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本日、二話目の投稿です。

 長い一週間も終わった。

私に気を使う凰士と、どうにか元鞘にしようと奮闘する沙菜恵と美人。あり難い気もするが、余計に辛くなる事もある。そんな状態で心身ともに疲れ果て、やっと週末だ。気分転換のドライブ。

「おはよう。」

「おはよう。来た?」

 午前十時に車が来ると言うので、九時四十五分過ぎに家を出た。隣の玄関横に仁王立ちで車を待つまぁくんの姿。

「まだ。まったく、遅いよな。」

「十時になっていないからね。あっ、もしかして、昨夜、嬉しくて眠れなかったとか?」

「子供の遠足じゃないんだぞ。」

「ふぅん。でも、十五分も前にそわそわと車を待っている人が言っても説得力ないよね。」

「煩い。」

 私の髪を大きな手でぐしゃぐしゃにしながら、笑っている。私も両手でそれを阻止しながら、笑った。

「あれ、白雪、まぁくん。」

 吹雪が車の鍵を指で回しながら、玄関から出てくる。

「おはよう、吹雪。」

「おはよう。何しているんだ?」

「もうすぐ、まぁくんの新車が来るの。」

「どうして、白雪が一緒にいる訳?」

「気分転換にドライブだよ。」

 吹雪が疑いの眼差しを浮べる。

「ふぅん。そういう事。まさか、白雪。さっさと凰士からまぁくんに乗り換えた?」

「吹雪、何て事を言うんだ!」

 まぁくんが声を荒げる。

「気分転換しちゃいけない?」

「じゃあ、別にまぁくんじゃなくてもいいんじゃない?女友達と遊べば?まぁくん、白雪に手を出さないでって、最初に言ったよね。白雪には、凰士って決まった相手がいるんだからさ。アイツ、独占欲強くて、嫉妬深いから、見つかると大変だよ。」

「もう、関係ないわよ。それに、まぁくんに失礼でしょう。」

「吹雪、お前って相変わらず鋭いな。」

 まぁくんが吹雪に苦笑を零している。

「俺、白雪が好きだよ。だから、白雪に手を出そうとしている。でもさ、吹雪には関係ないだろう。凰士ってヤツが、文句を言うなら、俺も話を聞いてやっても良いけどな。それとも、吹雪ってシスコン?あぁ、昔から、そんな感じだったモンな。」

「なっ。」

 吹雪が言葉を詰まらせている。さすが、まぁくんだ。

「でも、凰士ってヤツも俺に何も言えないよな。だって、白雪に振られたんだろう。」

 もしもしぃ、まぁくん。火に油注いでない?

