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鏡と魔法

作者: 疾風

鏡よ鏡、真実を教えておくれ

 鏡は真実を映す、故に神聖とされ、魔術師からは厄介とされる(抜粋~魔術の心得より)


     ●


 前々から気付いてはいた。

 麻紐で縛った髪の色が父とも母とも似てない事を。

 それどころか、水に映る己の瞳の色も違う事を。

 だが、顔は判らなかった。水に映る己以外を見た事が無かった為、確信は持てなかった。

 似ていない親子だ、と、近所の悪がきに言われた時は気にはしなかった。だが、旅の途中の『村の外から来た者』から、似ていないと言われた時、心臓はざわりとなった。


 そして、今、生まれて初めて『鏡』を見た。


 そこに映し出されていたのは、父とも母とも似ていない――美少女、だった。


「えーっと・・・これは、どーゆー事かなぁ?」


 思わず言葉が零れ落ちる。

 この世界に生を受けて13年、初めて見た己の姿は、近くの町で一番の美少女と評判の娘より、美少女だった。


「まあ、待て、ちょっと待て、私が美少女だとは誰からも言われた事は無いぞ」


 今までの人生を思い返す、父は『可愛いうちの娘』と呼んでいた、が、それは父親としての評価かもしれない。

 近所の悪がきも、年嵩の者も、年下の者も、そんな事を言ってきた記憶が無い。


「と、なると、この鏡が曲者かな?」


 じっと、初めて見た『鏡』を見る。

 この『鏡』は森の中に落ちていた、掌サイズの鏡だ。


「鏡のようで、鏡ではない、事実を映さない、魔法の鏡だろうか?」


 そう思いながら、近くの花を映す、と、そのままの姿を鏡に映す。

 手に持っている籠とその中にある薬草を映す、と、そのままの姿を映す。


「んー?」


 判らない、そう思いながら、とりあえず『鏡』を籠に入れた。

 そろそろ陽が真上に来る。その前に帰って薬草を調合しなければ鮮度が落ちて、効力も落ちる。


「帰ろう」


 そう決意すると、家へと向かった。

 集落の外れにある家まで、誰とも遭遇せずについてしまった。

 誰かに鏡の事を話したかったのだが、仕方が無い。

 家の扉を開けば、ふわり、と、薬草の匂いが広がった。


「父さん、薬草を取ってきた」


 そう、声をかければ、奥でごそごそと音がする。


「おー、キャティ、おかえり」


 父が奥から出てくる。

 平凡、を絵に描いたような容貌だ。茶色い髪と茶色い瞳、ほどほどの身長にほどほどの体型。

 ご近所の木こりや農家のオジサン達に比べ細い、そこが特徴と言えば特徴かもしれない、そんな特徴が無い父だ。


「キャティ、お帰りなさい」


 母は菜園の方に居るようだ。そちらから声がする。


「必要なのはあったよ。で、途中で変な物を拾った」


「変な物?」


 父が首を傾げる。

 テーブルの上に籠を置き、薬草を取り出す前に『鏡』を取り出した。


「鏡、だよね?これって」


 そう言ってテーブルに鏡を置けば、父は――後ろに下がった。


「ど、どうしたんだ、これ?」


「森の中に落ちていたの、鏡って確か同じ大きさの金貨と引き換えにするほどの高級品だよね? これだったら金貨10枚くらいかな?」


 そう説明すれば、父が焦ったのが判る。


「そ、そう、か」


「えーっと、それで、ね、父さん」


 父の瞳をじっと見る。


「父さんは茶色の髪で茶色の瞳。母さんは茶色の髪で黒色の瞳。で、私が金色の髪で青色の瞳、で、あってるの?」


「え、あ、ああ、そうだねー」


 父は視線を彷徨わせる、冷静な父にしては珍しい様子だ。


「鏡に映った私の顔、父さんとも母さんとも似てなかったんだけど、私、養子なの?」


 ずばっと切り込む、と、父は慌てて頭を左右に振った。


