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「――うふふ♪ やっほ~☆ みんながんばってる~???」

 ――そう。入ってきたお客さんは、なんと私たちの部活の顧問であり、保健の先生でもある伊東先生だったのだ。

 伊東先生は(もちろん、と言うべきか)普段着ている白衣姿なんかではなく、上は白いトップスの上に淡いピンク色のカーディガン。肩からはブランド物でも何でもない、普通の茶色いバッグが下げられていて、下はこれまた普通のジーンズと、クリーム色のレディースサンダル……という、まるでお忍びでやってきたかのような、かなり大人しめな服装だった。……もっとも、伊東先生自身がものすごく美人さんだから、服装一つでどうこうなるようなものでもないのだけれど……。

 ――っと! それはともかくとして、

「伊東先生、いらっしゃいませ! ――もしかして、私たちの様子を見にきてくれたんですか?」

 レジから離れ、私は伊東先生の方に駆け寄りながらそう聞くと、伊東先生はいつもの優しい笑顔で答えた。

「うん。当たり☆ ――先生としても気になっちゃってね? 昨日はちょっと用事があってこれなかったんだけど、今日は大丈夫だったからきてみたんだ♪」

「そうだったんですね! お仕事お疲れさまです! ――あ、こんな所で立ち話もアレですので、どうぞこちらのお席に♪」

「ふふ、ありがと~♪」

 私は空いていた近くのテーブル席に伊東先生を案内すると、すぐに。後ろで待機していた太郎くんが、お冷とメニューを伊東先生に渡した。

「――大師匠、お疲れさまです。お冷とメニューをお持ちいたしました」

「あら、ありがとう山田くん。――へ~? それにしても……」

 と、伊東先生はなぜか、私と太郎くんのことを交互に見つめ始めた。

 ? どうしたんですか? 私が聞く前に伊東先生が先にその理由を話した。

「――みんな似合うな~☆ 何だか、メイドさんと執事さんみたいだね?」

「ああ、この服のことですね! この服は、えーと――」

 あ、いた! 私は、コーヒーメーカーが置いてある部屋からちょうど出てきたチーフのことを手で差して説明した。

「この服はあそこにいる、私の叔父さんの奥さんであるチーフが自分で作った服なんですよ! 何でも、昔からこういう服に憧れてたみたいですよ? 大人になってからだと、お店の制服でもなきゃこんな服着れない~、とも言っていましたけど」

「へ~? そうなんだ? でも……先生にも何となくその気持ちは分かるな~。だって、ほら。社会人になっちゃうと、どうしても〝人目〟っていうものが気になっちゃうでしょ? そのせいで派手な格好はあんまりできなくなっちゃうんだ~……。先生みたいに、学校の先生だったら、なおさらにね?」

 あ、なるほど。……いつもはあんなにも明るい伊東先生の普段着が、こんなにも大人しく、静かな印象になってしまっているのは、そのためだったのか……。

 先生という職業も大変だな……そんなことを考えていると、なぜか突然、伊東先生は、ぶんぶん、と両手を前で大きく振った。

「……って! 違う違う! そんな深刻な話じゃないから大丈夫だよ~☆ あくまでも先生個人の考えだし~」

 あっ! と思わず声を上げてしまった。どうやら何か勘違いさせてしまったらしい。

 すみません。私が謝ると、伊東先生は「ううん、いいのいいの。先生がこんなこと聞いたのが悪いんだし」と控えめに微笑んでから続けた。

「――それより、せっかくきたんだから、何か注文したいな? メニューは山田くんにもらったけど、みんなのオススメとかはあるのかな?」

「あ、はい。それなら――」




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