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甲呀と鏡さん、愛梨さん……三人の、突然の大声。
ボクはそれに驚き、そしてその意味が分からずに困惑していると、三人はそんなボクのことを見ながら理由を説明した。
「それだ、泰介! べつに完全に乾かさなくても、ある程度水気がなくなればそれで充分なんだ!」
「そして一応言っておくが、タオルは〝渡すだけ〟でいいからな! この前みたいに、絶対にお前が手伝ったりなんかするなよ! ――つーか、最悪学校には体操着とかもあるんだしさ? あんまりにもヒドイようなら着替えてもらえばいいだけじゃんか! 何も乾かすまではしなくてもいいんだよ!」
「そうですよ! ブラ……下着まではどうしようもないですけど、ちゃんと謝れば許してくれますよ! 水をかけちゃったのはわざとじゃないんですから! ――あ! 替えのブラは絶対に用意なんかしちゃダメですよ! とにかく渡していいのは〝タオル〟だけですからね!!」
え……あ……???
「そ……そうなの?」
ポツリ。ボクは呟くように聞くと、また――
「「そうだ!!」」「そうです!!」
――という、何十倍も大きな声での答え……どうやら、などというまでもなく、何とも中途半端なこの回答、【乾いたタオルやハンカチを渡し、謝る】が正解であるらしい。……何でこんな何も解決しないようなことが答えなんだろうね?
「よし、一応、ではあるが、泰介の口から初めて〝正解〟が出たんだ。ここはその流れに乗り、訓練を続けようではないか!」
「「「「おー!」」」」
ボクの意見を聞く……何て考えは、すでにそこにはないようだ。いつの間にか落ち着いていたお姉ちゃんとゆりちゃん先生もそこに加わり、甲呀の提案に大賛成した。
つまりこれは、この部活の〝意思〟……やれやれ、だとしたら部長であるボクがそれに反論なんてできるわけがないじゃないか。むしろ、今度出されるお題(訓練)にも連続正解して、みんなの士気を上げなければ!
よしっ!! 気合も十二分に、ボクは堂々胸を張って甲呀に聞いた。
「甲呀! さぁ続けよう! 次のお題は何だい!?」
「うむ、次は――」
パララララ! 甲呀は持っていた、ヨレヨレ、なノート……愛梨さんがボクのために作ってくれた、色んな意味で思い出深い【部活動 計画ノート】をめくり、お題を一つ提示した。
「――これにしよう。【目の前で女子生徒のスカートが風でめくれ上がってしまった場合、どうするか?】……師匠、めくられ役をお願いできますか?」
「がってんしょうち☆」
指名を受けて、すぐにお姉ちゃんは立ち上がり、ボクの方に走ってきた。
甲呀はそれを確認してから改めてお題を詳しく説明する。
「よし、いいか、泰介? お前は師匠の〝パンツ〟など家で見慣れているだろうから、何とも思わないとは思うが……今の師匠は、あくまでも〝知らない女子生徒〟という設定だ。お前も身内としてではなく、そういう設定として師匠を見てお題に答えてくれ。――また、このノートにはすでにアイリサンが書き込んだ答えが書いてあるが、先ほどと同様に、まずはお前自身の考えで行動し、答えを導き出してみてくれ。……分かったな?」
「了解!」
では、始めるぞ! ――甲呀はその気合と共に、しゃがみ込むかのように一度深く身体をたわませた。
瞬間、だった。
――ぎゅんっっ!! バサァッ! 「いや~ん❤」
まさに疾風がごとく、甲呀の凄まじいスタートダッシュによって辺りには突風が巻き起こり、見事お姉ちゃんのスカートがめくれ上がった。
そこから見えたのは、今朝ボク自身が履かせたのだからもちろん知ってはいたけれど、淡い青色の、少し厚手の〝パンツ〟だった。
――しかし、今のボクとお姉ちゃんはあくまでも他人という設定! 従って〝パンツ〟も、今この瞬間に初めて見たことになる!
ならば、ボクの〝答え〟はすでに決まっている!!
――〝パンツ〟が見えたのは、ほんの数秒……めくれ上がったスカートが元に戻ったその瞬間を見計らって、ボクは叫んだ。
「泰介、お前の次のセリフは……」
「「お嬢さん……素敵な〝パンツ〟をはいていらっしゃいますね!」」
「――だ」
「――はっっ!!?」
ジ○セフ!!? 驚き、ボクは甲呀ジ○ースターの方を見ると……なぜか甲呀は、やれやれだな、とその孫のようなセリフを置いてから話した。