「違う、違うって、間違いなく父さんと母さんの子供だ!!」


 その叫びに、母が部屋に飛び込んできた。

 母も平凡な容貌だ。ただ、スタイルは良い。ぶっちゃけ巨乳で腰が細い、近所の奥様方が羨ましがるナイスプロポーションだ。


「どうしたの?」


 その母に鏡を見せた、ら、母も硬直した。


「母さん?」


「どうしてキャティが鏡を持ってるのよ!!」


 母の悲鳴が響く。


「森に落ちていた。後で長に届けに行く、けど、どーゆー事なの?」


 その言葉に母ががっくりと膝を落とした。

 父もオロオロとしている。

 やはり、何か、あるのだろうか?


「とりあえず、薬草茶を淹れるけど、説明、してくれるよね?」


 その言葉に父も母も力なく頷いた。


      ●


 薬草茶を飲みながら、話を聞いた所、鏡に映った姿はあっているけど間違っている、そうだ。


「どーゆー事?」


 意味が判りません、と、父を見た。


「キャティには幻覚の魔法がかかっているんだ」


「幻覚の魔法? えーっと、魔法ってのは、特定の者しか使う事が出来ない特殊な技術、だったよね?」


 そう、教えてくれたのは父だ。


「そうだ、で、『鏡』は真実を映す。魔法で姿を偽ってる為、偽りの姿の方ではなく、真実の方が映って見えるんだ」


「えーっと、じゃあ、この鏡に映る、近郊でも稀な美貌の少女は、私であってるのね? うわぁ、ありえねー」


 思わず悪がきっぽい言い方になってしまう。


「じゃあ、父さんか母さんが魔法を使えるの?」


 父と母の顔を見る。


「父さんも母さんも使える」


 父の言葉に思わず半眼になる。


「あれ?魔法を使える者は非常に少ないって言ってたよね?」


「ああ」


「父さんやキャティに幻覚の魔法を使って居るのは、私の方よ」


 母が疲れたように言った。


「えーっと、つまり、3人とも、正しくない姿になって見えているって事?」


 その質問に父と母が頷いた。


「なんで?」


 そっちの方が疑問として強い。


「実は父さんと母さんは、ここじゃない違う国の出身でね、それぞれ違う国の出身なんだけど、戦争をしているんだ」


 父の言葉に首を傾げる。


「しているって、現在も戦争しているの? ってなると」


 旅人から聞いた言葉が脳裏を横切る、確か、強国同士が戦争をしており、周辺国が巻き込まれている、だったはずだ。

 遠い遠い土地の物語りだ。


「で、戦場で出会って、父さんが母さんに一目惚れしたので、母さんを掻っ攫って逃げたんだ」


「なにそれ」


 思わす半眼で父と母を見てしまう。

 母が頬を染めながらモジモジと下を見ている。


「そう、なのよね」


「えーっと、父さんが母さんに一目惚れしたけど、周囲が認めてくれなかったから、駆け落ちした、だったっけ? ああ、嘘は言ってないのか」


 昔に聞かされた思い出話、確かに間違っては居ないだろう。


「逃亡生活の為、姿を偽っていたのよ、で、この集落にたどり着いた時、母さん妊娠していてね」


「で?」


 モジモジしている母をじーっと見ていると、父が慌てたようにこちらを見た。


「出産するまでのつもりで、この集落で薬師として仕事を始めたんだ」


 父の言葉に頷く。

 逃亡生活だったかはともかく、駆け落ちの途中でこの集落に辿り着いたとは聞いた事があった。

 父が薬師として有能なのは、大きな町で修行をしたから。

 母が文字の読み書き、それどころか計算もできるのは、大きな町の大店の娘だったから。

 そうとだけは聞いていた。


「で、母さんがキャティを出産した時、生まれたキャティは母さんの本当の色彩と同じだったんだ。本来は母さんそっくりの幻覚をかけなければならなかったんだが、出産の疲れでそれが出来なかったまま、近所の奥様達にキャティを見られたんだ」


