7-10
――叫び声と共にボクが行った行動は、〝腕で視界を隠す〟、だった。
それを行った直後、ボクはその行動の意味をみんなに聞こえるように大声で話す。
「――ボクは最初、愛梨さんがノートに書いていたように、相手の女の人が〝パンツ〟を見られたという恥ずかしさを感じる前に、ホメ倒してそれを〝うれしさ〟に変えて乗り切ろうとした……でも、それじゃあダメなんだ! 女の人は、どんなにホメても、〝見られた〟という恥ずかしさの方が強く出てしまうんだ! だから、だから……!」
腕で視界を隠し、〝見えていなかった〟ことにするっっ!!!
「「「「「…………!!!!!」」」」」
……。
……。
……。
……言い終わった後の、長い沈黙…………。
ダメ……だったのか? とボクは、その反応に半ば諦めを抱きながらも、腕を外し、みんなの方を向いて話した。
「……ええと、ごめん……〝見えていなかった〟ことにすれば、女の人も恥ずかしがらずに済むかもしれない。……考える時間がないことこそが、〝答え〟。そう思ったんだけど……ち、違った……かな?」
「「「「「…………」」」」」
……みんなから返事は、帰ってこない。
つまり、やはりこのボクの答えは、残念ながら――
パチ……
「――え?」
俯きかけた、その時だった。
〝手を叩いた〟かのような音……それが、ボクの耳に届いたのだ。
ボクはそれに誘われるように慌てて顔を上げると――瞬間、
ぱちぱちぱちぱちぱちぱち!!!!!
「え……えっ!?」
巻き起こっていたのは、盛大な拍手……ボクはその理由が分からず、ポカーン、としたまま動けずにいると、鳴り止まぬ拍手の中、次々に声が上がった。
「よくやった、泰介! 現状、それが最良の策と言えるだろう!」
「ふんっ! お前にしては中々良い判断だったな」
「おめでとう、たいちゃん☆」
「先生もびっくりしちゃった! 大正解だと思うよ、緒方くん!」
「みんな……」
「――泰介さん!」
ありがとう。それを言う前に、最後に愛梨さんが席から立ち上がり、声を上げた。――それとほぼ同時に、拍手は瞬間鳴り止む。
愛梨さんはそれを気にする様子もなく、満面の笑顔で話す。
「おめでとうございます! 私の考えた答えもそれと全く同じですよ!」
「そ……そうなの? これで、本当に合ってる……の??? はは、何だか、正解したのにまるで実感が湧かないよ……」
「今はそれでいいと思いますよ? ――ただ、何度でも言いますけど、今の泰介さんの回答は、〝正解〟です! 理由も泰介さんが説明したとおりのことで、バッチリだと思います!」
「そう……なんだ……じゃ、じゃあ、〝喜んでも〟いい、ってこと……なんだよね???」
「ええ、もちろん! というか、今喜ばなかったら、どこで喜んでいいかわかりませんよ?」
「わ、分かった……じゃあ――」
バッ! 瞬間、ボクは両腕を振り上げ、叫んでいた。
「いいいぃぃぃやっったぁぁあああぁぁぁっっっーーーーー!!!!!」
――それから再び巻き起こった拍手は、ボクの振り上げた手が下げられるまでの間、ずっと鳴り止むことはなかった。




