぶのに思ったより時間がかかっちゃったよ! 周りに他の生徒の姿はもうほとんど見えなくなっちゃったし、鏡さん、まだ学校にいるかな!?」
L○NE! ――と、その時だった。
普段であれば帰り道に当たるそこを、全速力で逆走していたボクのポケットの中で、そうスマホが叫んだのだ。
おそらく甲呀からだろう。ボクはなるべくスピードを落とさないようにしてすぐにその画面を開き、文面を確認した。
――そこに書かれていたのは、
【落ち着け、泰介。まだ鏡は学校にいる。どうやら鏡は今日、掃除当番だったらしい。だから走りながらのスマホ操作は止めろ。マナー違反だぞ】
キキィ!! ボクは急ブレーキをかけた。そしてさらに邪魔にならないように道の端によってから、急いで甲呀に返信する。
【ごめん、甲呀! 確かに走りスマホは大変に危険なことだったよ! もう絶対にしないと約束する! ……で、甲呀? これからボクはどうすればいいの? どこでこのプレゼントを鏡さんに渡す?】
す、とものの二~三秒後に甲呀からの返信が届いた。
【だから落ち着けと言っている。――俺が新たに仕入れた情報によると、鏡も俺たちと同じく電車でこの学校に通っているらしい。故に、お前はむしろその道で鏡を待ち伏せし、プレゼントを渡せ。……ああ、もちろん。なるべく〝人目につかないような場所〟で待っていろよ? 道行く人にお前らの関係を〝誤解〟されでもしたら、さらにやっかいなことになるしな】
……〝人目につかない場所〟?
「う~ん…………そうだ! あの公園!」
はっ! と記憶の中にあったその場所を思い出したボクは、すぐに返信した。
【おっけー! じゃあボクは、この先にある公園で待機してるよ! 学校から出たらまた連絡して!】
【緑平公園だな。了解した。ちなみに、掃除の進み具合から考えて、鏡がそちらに行くまでにかかるであろう予想時間は、およそ〝十五分〟だ。だからお前はその間、ゆっくりと鏡を言い包めるためのセリフでも考えていてくれ。――オーバー】
…………。
今度のは、間髪すら入らなかった。何? この返信の速さ? いったいどうやってんの?
ボクはそんなことを考えながらも、スマホをちゃんとポケットにしまってから、再び走り出した。