「でも、白雪は凰士の事が好きだ。」

 反撃に出る辺りが、さすが吹雪。でも、そこで負けているまぁくんではない。そうでなければ、幼馴染とは言え、お兄さん的立場を維持出来ないだろう。

「だから?」

 『ぐぅっ。』と短く鳴き、言葉を詰まらせる。が、すぐに顔を上げた。

「別に気分転換でドライブに行くだけなら、俺が一緒でも構わないだろう。」

「今から出掛けるんじゃないのか?」

「そんなのキャンセルしてやるよ。」

「吹雪?」

「白雪、いい加減にしろよ。こんなに下心丸出しのヤツと二人きりでドライブに行ったら、何されても文句は言えないんだぞ。」

「吹雪、どうして、そうやって、まぁくんに失礼な事ばかり言うの?まぁくんが、そんな下心を持つはずがないでしょう。」

「甘い。いっくら時代遅れのかぐや姫だって、その位わかるだろう。」

 眉間に皺を寄せ、頭を抱えている。そんな事を言われても、ねぇ。

「と言う事で、俺も一緒に行くから。」

「どうぞ、ご自由に。」

 あぁ、何でこんな事になっちゃったんだろう?全然、気分転換にならないじゃないか。

「と言うか、明那とデートじゃないの?ドタキャンされたら、きっと怒るわよ。」

「明那ならわかってくれるさ。白雪の一大事と言えばね。」

 別に一大事じゃないけど、確かにそう言えば、明那なら納得するだろう。

「あっ、あれじゃない?」

 二台の車がこちらへ走ってくる。一台は白いセダン。もう一台はシルバーのステーションワゴン。多分、まぁくんの車は後車。

「お待たせいたしました、竜頭様。」

「お待ちしておりました。」

 営業スマイルの男性が二人、車から降りてくる。営業でも私達とは違うと妙に感心してしまう私。

「どうぞ、中に。」

「はい、失礼致します。」

「白雪と吹雪も上がれよ。ケーキ、あるぞ。」

「うん。お邪魔します。」

 ケーキに負けたわけじゃないぞ。このまま、ここで吹雪と二人でいたら何を言われるかわからない。だから、避難だ。

「あら、白雪ちゃんと吹雪くん。二人が征規のドライブ相手?」

「はい。」

「大丈夫なのかしら?」

「えっ?何がですか?」

 まぁくんのお母さんが、車を持ってきた営業の方々にお茶を出した後、私達にもお茶とケーキを用意してくれる。ちなみにあっちはリビング、こっちはダイニング。小さな頃から行き来をしているから、家族同然。

「ほら、長い間、まともに運転していないでしょう。それに、慣れない車だし、心配しているのよ。」

「あぁ、そういう事ですか。」

 吹雪が歯切れの悪い返事。

「あっ、でも、安心して。向こうでも友達の車やレンタカーを利用していたらしいし、こっちに帰ってくれば、お父さんの車を乗り回していたし、完全なペーパードライバーでもないのよ。」

