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あくまでもヒロインは悪魔です  作者: 紅烏
ナンバーズ・シックス
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new friend

 俺が森先生に窃盗の証拠を突き付けた後。


 これ以上言い逃れは出来ないと観念した森先生は、その場にへたり込んでしまった。

 それから六角が他の先生を屋上に呼んできてくれて、その先生に事情を話して証拠を渡し、後処理を任せる事になった。

 俺達は下校時刻が迫っていた事もあり、屋上を離れ下に降りたところで


「ごめんなさい、六角さん。」


 谷野が窃盗の疑いをかけて嫌がらせしていた件について六角に謝った。

 六角の方も


「いいよ。もう気にしてないから。」


 と返し、ひとまずは仲直りする事が出来た。

 色々ゴタゴタしてしまったが、これでようやく一件落着だな。


 その後、谷野は陸上部の片付けがあるのでそのまま急いで部室に向かっていった。

 それから俺達三人が校門を出たところで、六角が話しかけてきた。


「あの……一ノ瀬君、ミレーユさん。今回は、本当にありがとう。二人が助けてくれなかったら、あたしどうしようもない事になってたと思う。」

「気にする事ないわ。私達は当たり前の事をしただけよ。」

「ああ。俺達が勝手に首を突っ込んだだけなんだから、気にするな。」


 ミレーユと俺がそう返すと、そこで六角は顔を上げて


「それで、その……もう一つ、お願いがあるんだけど……」


 何やら言いにくそうに少しモジモジして目を逸らしつつ、六角はお願いをしてきた。

 俺とミレーユは顔を見合わせ、「まさかまだ何か問題があるのか!?」と思いながら六角にお願いの続きを促した。


「もし良かったら、これからもあたしと友達として付き合ってくれないかな? 今まで一杯迷惑かけたし、もしかしたら嫌がられるかもだけど……」


 若干目を伏せつつ、上目遣いながらも俺とミレーユに「友達になって欲しい」と言う六角。

 う~ん……特に断る理由もないし、まあいいか。


「いいよ。俺は構わないけど。」

「そうね。特にダメな理由なんてないし、私達で良ければ。」


 と、俺達は返答した。

 返事を聞いて、六角は嬉しそうな笑顔を浮かべ


「じゃあ、これからあたしの事名前で呼び捨てしてくれていいから、あたしも二人の事名前で呼んでいい?」

「六角の下の名前って……朱音、だっけ? それで呼べばいいのか?」

「うん。それで合ってるよ、和也君♪」


 と明るく元気な感じで返してきた。

 隣にいるミレーユが若干イラッとしたような気がしたが、ふとミレーユの方を見てもいつもの無表情に近い顔だ。

 そしてミレーユは朱音の方に向かって一歩出ると


「では、これからよろしくね、朱音。」

「うん。こちらこそよろしくね、ミレーユ!」


 とお互いを呼び捨てで呼ぶ事になったのだった。


 ――――――――――――――――――


 それから俺達は互いの携帯の連絡先を交換して、校門前で別れた。

(ちなみにミレーユの携帯は先週の土曜日、買い物に連行された際に購入している)

 帰りに近くのスーパーに寄って買い物してから帰ったので家に到着したのは19時頃だった。

 思ったより遅くなってしまったのでいつもより少し手抜き気味の夕食を作り、ミレーユと二人で夕食を食べていた時。


「少しいいかしら?」


 ミレーユが唐突に話を切り出してきた。

 俺は首を傾げつつ


「どうしたんだ?」

「いえ、私の気のせいだと思うのだけど……今日の帰り、誰かに見られていたような感覚がしたの。」

「誰かに? 何か心当たりでもあるのか?」

「特にはないのだけど……でも、あの感じは……」


 珍しく言い淀んだミレーユに対し、頭に?マークを浮かべる俺。

 しかしまた何か厄介事が起こる可能性があるのなら、放置しておくわけにはいかないだろう。


「もし何かあっても困るし、間違っていても構わないから教えてくれ。」


 と、俺は話の続きを促した。

 それに対して返ってきたのは


「あの感じ……あれはおそらく、人間じゃない。あれは私と同じ、悪魔かもしれない。」

「なんだって!? お前の他に、悪魔が近くにいるかもしれないって事か!?」

「ええ。断言は出来ないけどね。」


 予想外の答えに俺は暫く呆然としてしまった。

 以前にもミレーユ以外の悪魔がいると聞いた事はあったが……近くにそいつは潜んでいるかもしれない、って事か!

 いや、でも悪魔は罪人の減少・撲滅のために活動しているわけだから、何か悪事を企んでいるという事はないだろう。

 接触して協力関係を結べれば、今後のミッション遂行に役立つのは間違いない。


「貴方こそ心当たりはないの? 急に他の悪魔が身近に現れるなんて、何かきっかけがあるかもしれないわよ?」

「きっかけ、ねぇ……」


 頭を捻るが、特に思い当たる事はない。

 ミレーユ以外の悪魔を見かけた事なんてないしな。

 悪魔の特徴である赤い瞳をした奴がいたら目立つだろうし、その時点で気付くはずだ。


「特には思い当たらないな。先週買い物のために街に出た時にでも見つかったんじゃないか?」

「そうなのかしら? でもそれ以外に思い当たる節は、私にもないわね。まあアレが悪魔だとはまだ断定できないし、今はこれ以上考えていてもしょうがないわ。この話はここで止めにして、とりあえずは今後お互いに気を付けるようにしましょう。」


