2
時は流れ、高校1年。
エリート魔法学校にソニアとシャーナは通う。
今は基礎魔法の授業。
魔法植物についての、1年の時誰もがやるグループ実習だ。
課題に沿うように魔法植物に魔法注いで花を上手く咲かせるのだ。
4人1グループで、雷、火、水、草という順番に特定の条件で魔力を植物に注ぐと咲く植物である。
この授業の主な主旨は、魔力のコントロールの上達と、グループでの協調性を高めることだ。
絶妙な魔法の調整と魔力の出し方がポイントになる上、協力しないと花を咲かせることはできない。
雷→ある一定の電流を流すと育つ
火→ある一定の温度の火を当てると花が咲く
水→ある一定の水温の水を注ぐと花びらの色が変わる
草→ある一定の草魔法を注ぐと種を出す
教科書通りの手順。
シャーナは内容頭に入れると、退屈そうに教科書を閉じた。
「さぁ!とっととこんなお遊び終わらせるわよ!ユーリ、あなた頭いいんだからこれくらい……」
「もう終わったわよ」
「え?あ、そう?じゃあ次!あなたよ!」
草魔法を得意とする植物授業なのだからか、同じグループのアンジェが妙に張り切っている。
自分の分野故に、堂々と指示する側に回っているらしい。
アンジェは雷魔法が終わったので、次の火魔法のシャーナに植木鉢を渡した。
花はもうすぐ咲きそうな蕾である。
「まぁ、この学校に入るくらいですもの!これくらいは出来て当然よね!早くこっちに回ってこないかしら〜」
(一々癪に障る言い方するなー。無駄口多いし)
アンジェは由緒正しい貴族の生まれで、エリート街道まっしぐらのお嬢様らしい。
村出身のソニアとシャーナが同じグループで、気に入らないところがあるのだろう。
シャーナはアンジェの言葉を無視し、魔法に集中する。
熱すぎもせず、ぬるすぎもせず、花が咲く温度の火魔法。
(お日様のような……)
花に手を当て、火魔法を手の平に溜める。
調整してると蕾に反応があった。
シャーナはそれを見逃さず、その時の温度に標準を合わせると一気に魔力を注いだ。
僅か数秒の出来事だった。
花は一気に咲いた。
白い花だった。
「終わったよ」
「……そ、そう?じゃあ次あなた!」
そして、ソニアの前に植木鉢は置かれた。
ソニアは無表情に花を見つめる。
しかし、見るだけで魔法を使おうとするそぶりがない。
「ちょっと?何花に見惚れてるのよ。早く水かけなさいよ」
アンジェは呆れたようにソニアに言った。
ソニアはアンジェを無表情で見た。そして花をまた見つめる。
自分の手を押さえながら。
「ちょっとソニ……」
「まぁまぁ、そう怒るなよアンジェ。ソニアは白い花の色を変えたくなかったんだよ」
アンジェがソニアに何か言う前にシャーナがそれを宥めた。
アンジェはシャーナの言う理由に怪訝な顔をする。
「なんでよ」
「白い花が好きだもんな」
シャーナはソニアにウィンクをして見せた。
ソニアはそれを見て何かを察し一応頷く。
「何それ。こっちは早く課題終わらせたいんだけど」
しかしそんな理由でアンジェが納得するわけがない。
アンジェは未だに怒っていますという口調だ。
「あぁ、課題が終わればいいんだろ。ソニア、水適当に出せ」
「うん」
言われた通りソニアは手の平に水玉を出す。
シャーナは先程と同じ温度の火を出した。
そしてシャーナはソニアの水に当て適度であろう温度に変えてしまった。
「なっ!」
驚くアンジェを尻目にシャーナはソニアに言った。
「ソニア、植物にかけろ」
「うん」
植物にかけると花びらは白から赤みがかかった青色に色が変わった。
アンジェは反則ではという顔をした。
確かに教科書の見本は綺麗な青だが、シャーナの魔法も交じったのかちょっと変色しているように見える。
それに元はソニア一人でやらなきゃいけないものだった。
シャーナはアンジェの言いたいことを察し、先に言った。
「教科書には見本とは書いてあるが、ちょっとくらい違っても変わらねーよ。1年のお遊び授業だぜ?一々気にする必要ない。それに課題は色を変えると書いてあるだけで綺麗な青色にしろなんて書いてないから大丈夫だよ。それに共同作業に変わりはないし、課題早く終わるだろ?じゃ、後は任せたお嬢様」
「…………」
早く課題を終わらせられるし、これ以上言っても疲れるだけだと察したアンジェは、不満顔ではあるが何も言って来なかった。
授業はアンジェが仕上げをし、課題はクラスの中で一番に終わった。