 父の説明に、なんとなく流れが見えた。


「それ、で、私の髪は金色で、目が青色なのね」


「ああ、金色の髪は父さんの母譲り、青色の目は母さんの父譲りって説明したんだ」


 なるほど、と、頷く。


「じゃあ、母さんそっくりなの?私の色って?」


 その言葉に父が力強く頷く。


「ええ、顔の方は成長するにしたがって変わる物だから、魔法が使えるようになったら、すぐに幻覚で顔を変えて、少しづつ変えていたの」


 母の言葉に頷く。


「理解した、つまり、父さんとも母さんとも似てないと旅の人に言われたのは幻覚が原因なんだ」


 その言葉に父と母は頷いた。


「あー、うん、判った、つまり、私は今どんな顔をしているのか、私には一生判らないのね」


「ま、まあそうなるな」


 父が頷く。


「でも、父さん、母さん、私、一生、母さんの幻覚をかけてないとダメなのかな?」


 その言葉に父と母がうーんと唸る。


「それ、は、無理ね。毎朝、起きた時にキャティと父さんに幻覚を掛けなおししてるの、だから、家から出たら、幻覚をかけれないわ」


 その言葉に思わず半眼で父と母を見る。


「それって、やばくない?嫁に行ったら、人違いされるよ」


 その言葉に父と母が互いを見た。


「そ、それもそうか、てか、嫁、嫁か、キャティももう14歳になるから、そんな、遠い話じゃないのか」


 父が苦悩を開始した。

 母も眉を顰める。


「そう、ね、とりあえず、急に変化すると変でしょうから、少しずつ正しい姿に近くなるように、かける幻覚を変えて行く方が良いわね」


 その言葉に思わず溜息をついた。


「てか、鏡を見てビックリ仰天するほどの美少女が居たんだけど、あーなるの?」


「勿論だ、母さんは超美人だからな」


「あら、お父さんも凄い格好良いのよ」


 頭が痛くなる。


「とりあえず、理解した」


 溜息が出るが仕方が無い、私はそのうち美少女になるらしい。


      ●

 

