断章 ―記憶の欠片―
明日から始まるであろう波乱の日々に思いを馳せつつ眠りについた俺は、昔の夢を見ていた。
昔いた、二人の幼馴染と遊んでいた頃の夢を。
――それは今から9年前の事だった。――
俺のかつての二人の幼馴染。
一人は俺の家の隣に住んでいた三枝 玲香。
長い黒髪と垂れ目が特徴的な少女で、普段はおっとりしているが怒ると怖い女の子。
そしてもう一人が二宮 美鈴。
フランス人の母を持つハーフの女の子で、鮮やかな金髪が特徴の、活発で気の強いところがある娘だった。
二人とも俺と同い年で気が合う事もあり、ほぼ毎日のように3人で遊んでいた。
この事は今でも大事な思い出として記憶に残っている。
ところでさっき「昔いた幼馴染」と過去形にしていたが、それにはちゃんとした理由がある。
今はもう、二人とも遠くへ引っ越してしまったのだ。
玲香は7年前に、美鈴は9年前に。
玲香は家が隣だったので別れるときに挨拶できたのだが、美鈴の方は引っ越し前日に俺が事故に遭って数日間意識不明の状態だったため、最後に顔を合わせていない。
事故に遭う前、俺と美鈴はケンカしていて仲違いしてしまっていた。
引っ越し後に連絡を取り合うような事もなく、仲直りできないまま別れてしまった事を今も後悔している。
美鈴は今でも元気にしてるのかな……。
うるさく鳴る目覚ましの音で朝を迎え、ぼんやりとした頭で顔を洗いながら夢の事を思い返していた。
なんであんな夢を……?
俺、疲れてるのかな?
それとも……ミレーユに出会ってしまったからだろうか?
美鈴と同じ、鮮やかな金髪の持ち主である、自分を悪魔だと名乗る少女に。
まあ美鈴は当然人間だったので瞳は赤くなかったし、あんなクールっぽい感じの性格でもなかったからそれ以外の共通点なんてないのだが。
とにかく。
今日からはミレーユも学校に来るって言ってたし、ミッションも本腰を入れて始める事になるのだから、昔のことは一旦置いておいて。
覚悟決めていきますか。