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鳴り響く拍手……それを一瞬で、たった一声の怒声でかき消したのは……〝長山〟!!?
ダアァンッッ!! 長山は一度床を思いっきり殴りつけ、そのまま立ち上がってボクたちを指差しながら叫んだ。
「黙って聞いてりゃチョウシに乗りやがって!! 何だこの茶番は!? ――オレはなぁ! お前らの関係のことなんてどーでもいいんだよ! つーか! はっきり言って〝メイワク〟してんだよ! お前ら〝変態〟がいるせいでな!!!!!」
「なっ……!!」
〝迷惑〟――その言葉を聞いて、ボクは思わず愛梨さんから手を離し、前に一歩出てすぐに言い返した。
「迷惑……迷惑ってどういうことだよ! ボクたちがいつキミに迷惑をかけたって言うんだ!!」
「〝今〟だよ〝今〟!!! 現に、オレたち〝変態〟とは何にも関係ねぇ生徒たちが、こうやって〝お勉強の時間を潰して〟まで、お前らのわけわかんねぇ茶番に付き合わされてんだぞ!? これが〝メイワク〟じゃなかったらいったい何だって言うんだよ!!?」
「ぐ……それ、は……!!」
あーあ! とわざとらしく、長山は両手を大きく横に広げ、座っている生徒たちがいるのも関係なしに列の中を歩き始めた。――その周りにいた生徒たちは慌ててその道を空ける。
長山はそれから、列の中心部にまで歩いていくと、またボクたちの方を振り返り、言い放った。
「お前らよぉ、この状況をどーやって〝セキニン〟取ってくれんのかなぁ!? オレたちの大切な〝お勉強の時間〟……もうどうやっても取り返すことなんて、できねーよなぁ!!? どうすんだよ!? これでオレたちが授業についていけなくなって〝赤点〟とか、果ては大学とかの〝受験に失敗〟したら! ……間違いなくお前らのせいだよなぁ!!?」
「!? ――そ、それは元々、キミがボクのスマホを……!!」
「ハァー!!? 何のことかなぁ~!? オレには全く〝身に覚えがねぇ〟なぁ! ――あ! もしかしてアレか!? 〝お前がオレに送ってきた〟あの〝動画〟!! アレをオレが他のやつらにも見せたのが悪い! って言うのか!? だったらそれはお前の〝ジコセキニン〟っていうやつじゃねーのかなぁ!? ……だって、そうだろ!? 〝お前が〟、〝オレに〟、頼んでもいねぇのに〝勝手に〟あの〝動画〟を〝送りつけて〟きたんだぜ!? 何なら〝証拠〟を見せてやろうか!? オレのスマホには確かに、〝お前からオレ宛に〟あの〝動画〟が送られてきてるんだからよーッッ!!!」
「~~~ッッ!!!」
しまった! そう思い、ボクは歯を噛みしめた。
……悔しいけど、そのとおりだ。残っている〝証拠〟は全て、ボクの言っていること証明するどころか、逆にあの、〝長山のことを助けるようなもの〟ばかりだったのだ。
動画をバラまいたのも、それはあくまでも〝ボクからその動画が送られてきたから〟そうしたというだけで、しかもバラまいたと言っても長山自身が送ったのは、〝最初のほんの数人〟だけ……それが勝手に広がっていってしまったのと長山は、もはや〝無関係〟であるに等しかった。
これでは真実がどうであれ、傍から見れば悪いのはボク一人……長山の言うとおり、ボクの〝自己責任〟ということになってしまう!!
言葉を返そうと思っても返すことができない……そんなボクの様子を見てか、長山は、ニヤリ、とうれしそうに笑い、もう一度ボクを、ビシリ! と指差した。
「ほら見ろ!! やっぱりお前が悪いんじゃねーか!! それを…えっ!? 何!? まさか何にも悪くねぇオレのことを悪者にして、自分は逃げる気だったのか!? カァーッッ!! こいつはマイッタね!! お前は〝変態〟でありながらにして、〝サイアクのワル〟だったってことか!? 何とも救いようのねぇやつだなおい!!」
「お、おい! 長山! もうその辺に……」
あまりにも過ぎる言動……それを見かねた体育教師が遂に長山を止めに入った――けれど、
「えっ!? まさか先生……先生までオレが悪いって言うんですか!?」
長山の口は止まらない……どころか、注意したその言葉が、ますます長山に拍車をかけた。
「うわぁー!! オレってなん……って! 不幸なんだ!! 俺は何にも悪いことはしてねーのに、〝悪いことを叱る立場にある〟先生に怒られちまったよ!! もうオレのココロはズタズタだよ!! このままじゃ〝登校拒否〟でもするしかねーかなぁー!!?」
「ぐぅ……き、キサマ……!!」
………………。
体育教師は……いや、体育教師だけではない。他の先生たちも、もはや長山の言う言葉に、何も返すことはできなかった。
〝どうすることもできない〟……この場にいる全員が、それを痛感させられた瞬間だった。




