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#1,〝出会い〟と〝変態〟。 1-1改

 2016.3.5(土曜日)、投稿済分の全編集作業が完了いたしました!


 【お嬢さまは居候?】に引き続き、こちらの作品も主に誤字、脱字等の修正を行っただけとなりますので、すでに作品を読み進められている方は改めて物語を読み直す必要はありません。どうぞご安心ください!

 ――これからもよろしくお願いいたします! 


 ――ボクの名前は、緒方(おがた) 泰介(たいすけ)。小学生の頃にちょっとした〝ミス〟を(おか)してしまい、それ以来〝変態(へんたい)〟という忌々(いまいま)しいあだ名を、中学を卒業するに(いた)るまで引きずってしまった、悲しい男である。

 ――しかし! そんなボクの人生も遂に、今日というこの日からは新たな〝転機(てんき)〟を(むか)えることとなった!

 なぜなら……そう! 今日は待ちに待った――


 「〝高校の入学式〟だからだ!! やっほーいっっ!!」


 ――四月一日。朝の生徒玄関前の道路。

 長年想い続けたことがようやく現実のものとなった……そのことを頭で理解した瞬間、ボクの身体は、ボクの意思とは関係なく、

 ――()びはね、

 ――ガッツポーズをとり、

 まさに全身でその〝喜び〟を表してしまっていた。

 そのせいで……ここは、学校に通う生徒たちそのほとんど全員が、職員玄関から入らない限りはほぼ必ず通る道路……当然、通学時間帯のここには、ボクと同じように登校してきた生徒たちが大勢いることになる。――ボクは周りにいたその人たちに、一斉に「何だ!?」と不審(ふしん)な目で見られてしまうことになった。

 「あ! いえ! 何でもないです! あはは……」

 とっさにそう誤魔化(ごまか)すと、周りの生徒たちは未だ不審そうな目でボクのことを見ながらも、しかしやがては視線を外し、そのまま生徒玄関の方へと歩いて行った。――ボクはそれを確認してから、ふぅ~、と(ひたい)の汗を(ぬぐ)う。

 ……危ない危ない。やっとのことでボクはみんなから〝変態だと呼ばれない環境(かんきょう)〟を手に入れることができたのに、周りから浮いてしまうような行動をとっては意味がない。……できるだけ静かにしていなくては……。

 ……え? そもそもなぜ、高校に入学しただけで〝変態〟と呼ばれずに済むのか? ――って? それはねぇ……。

 ――実は、ボクは中学生の頃から〝ある計画〟を()りに練っていて、ベストな〝時と場所〟でそれを実行させたことにより、この度ボクは見事! 〝変態〟と呼ばれずに済む状況を得ることに成功したのだ!

 その〝計画〟……その名も――っっ!


 〝みんなとは違う高校に行こう!!〟――計画だ!


 ――計画の全容をできるだけ簡単に説明すると、ボクが通っていた中学校……同級生はもちろんのこと、卒業生も含めた〝ボクという存在〟を知り得る〝全生徒の進路〟を先生などに聞いて確認し、誰も〝受験すらしていない高校〟を探し出してボクだけがそこに通う。……というものだ!

 片道電車で二時間……毎日早起きして学校に向かわなければ間に合わない、という辛い道のりではあるものの、そんなもの、今まで味わってきたことに比べれば()でもない。

 ……そう! 小学生の頃を合わせて、苦節(くせつ)〝九年〟! 生きてきた年数の半分以上……なんと、〝2/3〟もの時だ! その〝真に辛い道のり〟に比べれば、この程度のこと……いや、それにしても、〝長〟かった……実に、この道は辛く、(けわ)しく、そして…〝(なが)〟かった……。

 ほろり……と、ボクは思わず、今までの辛い記憶を思い出し、一粒(ひとつぶ)(なみだ)をこぼしてしまった。

 ――っと、イケナイイケナイ!

 いつまでも感傷(かんしょう)(ひた)っている場合じゃないな。――なぜなら今日は、そんなボクの、新たな学生生活の、文字どおり〝始業式〟だ。ボクにとっては大事な大事な式なのに、こんな所でずっと立ち止っていたりなんかしたら遅れてしまう! 早く教室に行かなくては……。

 そう考えたボクは涙を拭い去り、前をしっかりと向いて、目の前に見える生徒玄関に向かって歩き出した。

 ――と、気がつくと……ボクがきた時にはまだそこまで多くの生徒はいなかったはずなのに、いつの間にかそこはもう、他の登校してきた生徒たちでいっぱいになってしまっていた。

 あれ? そこまで長い時間感傷に浸っていたつもりはないんだけどな? いつの間に……てゆーか、何でみんな中に入らないんだろう?

