7-5
――昼休みが半分ほどすぎた時間。保健室前廊下。
「さて、俺の活躍……否、暗躍により事件も文字どおり一件落着となり、皆も平常を取り戻したことだし……ここは、学生は学生らしく、部活動を再開したいと思う。――というわけで、アイリサン、鏡。それを食い終わったら部室(※保健室)まできてくれ。……以上」
――という、さも当然のように現れ、さも当然のように消えた太郎が問答無用に言い残した言葉に、仕方なく従うしかなかったあたしは、トイレに寄りたいから、と愛梨に先に部室へ向かってもらい、独りその場所を歩いていると……途中、掲示板でも何でもない。ただの柱に、〝妙なモノ〟が貼られていることに気がついた。
その、〝妙なモノ〟とは…………
【〝ART(愛梨さん・レボリューション・たまんねぇ~!)〟団・団員募集中★
入団条件・〝愛梨に恋して小出 愛梨〟な方のみ。
入団〝試験〟有。 時間・放課後十七時半~。 場所――】
…………。
……全力で見なかったことにしたかったが、しかし、いや待てよ? とあたしはそれにストップをかけた。
なぜか? それは――このような妙な軍団ができている(いや、できそう?)ということは、つまりは、愛梨のことを〝変態〟だと認識していない……ということになるのではないだろうか? ――と思ったからである。
少なくとも、この軍団を作ったやつとか、それに入団しようと思っているやつらとかは、愛梨のことをそうは思っていないはずだ。――いや、それ以前に、今になって思い返してみても、愛梨に対するみんなの態度は、事件の後も〝普段そのもの〟だ。どころか、あまり話したこともないようなやつらまで気軽に話しかけてくるような状況だ。
……なるほど、〝R〟……文字どおり、愛梨は〝変態〟という存在そのものに〝革命〟を起こしたのかもしれないな。
…………って! いやいや! 何独りで色々勝手に結論づけてるんだよ! 誰かに確認をとったわけでもないのに!
アホらし!
ガジガジ、とあたしは頭をかいた。
こんな紙切れ一枚であたしは何をそんなに……あー、もういいからさっさと行こう。愛梨や他のやつらも待ってるだろうしな。
何より、これ以上遅くなったりしたら昼休みが終わってしまうかもしれない。そう思ったあたしは、若干急ぎ足で部室……保健室へと向かい、早くも到着してその扉に手をかけた。
――そういえば、今日の部活はいったい、どんなことをするんだろう?
なんてことを考えながら。
ガララ。「悪ぃ、遅くなっ――」
扉を開けて、一応、と全員にそう声をかけようとした、その瞬間だった。
「――えっと、じゃあまずは服を脱がせて……」
「――へっ!? あああ、あの! あのあの!!?」
目の前にいたのは、まだ肌寒いのになぜか上着を脱ぎ、ブラウス一枚姿になっている愛梨と、
そして、
愛梨の胸元のボタンに手を伸ばし、それを〝脱がせ〟ようとしている、〝変態〟の姿――




