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コミュ障がコミュニケーション前提のゲームにリアル乱入しました。  作者: 六桜
一章、導入は王道だからこそ外れない、間違い。
6/6

五話

 ここで重要なのが、ほぼ真上にしか跳べない、という所だ。跳躍系スキルの発動時に付けられる角度はスキル熟練度によって決まるのだが、その補正にも上限値の限界がある。この上限値は色々と努力すれば一応は増えるのだが、それでもゲームである限り、何事にも限界が存在するのだ。

 『world community』内のスキルには、例外なく熟練度が設定されている。ステータス画面では見れない隠しパラメーター扱いだが、その熟練度の効果内容が複雑でなかなかに曲者である。簡単に説明するなら体の部位、系統や属性、上下互換の関係によってスキル性能に増減補正を与えるだけなのだが、その関係性が多すぎ、何より計算式がブラックボックスになっていて攻略サイトの有志プレイヤー達すら半分匙を投げている有り様だ。それでも、有志達が検証した結果と、そこから推測した関係性の法則は、今でも攻略サイトのページに乗っている。

 今なら脚部移動系統スキル初期跳躍スキル発展、跳躍・中の上位互換跳躍・大となる。これで熟練度の関係性を表すなら、移動系統スキル全般の熟練度と跳躍・大自体の熟練度で飛距離が決まる訳だが、跳躍角度はそことは別、格闘系統などに含まれる事の多い脚部スキルで決まる。

 簡潔に言うならば、場所、地形、種類問わず移動系統スキルを使い続ければ結果的に最大飛距離が伸び、格闘系統の足技や移動系統でも足部位を使うスキルを使えば調節角度が増す、という事である。


「どうやって……」


 お互いの攻撃によってノックバックが発生し、一時的に行動不能になったマガグロ。攻撃するにも逃げるにも絶好のチャンスだが、しかし黒芽は動かず呆然と呟いた。

 熟練度による性能補正は、プラス補正だけでなく、脚部なら腕部、移動系統なら行動系統の熟練度によってマイナス補正を受けるようになっており、そのマイナスは所属コミュニティの系統や特色によって限界が決められる。一つ一つはプラス補正を上回る事はないが、それでも集まれば無視は出来ない程の効果を発揮する。

 実際、意図的にある熟練度だけを上げ続けてスキルを使った時と、普通にプレイしてスキルを使った時とでは、目に見えて効果が変わってくる。

 話を戻して、もし占地がやったように跳躍・大で斜めに跳ぶとするなら、それこそゲームプレイ初期の頃から脚部スキルの熟練度を上げ続けて、多分それですらアバターlv300を越える黒芽ですら届かない角度である。

 不可能ではない、システム的には確実に出来る事だろうし、誰だって時間をかければ到達出来るだろうが、けれどそれは無理なのだ。

 現在確認されてるRPGプレイヤーの最高アバターlvが481であり、そのユーザーですら不可能だろう、跳躍系スキルの超地である。


「う、動くっ……動きます……!」


「っ! はいっ!」


 緊張したような、吃りながらの占地の声が飛んで、ようやく黒芽も我に帰った。 

 今は驚きに止まっている時ではない。占地と黒芽の実力ならこのままなら負ける事はないだろうが、勝つ事も厳しいだろう。マガグロはHP低下で行動パターンを変えてくる。今までの行動に加えて、無敵状態(スーパーアーマー)で大口を開けて突進してくる攻撃や、背中から生えている腕を使って全方位に水属性の攻撃などが加わり、更に難易度が上がる。

 さっきの間は間違いなく好機であったが、けれど黒芽が動けなかった故に占地も次の行動に移せなかったのだろう。


「どうする……」


 占地の単独攻略はあくまで、正規の洞窟ダンジョンで出現する1体の時だけだ。こんな広い草原フィールドで2体同時など経験した事もない。

 現実的に考えて逃げの一択しかない。どう考えてもこのままマガグロを二体同時討伐など占地の精神力が持たない。


「もう一度……っ、ノックバックで逃げますっ!」


 何とか言い切った言葉は、けれど言葉足らずになってしまった。

 そもそも、占地一人だけなら逃げる事は出来るのだ。先程のノックバック中だって、黒芽を置き去りに戦闘領域から抜け出せば、転移アイテムないしスキルでどうにでもなった。呆然としていた黒芽だって、占地が動けば我に返って逃げていたかもしれない。

 けれど、それが出来なかったのは黒芽を置き去りにするのが躊躇われた、だけでは決しない。

 確かに、その理由もあったかも知れないが、けれどさっきの間、占地が動けなかった理由は他にある。

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