 鏡を拾ってから2年、15歳になった私は、近郊で知らぬ者が居ない美少女になってしまった。

 最近、求婚者が多くてメンドクサイ。

 友達が惚れてた男からも求婚され、女の友情にヒビがメチャクチャ入った。

 ぶっちゃけ、今、友達は居ない。

 それどころか、美少女で文字の読み書き計算が出来て、薬草に詳しく調合の特技がある為、大きな町から奉公に出ないかとの話すら来ている。

 奉公先のお誘いは複数あり、それぞれ、色々としがらみがある為、簡単に選べない状況だ。


「父さん、母さん、私、どうすれば良いかな?」


 そう、聞けば、父も母も唸る。


「そうね、母さんのオススメは町に出て、婿探しかしら」


「婿か、そうか、婿か」


 父がいじけた、話にならないので除外する。


「求婚者が多いのは村でも町でも変わらないでしょうから、それならいっそ、大量の求婚者から選べば良いわよ」


「メンドクサイ」


 恋愛沙汰に伴う、あれこれはもう、うんざりです。正直に答えてみた。


「でも、いつかはキャティの運命の人と出会うわよ」


「はー、そーですかー、うーん」


「そして、出会いが多ければ多いほど、運命の人と出会える確率は増えるから、母さんは町に出るのをオススメするわ」


 そんなうっとり顔の母を見て疑問がわいた。


「母さんって、求婚者沢山だったの?」


「ふふふ」


 嬉しそうに笑う、そんな母にこれ以上突っ込みは入れれなかった。

 しかし、その様子を見て父が復活した。


「キャティが奉公先を特に選ばないと言うなら、布問屋を父さんはオススメするな」

 布問屋、と、聞くと、恰幅の良い女将さんが思い出される。

 足に古傷があり、寒くなると痛くなるから、と、秋に薬を買いに来ている人だ。


「布問屋さん、か、女将さんが旦那さんを尻に敷いてたね」


「ま、まあ、そうだな。で、若旦那は新婚さんだからな、あそこなら、妾にとか話は無いだろう」


 その言葉にうーんと唸る。


「布問屋さんは、確か、三人兄弟で、次男が外に修行に出ていて、三男が何故か領主様のところで兵士をしている、だったよね?」


「ええ、そうよ、次男は入り婿の話が来ているそうよ」


 母の言葉に頷く。


「それは確かに、安全そう。じゃあ、そうするかな」


 そう言えば、父と母は頷いた。


「ところで、父さんと母さんは姿を偽ったままなの、どうするの?」


 前々から疑問だった事を聞く。

 父と母は顔を見合わせた。


「そう、だな」


「どうしましょう?」


 何も考えてないようですか、そうですか、と、思わず呆れてしまう。


「実は呪われていて、呪った相手が死んだから元に戻りました、とか、ダメかしら?」


 母の言葉に思わず半眼になる。


「それはそれで、騒ぎになるよ、そうだな、うーん・・・」


 父が宙を睨む。


「でも、術をかけられていた、あり、かな? 戦争も終ったようだし――」


 父と母の出身国の戦争はどうやら終ったらしい。巻き込まれていた小国連合が戦争に疲弊した大国2国を打ち破ったらしい。

 それに伴い、戦争はいったん終ったが、大国内で内乱になった為、ますます治安が悪化している、と、こんな遠く離れた僻地にすら噂話が流れている状態だ。



『多分、誰かが覇王になり、全ての国を統一でもしない限り、戦乱は終らないだろうね』



 そう、呟いた父の言葉が印象的だった。


「まあ、そのうち考えるよ」


 父の言葉に母は頷いた。

 それで、私の今後の生き方は決まり、父と母の生き方は保留となった。


      ●


 布問屋に奉公に来て半年、私は奉公先を変更する事になった。

 領主様の館だ。

 布問屋の三男坊が私に逢いに巡回の途中で寄るようになり、休日は帰ってくるようになった。

 そのうち、同僚の兵士が伴うようになり、そこから領主様の騎士に噂が行き、騎士が顔を見にきた。

 騎士に知られ、そこから、館の家令様に知られた。

 わざわざ、見に来た、暇なんて無いはずなのにさ。

 そうしたら、領主様のご令嬢の侍女にならないか、と、誘われてしまった。

 一応、両親に相談したいと言ったのだが、それは建前でしかない。領主様の館に勤めるのだ、それは名誉である、ので、奉公先の変更を連絡しに行くも同然だ。


「はぁぁ」


 思わず溜息が出る。


「どうしたんだ?」


 ぼんくら三男坊がこちらの顔を覗く、ついでに手を握ろうとするので、一歩下がる。

 傷ついた顔をするが、知った事では無い。

 私は私に触れる者を選別したいだけだ、許可無く触れるような男など、ありえないのだ。


「別に家まで送っていただかなくても良いのですが」


「いや、キャティのご両親の事を知らないしさ、一応挨拶をしておこうと思ってよ」


 恋人気取りなのか、なんなのか。

 両親から口説こうと言う事だろうか?馬鹿らしい。

 そう思いながら家の前に立てば、懐かしい薬草の匂いがする。


