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2-7改




 ――一年生教室前、廊下。

 「……で、甲呀? カッコよくキメて、またお…いや、鏡さんたちを見つけて尾行し始めたのはいいけど、これからどうするの? もう昼休みも終わる寸前だし、早くしないとボク、授業に間に合わないんだけど?」

 授業などもう諦めろ。そう呟いてから甲呀は続けた。

 「〝明日〟に向かって、とはいえ、元々今日中に何とかできる問題だとは思っていないことだしな……そんなことより、見ろ泰介。目標が動いたぞ」

 「え? あ――」

 甲呀に言われたとおり鏡さんの方を見てみると……距離があっても問題なく分かる。

 鏡さんは愛梨さんといっしょに教室に戻る途中、そこにたまたまいた女子生徒二人から声をかけられ、こくん、こくん、と何度か頷いたかと思うと、それから最後に、じゃあまた、といった具合に片手を上げて女子生徒たちと別れ、再び歩き始めたのだ。

 「あの二人……〝知り合い〟かな? 鏡さんに何か〝頼んで〟いるようにも見えたけど……あれがどうかしたの、甲呀?」

 「何? 分からんのか? ――鏡と〝普通に話している〟。鏡に何か〝頼みごとをする〟。……そんなこと、鏡のことを全く〝知らない〟ようなやつが、その場でいきなりできることなのか?」

 ――ああ! なるほど~!

 ボクは、ぽん、と手を叩いた。

 「つまりあの見知らぬ女子生徒二人組は、鏡さんの〝知り合いである〟可能性が、極めて高い、ってことなんだね!」

 そのとおりだ。頷いてから甲呀は続けた。

 「――さて、そうと分かれば、あの女子生徒たちを見失う前にさっそく調査を開始しない手はあるまい。……さぁ、今こそお前の出番だ、泰介! あの二人から見事、鏡に関する情報を聞き出してくるんだ!」

 「ふっ……ようやくボクの腕の()せ所、ってわけだね?」

 パサァ……ボクは短い髪を一度スマートにかき上げて、それから軽やかな足取りで二人の女子生徒たちに向かって歩き始めた。

 「甲呀……まぁ、キミは、豪華〝シャミセン〟に乗ったつもりで待っていてくれたまえ。はっはっはっ」

 「ああ。俺は浮きさえすれば〝シャミセン〟でも何でも構わん。……頼んだぞ」

 まかせろ! ボクはそう力強く応え、堂々胸を張って人ごみの中を進んだ。

 ――そして、

 「――あぁ、おほん! キミたち……ちょっと、いいかな?」

 「えっ? あ、私たちですか? 何です――」

 か――そう、言い終える、その直前だった。

 「――きぃぃゃあああああっッッ!!!!! 〝変態〟ぃぃぃいいいぃぃッッ!!!!!」


 ピ…シャアアアァァッッッ!!!!!!!!!!


 ――突然悲鳴を上げた女子生徒の一方……そこからボクの〝あご〟にめがけて飛んできたのは、まるでジャックなハンマーを彷彿(ほうふつ)させる、きれいな……見事な放物線を描いた〝拳〟だった。

 カッチィッッ! あごを打たれた衝撃で火花が散るボクの歯……打った本人が華奢(きゃしゃ)であるが故に、ジ○ックのように空中に浮いてしまうような威力こそなかったものの、それでも、そのアッパーカットの衝撃は、ボクの身体を後方へと大きく()け反らせるには十分だった。

 「……!!」

 言葉を発することが…いや! それ以前に、〝呼吸〟すらできない!

 ボクはそのまま、ゆっくりと、白目を向いて倒れ――

 「――いいいぃぃぃやぁぁあああああああっっっッッ!!!!!」


 ド…ボアァッッッッッ!!!!!!!!!!


 「げッはあァっっ!!!!!?????」

 ――だがしかし、それだけでは終わらなかった。

 もう一方の女子生徒――その娘が放ったのは、ただの右ストレート……ではあったものの、偶然か、はたまた〝天命〟なのか? ……背が低かったその娘の拳は、見事、まるで狙い澄ましたかのようにボクの〝ストマック〟へと突き刺さったのだ。

 しかも、その時のボクは〝仰け反って〟……そう、所謂〝エビ反り状態〟である。力の逃げ場を失って〝一点に集中〟したその拳の威力たるや、〝数十〟……いや、〝数百倍〟にまでハネ上がっていた。


 ――どさっ。


 ……それから、ボクが倒れるまでにかかった時間は、そう長いものではなかった。

 ボクは腹を抱えるように身体を丸まらせ、そのまま地面に崩れ落ち、絶命した……。





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