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 「が……ぐ……が……が…………!!」

 ――〝勝負あり〟。誰が見ても、もはや揺るがぬ事実だった。

 「もういいぞ、鏡。そして師匠も撤収してください」

 そう甲呀が指示を出すと、お姉ちゃんはすぐに機器を乗せたカートを押して、きた道を戻り、放送室の鏡さんも、全ての照明をつけ、カーテンや幕のスイッチも押してそこから出てきた。辺りには再び光が充満する。

 「やれやれ。ようやく〝終わった〟な……」

 明るくなった視界……ボクたちの方を向いて、甲呀は話した。

 「感謝しろよ? 俺に、ではなく、師匠や、大師匠……そして特に、〝鏡に〟だ」

 「え……鏡…さん???」

 特に、という理由は? ――聞く前に甲呀は答えた。

 「実はな、鏡は俺との事前の打ち合わせで、最初から……それこそ泰介やアイリサンがこの〝事件を知る前〟から、この〝作戦〟のことを〝全て〟知っていたんだ。……アイリサンが泰介のことを〝助け〟にこなければ、その全てが十分に〝発揮されない〟であろうこの作戦の、その〝全て〟をな……!」

 「私がこなければ〝発揮されない〟……? ど、どうしてですか? 私が泰介さんを助けにこなくても、作戦は成功したんじゃ……?」

 いや、〝それはない〟。甲呀ははっきりと言いきった。

 「……なぜなら長山は、その時点では自身が考えた作戦を〝しゃべった〟だけ……実際にやったのは〝動画を広めた〟ということだけなんだ。これではただのイジメ……十分に反省していると嘘でも大人たちに認められれば、何の処罰も下されることはない。――それでは意味がないのだ。こいつ自身が全てを〝否定〟し、作戦の一部……今回の場合は、〝慰謝料〟という言葉だな。それを〝こいつ自身の口〟から言わせることで、作戦は作戦としての段階ではなく、〝実行された〟ということになるんだ! ……と、また話が逸れてしまったな。悪い癖だ……」

 ごほん! 一度咳払いしてから、甲呀は改めて話した。

 「――続きだが、鏡はそれを〝知っていた〟。知っていて、〝親友〟であるアイリサン。お前が〝困っている他人を放ってはおけない性格〟だということを考え、わざとお前を〝挑発〟するようなセリフを連発していたんだ。……気づかなかったか?」

 「あ……!!」

 愛梨さんが声を漏らした。どうやら、心当たりがあったらしい。

 「いや、泰介? お前もだぞ?」

 「え?」

 ……何が???

 聞くと、甲呀はため息交じりに答えた。

 「ふー……〝アイリサンに近づくな〟と言われただろうが。あれはこの作戦が発動する前に、お前とアイリサンが〝仲直り〟でもされたら困る、ということで言ったセリフだ。――まぁ、鏡自体、お前らは〝必ず仲直りできる〟……そういう確信めいたものがあったからこそ、言えたセリフではあったらしいがな?」

 「そ……そうだったんだ……」

 ふと、ボクは鏡さんの方を振り向くと……ばっ! と鏡さんは、瞬間そんなボクから顔を逸らした。……どうやら、〝恥ずかしかった〟らしい。鏡さんは、ふん! とわざとらしいため息をついて、しかし耳だけ真っ赤に染めていた。

 あはは、とそれを見て、なぜかこぼれてしまった笑みをそのままに、ボクは再び甲呀の方を向き直って話した。

 「ありがとう、甲呀。……みんなにも後でちゃんとお礼は言うけど、とりあえずは、まずはキミに言っておくよ。本当にありが――」


 「――くたばれこのクソ眼鏡野郎ッッッ!!!!!!!!!!!!」






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