表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
141/172

7-14




 ――今だ!! 心の中のあたしがそう叫んだ。確かに、会話が途切れたこの瞬間……〝変態〟に〝告白〟の結果を聴き出すのには、〝絶好中の絶好〟のタイミングかもしれない。

「……なぁ、〝変態〟?」

 あたしはできる限り自然に、そう呟くように聞き、〝変態〟の注意をあたしへと引かせた。

 それには当然、

「え? 何、鏡さん?」

 と反応が返ってくる。それを確認してから、あたしは、冷静に、とにかく冷静に、言葉を間違わないように、〝変態〟に聴いた。

「……お前さ、この間……クサレ長山との決着がついた日のことなんだが……あの日、お前は愛梨に――」

「――えっ!? もしかして鏡さん、見てたの!?」

 と、全てを言い終わらないうちに〝変態〟は驚きの声を上げた。あたしはそれに若干慌てながらも、すぐに言いわけを述べる。

「か、勘違いすんなよ! あたしは、ただ単に先生たちとの話が終わったから、普通に家に帰ろうとしてただけだ! その時たまたま見かけてしまってだな……!」

「そ……そうなんだ……ははっ、何だかちょっと恥ずかしいな……」

 ぽりぽり、と〝変態〟は鼻頭をかき、恥ずかしさからだろうか? あたしから視線を外し、そっぽを向いた。

 あたしはそれに構わず、そこに、予定していたとおりの言葉を投げかける。

「……で、その後はどうなんだ?」

「え? どうって……ああ、愛梨さんと? そりゃあ――」

 ……さぁ、どう答える、〝変態〟? お前の一言で〝告白〟の結果が――


「――確かに、〝断った〟けど、でも……」


 ――ガタンッッ!!

 〝変態〟の言葉に、あたしは思わずヨロけてしまった。それにより、さっきまで座っていた椅子にぶつかり、大きな音が保健室中に鳴り響いてしまう。

「……鏡さん?」

 それを見て不思議そうに、首を傾げた〝変態〟が聞いた。

「どうしたの、大丈夫?」

「あ、ああ、いやその……ちょっと、な……」

 ど、動揺を隠しきれない……なぜ、〝変態〟は――いや! ダメだ! 落ち着け、あたし! 今はそれ以上考えるな! 結果を聴き出せたんだから、今はそれでいいじゃないか!

 そう必死に自分を言いくるめ、あたしは急ぎ撤収の準備を――

「……何でだ?」

 ……あれ?

「何で、お前は……」

 ……お、おい、ちょっと待て、あたし! いったい何を――

「愛梨の〝告白〟を断ったんだ?」

 ――っっ!? 止めろ!! 止めろあたし! それ以上……!!


「――答えろこのクソ野郎ッッ!!!!!」


 ――それは、譬えあたしがどんなに冷静だったとしても、絶対に止めることはできはしない、〝心からの叫び声〟……まさにそういうやつだった。

 それを叫び終わった後に悟ったあたしは、今さらながらも、この話を聴くことにした、その判断自体が間違いだったと気づきながら、とにかく〝変態〟に向かって〝逃げ〟の言葉を発射することにした。

 ――しかし、

「――す、すまん! 今のはその……だから……ッッ!!」

 ……頭が、回らない。そのせいで口も動かず、言葉がうまく発せられない。


 逃げたくても……逃げれない……!!


 ははっ、なんて情けない姿だよ、まったく……。

 俯いて、あたしはそんな自分自身を罵った。

 ……最初は、愛梨にこんな〝変態〟は相応しくない! なんて言っていたクセに、いざその時となればどうだ? ……確かに、今でも表面上は相応しくない、とは思ってはいる。だけど、心の底では真逆……相応しく〝なってほしい〟と思っているのだ。

 それを証明するのが、先ほど叫んだあの言葉……『何で、お前は……愛梨の〝告白〟を断ったんだ? ――答えろこのクソ野郎ッッ!!!!!』…………。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