6-29 六話目終わり。
「そうです! これは、【第一回 〝変態を迎える人生〟部 対 先生 特別保健体育テスト勝負】の時の、泰介さんの答案です! もうしっかりバッチリ見させてもらっちゃいましたから、今さら隠しても無駄ですよ?」
「な、ななな! そ、そう……なんだ……じ、じゃあ、もしかして……あの〝最後の問題〟も……???」
もちろんです! 愛梨さんは、はっきりと答えた。
「一つ残らずちゃんと見せていただきました! そしたらビックリです! 泰介さん、なんと( )埋め問題なのに、途中から問題を一コ飛ばして書いちゃってるじゃないですか! これじゃあ普通のテストじゃ落ちちゃいますよ?」
「えっ!!? そ、そうだった? おかしいな、ちゃんと書いたはずなんだけど……」
…………あれ? てっきり〝最後の問題〟の答えは何かと、怒られてしまうんじゃないかと思ったんだけど……違っ……た???
……い、いや、違うのならそれでいいじゃないか! だって、あんな何となく……思っていることを〝そのまま書いた〟かのような回答……恥ずかしくて、とてもじゃないけど愛梨さんの顔を見ることができないよ! ……まぁ、( )埋めの問題なのに、一コ飛ばししてしまったことも、十二分に恥ずかしいことなのだけれど……ね?
……ま、まぁ、何はともあれだ。〝最後の問題〟のことを言われなかっただけでもマシ――
「――それから、この〝最後の問題〟もです!」
こふっ! ボクは思わず何かを吐き出しそうになってしまった。
愛梨さんはそんなことを微塵も気にせず、変わらない口調で話した。
「泰介さん? はっきり聞きますよ? これ、〝私に対して思ってることを〟、そのまま書いたんですか?」
「う、うん。だって、どう書いていいか分かんなかったし……それで……」
「じゃあ、ここに私のことを〝好き〟って書いてありますけど、これっていったいどういう意味なんですか!」
「え……? 〝好き〟は……〝好き〟……だけど??? ボクは愛梨さんのことが〝好き〟だよ? それがどうかした???」
「……やっぱり」
愛梨さんは、ただ正直に答えただけのボクの言葉で、何か確信してしまったらしい。はぁ、と大きくため息をついた。
「……いいですか、泰介さん? 女の子に〝好き〟って言う時は、そんな軽い気持ちで言っちゃダメなんです! 女の子に〝好き〟って言うのは、その人と〝付き合いたい〟とか、あとは……そう! 〝結婚したい〟とか、そういう時にしか言っちゃダメなんです!」
「ええっっっ!!?」
衝撃の事実……ボクは慌てて話した。
「そ、そうだったの!? ボク、毎回お姉ちゃんから言われてるから、てっきりもうちょっと軽い意味なのかと……!」
「……いえ、あのお姉さんの場合は〝100%〟、泰介さんと〝結婚するつもり〟で言ってますよ? 間違いなく……」
……こほん。とにかくですね! と愛梨さんは続ける。
「男の人が女の子に〝好き〟って言うのは、それくらい〝重要な意味〟があるんです! 逆に、もし泰介さんが女の子から〝好き〟って言われたら、〝そういう意味〟として考えて、それにはちゃんと返事を返してあげなくちゃいけないんです! ……わかりましたか?」
「あ! は、はい! ……キモニメイジトキマス…………」
……失敗したぁ~! と思った。
まさか〝好き〟という言葉に、そこまで〝深い意味〟があったとは……それをこんな軽く言っちゃったら、そりゃ愛梨さんだって怒るよね? 本来なら〝そういうふうになりたい人〟から言ってほしい言葉なのに……もう、何回そう思ったか分からないけど、ボクはなんてバカなんだ。だからいつまでも、みんなから〝変態〟〝変態〟と……
「――はい! それじゃあ、今から言うことは、ちゃんと〝そういう意味〟として受け取ってくださいね?」
と、その時だった。愛梨さんはそう言い置くと、突然――
「〝好き〟です! 泰介さん、私と……〝付き合って〟いただけませんか……?」
……。
……。
……。
…………え? あ……ああ! そういうことか!!
一瞬〝勘違い〟してしまったボクは、すぐに愛梨さんに聞いた。
「〝練習〟ってことだね? もう愛梨さん! そういうことなら先に――」
「練習なんかじゃありません! ……もう一度言いますよ? 泰介さん! 私は、あなたのことが、〝好き〟、です!!」
「……え…………あ……?????」
「こんなに言ってもまだわからないんですか!!?」
もうっ! とまるで、アツアツ、のペンキ(?)……を、顔中に塗りたくられたかのように、蒸気を吹き出しながら、顔を真っ赤に染めた愛梨さんは、しかし――
「だから……その……す、〝好き〟です……〝大好き〟…です…………だから……!!」
私を……泰介さんの〝彼女〟にしてくださいっっ……!!!!!