「ただいまー」


 そう言って扉を開ければ、母が居た。


「あら、キャティ、どうしたの? って、男連れ?」


 母の言葉にぼんくら三男坊がにやっと笑った。


「あ、始めまして、お母さん、俺は」


「布問屋の三男坊、任務でもないのに送ってくれたの」


 すぱんと言葉を切る。


「あら、そうだったの、ありがとう」


 母がニコリと笑う、平凡な容姿だがその笑顔は綺麗だ。


「え、ええ、まあ」


 ぼんくら三男坊が照れる。そのすきにこちらの要件を伝える。


「母さんあのね、領主様の館でご令嬢の侍女になる事になったの」


「あらあらまあまあ、それは大変、父さん、父さん、キャティが大変なの」


 母が慌てて奥へ向かう。


「じゃあ、ここまでありがとう、明日は父さんと一緒に町に戻るから大丈夫よ」


 ぼんらく三男坊にそう言い、追い出す。


「え、だけど、ほら、何かあったらさ」


 泊まる気マンマンの様子だったが、女将さんからも言われている。


「女将さんが晩御飯を作って待ってるんだから、ほら、急がないと町についたら日が暮れるよ」


「え、別に、母さんの事は良いし」


 そんな事を言ってる間に父が奥から出てきた。


「おお、キャティ、お帰り、と、布問屋の息子さんだね、ここまで送ってくれたのか、ありがとう」


「え、いえ、その」


 三男坊が取り入ろうとする、が、父はそれどころでは無いようだ。


「で、キャティ、どういう事なんだい?」


「父さん、ほら、まず座ってお茶を飲んでから話しましょう」


 母さんがお茶の準備をする。


「ってなわけで、じゃ、ありがとう」


 さっさと扉を閉めて、ぼんくら三男坊を追い出す。

 扉の前で立ってる気配がするが、それどころではないのが我が家の都合だ。

 テーブルの椅子に座り、とりあえず母のお茶を頂く。


「あいつ、恋人か?」


 父が真面目な顔でこちらを見る。


「女将さんからも言われてるけど、何人も女を泣かせたダメ息子だから結婚相手にはダメだって」


 その言葉にほっとしたように頷くのを見て、安堵する。

 良かった、恋人と勘違いはされなかったようだ。

 家のお茶を飲めばほっとし、心が安らぐ。


「とりあえず、事情説明ですが、領主様の館の家令様に何故か気に入られ、ご令嬢の侍女として勤めないかと言われました」


 その説明に父と母が頷く。


「ご令嬢は13歳。次の冬に社交界デビューの予定。最終的には王都に連れて行かれて、下手すると王都のお屋敷勤めになるかもしれません」


 その途端、父と母が不安そうな顔になる。


「王都か、うーん、この周辺ならともかく、王都かぁ」


 父が心配そうにこちらを見る。


「キャティなら、王都で貴族の侍女として勤めれるわ」


 母が溜息と共に言う。


「そうなの? すごく難しそうなんだけど、王都のお屋敷勤めなんて」


 礼儀とか五月蝿そうだし、とか思っていたのだが、母が顔を横に振った。


「見た目重視なところがあるから、その容姿なら、多少の失敗でもどうにか誤魔化せるわ、問題は今以上に求婚者やら身の危険がある事ね」


 その言葉に父が半眼になる。


「む、そんなヤツ、ぶっつぶす、いや、付いて行けないか、うーむ」


「とりあえず、良い人が出来たら紹介してね」


 母の言葉に父が絶望的な顔になる。


「とりあえず、女将さんはのりのりで、王都の貴族の目に留まるかもしれないとかなんとかで、退職金代わりに服を仕立ててくれるそーです」


「そうね、領主の館の侍女ともなれば、普段着もそれなりのを準備しないとダメよね」


「メンドクサイ」


 本当にメンドクサイ。


「でも、頑張りなさい、貴女の人生なんだから」


「はーい」


 母の言葉に頷く。


「田舎娘だからと、軽々しく声をかけてくる男には気をつけるんだぞ」


 父の言葉にしぶしぶ頷いた。


     ●


 こうして、鏡によって魔法を解かれてしまった私は、森の薬師の娘から店の売り子となり、ついには領主の侍女として王都へ向かう事になりました。

 メンドクサイけど、仕方が無いようです。

 あの時、鏡を見つけなかったとしても、魔法使いとしての才能が無い私は、遅かれ早かれ真実の姿で生きなければならないのですから。

 そう、納得させ、領主の館の前に立つ。


「よくいらっしゃいました、キャティ」


 ご家令様がにこやかに笑う。

 20代半ばのご家令様の裏のありそうな笑顔に、女将さん直伝の笑顔を浮かべる。


「今日からよろしくお願いします」


 頭を下げる。


「ええ、よろしくお願いします」


 その言葉を聞いてから、頭を上げる。


 そして、キャティの新しい生活が始まった、この先の事は・・・そのうちに。

よくよく考えたら、オリジナル設定の小説を書いたのは、初めてでした

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