「大丈夫でしょう、まぁくんなら。」

「あの、おばさん。まさか、ハンドル持つと性格が変わる訳じゃないですよね?」

「まさか。」

 おばさんが楽しそうに笑うので、私も義理笑い。まったく、吹雪は。

「白雪、いざとなったら、運転変わろう。こんな事で命を落したくない。」

 耳元で呟く吹雪。あぁ、どうして、そういう考えに及ぶのかな?これじゃ、会社にいるのと同じくらい疲れてしまう。

「相変わらず、仲が良いのね。」

 おばさんがにっこりと笑みを零す。微笑で誤魔化す事に成功。

「お待たせ。引渡しは終わったよ。」

「本当に大丈夫?」

 吹雪がダイニングに現れたまぁくんに失礼極まる一言。

「何が?」

「ほとんどベーパードライバーだったって。」

「大丈夫だよ。保険も入っているし、余裕。」

「そういう問題?」

 吹雪が心の中の突っ込みを、代わりに声にしてくれた。

「安心しろって。」

 吹雪の肩を叩き、笑っている。まぁ、大丈夫だよね?

「征規、あんまりスピード出すなよ。」

「わかっているよ。じゃあ、行ってきます。」

「気を付けてね。」

 玄関先でおばさんとおじさんに見送られる。外に出るとピカピカの新車。

「さて、白雪は助手席でいい?」

「後ろの方が安全だぞ。」

「じゃあ、吹雪が助手席に来るか?」

「えぇ、それは勘弁。」

「助手席が誰も乗っていないのって、淋しいよね。私、助手席に乗るね。」

「さすが、白雪だ。」

 運転席にまぁくん、助手席に私、後部座席の真ん中を陣取ったのは吹雪。車は穏やかに発進した。

「心配して、損した。結構、普通。」

「うん。」

「だろう、心配はいらないって。」

 まぁくんが横顔で微笑みを零す。

「さて、何処に行こうか?白雪と二人きりなら、泊まりで温泉とかもいいかなって思っていたけど、邪魔者がいるからな。」

「そんな事だろうと思った。」

 後ろから吹雪の呆れた声。

「冗談に決まるでしょう。吹雪、本気にしたの?イヤね。」

「それが甘いんだよ。本当に白雪って、隙だらけだよね。それで何度も男に騙されたんだろうな。イヤだイヤだ。」

「失礼な。」

 まぁくんが楽しそうに笑い出す。

「相変わらず、二人は面白いね。」

「姉弟漫才みたいに言うのは止めて欲しいね。で、何処に行くんだ?」

「白雪、何処に行きたい?」

 急に振られても困る。

だって、今まで二人で考えてきた。ガイドブックとかインターネットとかで調べて……。

ヤダ、私、何を考えているんだろう。忘れるんでしょう。

「景色が良くて、ぼんやり出来る場所に行きたいな。何も考えずに、いられる場所。」

 一瞬沈黙が流れる。

私、ヘンな事、言った?

