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 「……なっ…………!!?」

 ……ボクは、言葉を失った。

 ……当たり前だ。ボク自身を犠牲にし、〝助けよう〟と思ったその人が、いきなり全てを台なしにするようなセリフをみんなの前で言い放ったのだ。

 自然にボクの足は止まり――だけど、それでも愛梨さんの言葉だけは、止まらなかった。

 愛梨さんは大粒の涙をこぼしながらも、続けた。

 「……小さい頃から、なんです。……私、小さい頃から……人前で服を脱ぐと、すごく恥ずかしい気持ちになって……でも、それ以上に、その恥ずかしさを〝楽しんでいる〟自分が心の中にいて……それでたまに、学校帰りに、誰もいないような場所に行って……〝脱いで〟いたんです。……泰介さんはそれをたまたま見かけて……でも、それでも、泰介さんは、私のことを〝変態〟だとは言わずに……ずっと、真剣に話を聞いていてくれて…………泰介さんたちが作った〝変態を迎える人生〟部は、そんな私や、泰介さん自身が〝変わる〟ために作った部活です。……誰に言われたからではありません! 私自身が、〝入りたい〟……! 〝入って〟、そして〝変わりたい〟と思って入部した部活なんです! だから……泰介さんが私のことを脅しただなんて……〝ウソ〟……真っ赤な〝ウソ〟なんです! ――悪いのは〝私〟! 悪いのは全部、私〝たった一人〟だけなんです!! だから! 泰介さんが責任を取って退学になるのなんてオカシイんです!! 何もかも全部! オカシイんです!! だから! だか…ら……!!」

 ……。

 ……。

 ……。

 ……数秒の沈黙……。力なく、挙げていた手を下ろした愛梨さんは……だけど、泣きながらもボクのことを真っ直ぐに見つめ、話した。


 「――泰介、さん……こんな……こんな、勇気の、ない……自分勝手な、私ですけど……泰介さんの、ことを、〝キライ〟……なんて、言ってしまった、私……ですけど……私の、ことを……〝許して〟……くれますか……? そして、またいっしょに〝部活〟を……!!」


 「もちろんだよ!!」


 ボクは、もはや何の迷いもなく、愛梨さんのその言葉に、すぐに答えた。

 「ボクは最初から……愛梨さんと出会って、〝秘密〟を知ったあの日から、ずっと愛梨さんのことを応援していたんだ! ――ボクが許すとか、そんなの関係ないよ!! 愛梨さん! キミがボクのことを許してくれるんだったら、ボクは何だって協力する! 何でもいいから、どんなことでもいいから、キミの〝力〟になりたいんだ!! だから……ボクからも聞いていい? こんな、ドジで、おっちょこちょいで、キミに迷惑ばかりかけているような、どうしようもない〝変態〟のボクだけど……ボクのことを……〝許して〟……くれる……?」

 「……!!」

 ……愛梨さんは、一瞬、驚いたような表情をしていたけれど……でも、それから、はっきりと、ボクの質問に〝満面の笑顔〟で答えた。


 「――はいっ!!!」


 次の瞬間、静寂に包まれた体育館内……鳴り響いたのは、〝拍手〟の嵐だった。

 え? え? とボクはそれに困惑し、なぜこんなことが起きたのか、全く理解することはできなかったけれど……しかし、泣きながら走り寄り、抱きついてきた愛梨さんが、ボクの耳元で……「ありがとうございます! 本当に、ありがとうございます……!!」そう何度も呟いたことで、そんな細かいこと……ボクはもう、一切考える気にはならなかった。

 ボクは、ただ……愛梨さんが許してくれたこと。そして、また愛梨さんといっしょに部活ができるんだ、ということを……ただ、心から嬉しく思っていた。

 ……その思いからだろうか? ボクはただ、ゆっくりと、そんな愛梨さんのことを、優しく抱き締めた。

 ――だけど、刹那だった。


 「――ふざけんじゃねぇッッ!!!!!」





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