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「――え~、じゃあ改めて、開店時間も迫ってきたことだし、仕事内容を簡単に説明するからよく聞いてね!」

 ――現在時刻、九時五十分。

 始まる前から色々大変だったけれど……ともかく、十時開店に合わせ、お店のセッティングを終わらせたおじさんは、泰介さんがちゃんと〝男性用〟の執事風制服に着替えてきたのを確認してから話し始めた。

「まず、君たちの基本的な仕事内容だけれど、要はお客さんから注文を聞いてオジサンに伝えることと、できた料理や飲み物を運ぶこと。そして後片付け……この三つだけさ! もしそれ以外に仕事ができた場合はちゃんとオジサンやチーフから指示を出すし、分からないことがあったらいつでも答えるから、遠慮なく聞いてね? ――何か質問はあるかな?」

「あ、じゃあ、はい」

 と、手を挙げたのは桜花だった。

 桜花は、どうぞ、とおじさんに促されてから質問した。

「メニューに〝パフェ〟があると思うんですけど、それって注文が入った時にいつも愛梨かチーフが作ってますよね? あと、あの……何て言うんだっけ? ほら……コーヒーの泡に絵を描くやつも。あれって、今の愛梨じゃ厳しいし、全部チーフ一人で作るんですか?」

「ああ、それかい? さすが常連の桜花ちゃん! 色々分かってて助かるよ!」

 桜花ちゃん……呟く桜花に気づかず、おじさんは続けた。

「パフェに関しては全部チーフ一人が担当するよ。色んな種類があって、当然盛り方もそれぞれ違うし、入れる具も違うからね。さすがに初めてバイトをする君たちにやってもらうわけにはいかないから、安心してよ。あと、〝ラテ・アート〟に関しては、連休中は〝お休み〟ということにさせてもらってるんだ。何しろ忙しくてそんなことをしている余裕はないからね。もしお客さんに聞かれたら、〝すみません。連休中はお休みです。〟と答えてよ」

「あ、はい。分かりました~…………桜花ちゃん……」

 他に質問はないかな? おじさんが聞くと、続いて「は~い☆」とお姉さんが手を挙げた。

 お姉さんは挙げた手の勢いそのままに聞く。

「このお店の服って、何だかメイドさんと執事さんみたいな格好だけど……テレビとかでよく見る、〝美味しくなる魔法〟とか、かけたりするの? もえもえ~☆ キュ~ン❤ ……みたいな?」

「キューン! ――じゃなかった!!」

 魔法をかけるマネをしただけとはいえ、美人のお姉さんの魔法に思わずかかりかけたおじさんは、しかし、〝殺気〟のこもったチーフの鋭い眼光によってなんとか意識を正常に保ち、ゴホンゴホン! と咳ばらいを二つ……慌てて答えた。

「ああ、いや。そんなサービスはしてないから安心してよ。その服はただ単にチーフが趣味で作っただけだから。だからもちろん、オムライスとかにケチャップで絵を描く、なんてものもないからね? ウチは料理と飲み物で勝負する、正統派のカフェなんだよ! ――って、べつにメイドカフェとかが正統派じゃないってことではないんだけどね? ……とにかく! ウチはそういうサービスはしてないよ!」




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