「わかった。大きな公園で芝生が広がっていて、でも、少し離れた場所なら、子供の声が煩くない場所。どうだ?」

「うん、そこがいい。」

「お昼はその傍にイタリアンの店があるんだ。値段も手頃で味もまぁまぁ。」

「うん。」

「へぇ、どうして、まぁくんはそんな場所を知っているんだろうね。」

 吹雪の声が意味深な響きを持っている。

「俺だって、この年齢になると色々あるんだ。吹雪はなぁんにもないのか?」

「う、煩い。」

 漫才をしているのは、この二人だろう。でも、声にはしない。非難が集中するのは目に見えている。


 三十分ほど走った場所に公園があった。大きな駐車場にはたくさんの車が止まっている。緑が多くて、空気が美味しい。

「行こう。」

 駐車場から入るとすぐに芝生が広がっている。小高い丘が作られていて、そこで子供達が楽しそうに遊んでいる。

「こっちだよ。」

 まぁくんの後をついて、その丘を越えていく。しばらく歩くと、小さな池があって、鯉が泳いでいる。そのちょっと先には鬱蒼と生える木々。

池に沿って少し歩くと、人気が少しだけなくなる。あんなに賑やかだった子供達の声もここまで届かない。

「ジョギングコースになっているんだ。だから、この時間は人が少ない。散歩コースは別にあるからね。でも、景色がいいだろう。」

「うん。素敵な場所だね。」

 池沿いのベンチに並んで座る。まぁくん、私、吹雪の順番。

「喉渇かないか?」

 ぼんやり池の鯉を見ていると、まぁくんが急に口を開いた。

「うん。」

「吹雪、ちょっと買って来いよ。駐車場の所に自動販売機があっただろう。」

「えぇ、俺?」

「普通、一番若い者が率先して動く。あっ、俺、コーラな。白雪は?」

「私、紅茶がいいな。」

「わかったよ。」

 不満を零しながら、吹雪が歩き出す。まぁくんと視線が合って、小さく笑った。

「白雪、俺、ふざけているんじゃないから。吹雪に言ったのは本当だよ。」

「まぁくん…。」

「焦らせるつもりはないけど、良い返事を待っているから。」

 私は無言のまま頷いた。胸が痛い。

「そんな顔をするなよ。」

「ごめん。」

 小さく謝ると、肩にぬくもり。顔を上げると、まぁくんと間近で視線が合う。

「えっ?」

 驚きの声が途中で塞がれる。一瞬だけ、唇が重なった。

「まぁくん?」

「俺も男なんだよ。嫌なら、少しは警戒しろよ。誘っているなら、いつでも大歓迎。」

 指先で唇に触れ、そっと撫でる。

知らないぬくもりだった。凰士のモノじゃない唇。

「白雪?」

「あっ、ごめん。あの、私…。」

「今のは警告だよ。大丈夫、白雪の同意を得られない限り、これ以上何もしないよ。」

 首を少しだけ下げ、頷く。大きな手で、髪を撫ぜる。その手は優しくて、痛い。

「どうした?」

 まぁくんが顔を覗き込んだ。

「白雪?ごめん、悪かったよ。少しふざけただけで。泣くなよ。」

「えっ?」

 まぁくんが慌てている。言われて初めて、自分が泣いている事に気付いた。

「何で泣くんだろう?」

 涙を指先で拭っても止まらない。

どうして?胸は痛いけど、そんなに泣くほどの事じゃない。それなのに…。

「相当、弱っているな。自分でわからないのか?そんなにアイツが好きなのか?」

 苦笑を零しながら、泣いている私を抱き寄せ、優しく髪を撫ぜてくれる。

「わかんない。」

 掠れた声が零れ落ち、まぁくんのシャツにしがみ付く。

近くのぬくもりが心地良いと思う反面、凰士じゃないと胸の奥が軋みだす。

「私、どうして、泣いているの?何が辛いの?自分で決めた事だよ。それなのに、こんなのおかしいよね?」

「大丈夫、時間が解決してくれる。」

 私もそう凰士に言ったよね。それなのに、自分が同じ事を言われるなんてね。

「ごめんね、まぁくん。」

「白雪がこんなに泣き虫になっているなんて、想像していなかったな。」

「私も。」

 肩を竦めて、少しだけ笑った。

「それにしても吹雪、遅いな。」

「本当ね。まさか、迷子になってないよね?」

「まさか。じゃあ、吹雪が戻ってこないから、二人で何処か行っちゃおうか?」

「冗談でしょう?後でごちゃごちゃと煩く言われるのは嫌よ。」

「確かに、煩そうだな。」

 声を出し笑う。それと同時に吹雪の足音。

「随分楽しそうだな。」

 不機嫌を顔に貼り付け、登場。

「何、膨れっ面しているんだ?」

「あっ、わかった。明那のご機嫌が斜めになったんでしょう。そうだよねぇ、ドタキャンじゃ、仕方がないわよね。」

「それなら、いい。」

「えっ、何?まさか、別れを言われたの?」

「違う。今からこっちに来るって。合流したいって。」

「えぇ。冗談でしょう?」

「断りきれなった。有無も言わさず電話が切れて、繋がらない。もう車に乗り込んで、こっちに向かっていると思う。」

「ごめん、まぁくん。私、帰る。送ってくれないかな?それか、吹雪と別行動。」

 まぁくんに神妙な顔で言うと、複雑な表情。

「えぇ、白雪、そういう事言うか?明那の事、嫌いなのか?」

「嫌いじゃないわよ。良い子だと思う。でも、今の精神状態じゃ、耐えられる自信がない。だって、平日は美人と沙菜恵に煩く言われているんだよ。休日くらい、静かに過ごしたいの。吹雪だけだって、うんざりなのに。」