 ??? とボクは思わず首を(かし)げたけれど、しかしその理由は、集団の近くに行くとすぐに分かった。

 ――〝クラス発表〟だ。

 計画により、実際ボクは知り合いのみんなとは違う学校に通うことになったために、あんまり……というか、全く気にはしていなかったのだけれど……なるほど、と納得(なっとく)する。――そりゃあそうだ。普通は仲の良い友だちなんかと一緒のクラスになりたいもの……みんなが注目するのにも無理はなかったのだ。

 ――さて、気にしていない……とはいえ、自分のクラスが分からなければ、そこに行くこともできないしね? さっさと見て、そんでもって早く教室に行こうかな?

 そう思ったボクは、さっそく玄関前に設置されたホワイトボード……()り出されていたクラス表を確認しに、それに近づいた。

 ――と、その瞬間(しゅんかん)だった。

 なぜか、そんなボクに気づくと同時に、その通り道にいた生徒たちがすぐに道をあけてくれたのだ。

 ……なぜだろう? なんて、最初は不思議に思ったけれど、考えてもみれば、ここはそもそも九割方が、所謂(いわゆる)〝友だち待ち〟ってやつだったのだ。

 つまり、クラス表を見終わった生徒たちにはもう、この紙に用はないわけで、後ろからまだ見ていない生徒がきたら、当然のこと、道をあけてあげなければそれを見ることができないのだ。〝礼儀(れいぎ)〟として、彼らはボクに道をあけてくれたのだろう。

 ――ここの学校の生徒たちは、なんて優しいんだろう……ボクも見習わなくっちゃ!

 そう心に決めたボクは、それから、ありがとう! ありがとう! と礼を言いながら進み、みんなの厚意(こうい)でボードの最前列まで苦もなく到達(とうたつ)することができた。――さっそく、一組から順に自分の名前を調べていく。

 「えーと、緒方……緒方……お? あっ……た…………???」

 でも……と、差した指ごと、ボクは固まってしまった。

 ――というのも、


 【1―1 7番 緒形 泰介】


 ……お気づきだろうか? そう、〝がた〟の字が間違っていたのだ。正しくは〝方〟という漢字。緒〝方〟だ。

 ……あ、いや、待てよ? もしかしたら同姓同名の、漢字一文字違いの人がいるのかもしれないな? 一応、他のクラスも見ておこうか……?

 ……。

 …………。

 ………………。

 ……うん、ないな。

 どうやら、というまでもなく、結果からしてこの緒〝形〟さんは、ボクのことであるらしかった。

 ……まぁ? これだけいっぱい生徒がいるんだもの。一人くらい名前が間違っていることくらいあるさ。

 ははは、ボクは笑った――とはいえ、この紙だけで間違っているのなら、べつに問題はないのだけれど、教室に行っても……()ては健康診断とかの紙にもこの名前で書かれていたりなんかしたら、たぶん、色々とマズイ。……どうしよう?

 ――そんなことを思っていた、その時だった。

 「――あれ? アタシの名前間違ってる!」

 と、すぐ隣にいた女子生徒Aが声を上げたのだ。どれどれ? とそれを確認した友だちらしき女子生徒Bもすぐに声を上げる。

 「ホントだ! ――ねぇ、これすぐ先生に言った方がいいよ? 健康診断の時とか、たぶんこの名前のハンコ押されるよ?」

 「え? うっそ~! マジで?」

 「ホントホント!」

 間違われた経験でもあるのか、女子生徒Bはすぐに首を縦に振った。……どうやら、やっぱりボクも先生の所に言いに行かなきゃならないらしい。

 やれやれ、仕方ない……そう思ったボクは、さっそく――

 「ん?」――ピタリ。動きかけて、しかしボクは止まった。というのも……。

 ……ここは、さっきの……みんなの〝親切さ〟を見習って、ボクも女子生徒Aに声をかけておくべきかな? だって、ほら? いくら友だちが一緒だからといっても、初めて会う先生とかには何かと声をかけ辛いものだし……。

 …………。

 ――よし! 決めた! ボクも一緒に行って先生に取り合ってあげよう!

 一瞬どうしようか迷ったボクではあったけれど、どうせ言うのならまとめて言った方が良いに決まってる。そう考えたボクはさっそく女子生徒Aの方に振り向き直り、すぐに声をかけた。

 「――あ、ねぇ? そこのキミ? 実はボクの名前も間違ってて、これから先生の所に行こうと思ってたんだけど……一緒に行かない?」

 「え? ホント?」

 くるり。女子生徒Aがボクの方を振り向いた――瞬間だった。

 「――ひっ!?」

 突然、女子生徒Aがそんな声を上げたのだ。

 「え? 〝ひ〟???」

 〝ひ〟、って……いったい、何のことだろう?

 気になったボクは……特に、理由があったというわけではないんだけれど、女子生徒Aに向かって〝手を伸ばし〟ながら、聞いた。

 「ねぇ? キミ――」

 ――刹那(せつな)、だった。


 「――きゃあああああぁぁぁッッっっっ!!! 〝変態〟ぃぃぃぃぃいいいいい!!!!!」






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