 また何か面倒な事にならなければいいが……。

 少し不安に思いながらも、俺も保留する事に賛成した。


 ――――――――――――――――――


 その後。

 俺達は話題を変え、以前にも相談した部活の勧誘の件について話し合った。

 ひとまず朱音の方はこれ以上誘ってくる事はないだろうが、それ以外にもアプローチしてくる部活はたくさんある。

 そこでミレーユは、俺にある提案をしてきた。


「あれから色々考えてみたのだけど、『私達で何か部活を立ち上げる』というのはどうかしら?」

「なるほど、その手があったか!」


 確かにその方法なら部活に入った事になるし、既存の部活のように他の人間が最初からいるという事もないので、こちらもミッションのために動きやすい。

 俺も特に反対する理由はなかったので


「じゃあそれでいこう。今度の月曜日にでも部活の設立申請を……って、待てよ?」

「どうしたの?」


 何処の学校でもそうだろうが、部活の設立申請はそう簡単に通るようなものじゃない。

 生徒が好き勝手に部活を作れるようであれば、あれこれ乱立するのは目に見えている。

 俺は部屋に置いている学校の鞄から生徒手帳を取ってリビングに戻り、調べてみると。


「部活の設立には、3名以上の部員が必要。」


 他にも色々規則はあるが、一つだけクリアしていない規則がコレだった。


「三人って……俺と、ミレーユと……あと一人足りないな。」

「あと一人見つけられなければ部活は設立できないという事ね。残念だけど、諦めるしかないのかしら?」


 残念そうに呟くミレーユ。

 何とかしてやりたいのは山々だが、さすがにこれはどうしようもない。

 残り一人の部員を調達するにしても、その部員と顧問の先生に対して「悪魔との契約を果たすための部活動」という事をどう誤魔化すのかという問題がある。

 真の活動目的を誤魔化せる、丁度いい建前が必要だろう。

 さっきの話題に引き続き、こちらの件についても一旦保留しておく形になった。

 食べ終わった夕食を片付け、お風呂に入ってから俺は自分の部屋に戻った。


 ――――――――――――――――――


 部屋に戻り、ベッドに寝転びながらぼーっとしていると、携帯に着信があった。


「六角……いや、朱音から?」


 時間は22時を回っているが明日は土曜日なので、こちらとしては問題ないのだが、何の電話だろうか?

 そう思いながら俺は電話に出た。


「もしもし、朱音?一体どうしたんだ?」

「あ、和也君? その……大した事じゃないんだけど、明日って空いてる? もし良かったら、今回のお礼がしたいんだけど。」

「お礼って……そんなに気を遣わなくていいぞ? 大体、土日は病院にお見舞いに行かなきゃならないんだろ?」

「うん。でも、お母さんの方も具合が良くなってきてるみたいだって今日連絡があって。それで明日は午前中だけ病院に寄るつもりだから、午後からはどうかな?」


 明日の午後ねぇ。

 俺は特に予定はないが、ミレーユの方はどうなんだろう?

 そう思った俺は


「俺は大丈夫だけど、ミレーユの方はわからないからちょっと聞いてくる。」


 と返したのだが、朱音は何故か焦った様子で


「え!? い、いや、ミレーユの方はまた別の日にお礼する予定になってるから大丈夫! だから、今回は……ふ、二人だけで、どう、かな?」


 何だ、ミレーユの方とは既に話がついてたのか。

 それで俺の方にこうして連絡してきたんだな。


「わかった。じゃあ集合の日時と場所はどうする?」

「13時に学校近くの円間公園でどう?」

「了解。」


 明日の約束を交わしたところで、互いに「お休み」と挨拶して電話を切った。

 が、そこで急にある不安が込み上げてきた。


 俺が明日出かけている間、ミレーユを一人で家に置いといて大丈夫なんだろうか?

 あいつは普段しっかりしてるように見えて、所々抜けているしトンチンカンな事をやらかすのだ。

 また何かやらかしたら不安だし、一応注意しておくか……。

 そう思い、俺はミレーユの部屋に向かった。


 ――――――――――――――――――


 ミレーユにドアを開けてもらい、彼女の部屋に入った俺は、明日出かける事とくれぐれも余計な事をしないようにという旨の注意をした。

 が、肝心のミレーユはというと俺の注意が聞こえていない様子だった。

 何故かというと。


「そんな……明日、和也が朱音と二人でデート? 嘘よ、嘘嘘嘘……私、婚約者なのに……」


 俺が明日朱音と二人で出かける事を伝えてから、ずっとこの調子なのだ。

 朱音の奴、ミレーユにお礼の件を話していたんじゃなかったのか?

 というか、前にも何度も言っているが俺とミレーユは別に婚約してないし、そもそも明日出かけるのはデートでも何でもないからな?

 大体、人間と悪魔が婚約っておかしいだろう。

 とりあえず、コイツに何かやらかされても困るので


「デートじゃない。お礼をしてくれるっていうから付き合うだけだ。だから勘違いするな。」


 俺はなるべくミレーユを刺激しないようになだめた。


「本当、なのね……? 嘘じゃない、のね? 約束してくれる?」

「ああ。約束するから、明日は大人しくしててくれ。」

「……わかったわ。」


 少し泣きそうな表情ながらも一応は納得してくれたようだ。

 さすがにちょっと罪悪感がないわけではないが、デートでないというのは本当なんだし、問題ないか。

「お休み」と告げてから俺はミレーユの部屋を出て自分の部屋に戻り、その日は眠りにつく事にした。

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