「うんざりって何だよ。失礼な。」

「だって、事実。まぁくんの事、悪く言ってばっかりなんだもん。」

「はい、はい。で、どうしても嫌なら、二人で消えてもいいよ。」

「本当に?」

 私じゃなく、まぁくんが嬉しそうな返事。

いいのか?それで。

「明那には適当に言っておくよ。白雪と凰士が別れたと聞いただけで逆上していたから、今日、煩く言うのは目に見えているからな。」

「ありがとう、吹雪。」

「泣かれたら余計に面倒だから。」

「どっちが、よ?」

「もちろん、白雪。明那が泣く理由ないじゃん。あっ、でも、わかんないなぁ。二人同時に泣かれたら、冗談じゃないし。」

「じゃあ、そういう事で。」

 まぁくんはさっさと立ち上がり、私に立つように促している。

「まぁくん、白雪を泣かせたらどうなるか、わかっているよね?手も出すなよ。」

「はい、はい。」

「本当にわかっている?」

「大丈夫。白雪を泣かせるはずないだろう。泣かせているのは、元彼の方だ。」

「その種を蒔いたのは白雪だけどね。自業自得だけど、とばっちりを受けるこっちの身になって欲しいよね。」

「じゃあ、放っておいてよ。皆で。」

「それが出来れば、苦労はしない。」

「あぁ、そうですか。」

 投げ遣りな返事をして、立ち上がる。

まぁくんってば、ちゃっかり肩に手を置いている。

「じゃあ、行こう、白雪。」

「うん。じゃあね、吹雪。」

「だから、白雪に手を出すなって言っているだろう。」

 吹雪の叫び声を聞きながら、歩き出す。まぁくんは気にも留めていないらしい。

って、吹雪が買ってきてくれたジュースを飲むのを忘れていたぁ。

「まぁくん、喉渇いた。」

「あっ、そうか。さっきのジュース、忘れていたな。何処かでお茶しようか?」

「うん。」

 まぁくんの新車に二人で乗り込み、発進。少し走ると、小さなカフェ。

あっ、ここ、前に凰士と一緒に来た。手作りスコーンと自家製ハーブティーの美味しいお店。

「ここでいいか?」

「あっ、うん。」

 頷きながら、まぁくんの顔を見上げた。

凰士、じゃないんだよね。当たり前の事を何度確認しているんだろう。本当にバカ。

「いらっしゃいませ。あら?」

 品の良い女性が出てくる。私の顔を見て、少しだけ驚いている。

「前にも来ていただきましたよね?」

「えっ、えぇ。」

 彼女は歯切れの悪い私の返事を聞いて、隣に立つまぁくんに視線を向けた。

「あっ、ごめんなさい。こちらへどうぞ。」

 一瞬言葉を詰まらせたが、営業スマイルを作り出し、席に案内してくれる。

「決まりましたら、声を掛けて下さい。」

 そのまま営業スマイルを浮かべ、席から離れていく。

あぁ、何か気まずい。

「前に来たのか?」

「一度だけ。」

「それだったら、言ってくれたらよかったのに。思い出して、辛いだろう?」

「ちょっとだけ。でも、乗り越えなくちゃ、何処にも行けなくなっちゃう。」

 苦笑を零すと、まぁくんは瞳を細め、優しく微笑んでくれる。

「偉いな。」

「褒められちゃった。」

 わざとおどけて見せた。だって、そうじゃないと凰士との思い出に浸ってしまいそう。

ここの席、あの時、座った場所。窓の外の景色、よく憶えている。小さな窓に二人で覗き込んで、たくさん笑った。

「さて、何にしようか?」

「ローズティーがいいな。」

「じゃあ、俺も。スコーンはどうする?」

「まぁくんに分けてもらう。」

「お昼が食べられなくなってしまうからね。」

 片手を挙げ、先ほどの店主を呼ぶ。

あぁ、凰士と同じ。でも、何かが違う。当たり前だね。違う人物だもん。

「これからどうしようか?」

「まぁくんに任せる。」

「そうか。じゃあ、湖でも行ってみようか?」

「うん。」

 こんな私といて、まぁくんは楽しいのだろうか?まともな会話も出来ないし、上手に笑えている自信もない。何かにつけ、凰士の事、思い出しちゃって、哀しくなる。

「吹雪の彼女、どんな子?」

「あぁ、明那ね。」

「白雪があんなに嫌がるなんて、さ。」

「良い子なのよ。でも、苦手。女版の凰士みたいで……。」

 言葉が続かなかった。口元に当てた指先が震えている。

「それで?」

 まぁくんは気付かないフリをしてくれる。

こういう優しさって、ズルイ。

「煩く付き纏われるのよ。私の事、白雪お姉様って呼んでね。」

「よかったな、姉御じゃなくて。」

「それじゃ、違う世界になっちゃうじゃない。女子高で先輩に憧れる女の子って、あんな感じなのかなって思う。」

「白雪、女にもてそうだもんな。」

「ちょっと、どういう意味よ。」

 まぁくんの魔法だろうか?会話が続けるようにしてくれる。

「うん。肩で風を切っている感じ?」

「それじゃ、姉御じゃない。」

 笑えている。

不思議。さっき、言葉さえ浮かばないほど胸が痛かったのに、もう、忘れようとしている。

多分、きっと、こうして、まぁくんと一緒にいられたら、私、凰士の事、忘れられるよね?

「大丈夫だよ、白雪。心配するな。」

「まぁくん?」

「白雪は少しずつ浮上している。」

「まぁくんのお陰かもね。」

「役に立てて、よかった。」

 笑みを交わし、届いた紅茶を口に含む。薔薇の香りが口いっぱいに広がった。それから他愛無い話を選んでくれて、穏やかな時間を過ごせた。

私、このまま、元に戻れるかもしれない。



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