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<<Chrono Drive Online>>(仮)  作者: Wizadm
2Chapter//VR Research Club
22/26

9.深海の児戯 前編

すいません、前回週1とかほざいた結果がこれです。

誠に面目ないです…


今回は前、後編に分けることにしました。

最初はこの話中にレイド戦は終わらせて次で次章への引きに…と思っていたのですが、如何せん書いては直し、書いては直し繰り返しモチベーションが下がりだしまして、ええ。

一度途中で切って前、後編にしてモチベーションをマイナスから0まで戻すことにしました。




どこから取り出したのか大きな鉈を振り横薙ぎに攻撃して来る人形(ボス)

それを盾を持った前衛たちが4人がかりで何とか押し戻す。

完全に守り切った様に見えるが、それでもやはりダメージはある様で、その度に目の端に移るユースケとツッキー♪のHPのゲージが僅かにだが、確実に減る。

しかしそれは相手側も同じで、少しずつだがダメージが入り、ゲージに目に見える形で現れ始めた。

さらに追い討ちとばかりに押し戻したことでよろめいた人形(ボス)にダメージディラーである中、後衛のスキル攻撃が殺到する。

もちろん俺自身何もしないのは沽券に関わるので、『ストップ』で鉈を持っている右手と左の足を地面に縫い止めている。


この人形はレイドボスとしては、かなりしっかりしたゲームバランスを感じられる。

油断しているとやられそうだけど、しっかり役割をこなしていれば最後には達成感を得られそうな、そんなバランスだ。

そして、ついにボスのHPの4分の1を削り取り、ボスのHPを表すバーが緑から黄色へ移ったときだ…


「よし、この調子で…」


勢い付いた誰かがそう口走った。

確かにこの調子なら、然程苦戦しなくても勝てるだろう。

――そう、終始(・・)この(・・)調子(・・)なら。


「な、なに…!?」


全員がハッとして構える。

呟かれ、漏れ出た声ではなく…足元に現れた、どす黒い血で書かれた様な不気味な魔方陣に反応して。


「これは…!全員一度前衛の後ろに集まれ!召喚系の魔方陣だ!」

「え、そうなんですか!?でも、私が使ってんのと違ってるですよ!?」

「当たり前だろ。シラナギのはゴーレム系の召喚魔法だけど、これはアンデット系だ」


全レイドメンバーが下がりきった頃には、足元から生えてきたとしか形容できない10体程のゾンビの群れが襲い掛かってきていた。

レイド級が厄介なのは何もやつら単体の能力だけじゃない。

もっとも厄介なのは、この取り巻き召喚然り、突然行動パターンを変えて来る所にある。


「前衛以外はゾンビを1体残して、各個撃破!スピード重視で殲滅!前衛は今まで通り奴のヘイト値を稼いでいてくれ!そっちの援護に回れそうもないから、攻撃よりも回復重視で頼む!」

「リュート!背中任せるから、できるだけ早く蹴散らしてくれよ!」

「わかった。それよりユースケ?」


信頼してるぞ、とでも言いたげな表情で軽口をたたいてくるユースケに妙な安心感を持ちながら、お節介に1つ忠告してやる。


「前、来てるぞ」


ユースケが言われたとおりに前を向くと、頭上から振り下ろされる1本の大きな鉈が…


「は?…早く言えぇぇぇぇ!?」


すると、ユースケは慣れた手つきで即座に防御の体制に入った。

文句より先に感謝の言葉をくれよと、言おうとしてやめた。

感謝の言葉を聞きたくてやったことじゃないからな。


「ユースケ君?よそ見とは随分と余裕な様だ。一人でやってみるかね?」

「は、ははは、ゴジョウダンヲ…」


まあ、ユースケは会長に任せておけばいいか。

そんなことを考えながらも、ほかのメンバーより少し遅いが遅れていると言う訳でもない速度でゾンビを屠って行く。

2分もかけず、ゾンビは1体を残し全滅した。

リニューアル前から、取り巻き召喚は取り巻きを全て倒しきっていないと、次の取り巻きは呼び出さない。

しかし、1体とはいえ取り巻きを放って置くと危険な為、大概は何人かでその1体の足止めをして、他のメンバーでボスの相手をするといった方法をとる。

今回は――


「我は創り出す者、我が思いに答え形を変えよ――『人形創造・ヘイトポーン人形』」


ユーリスこと、四月朔日部長にスキルで用意してもらった。

壊されない限り、人形にロックされているエネミーのヘイト値を僅かずつだが勝手に上げ続ける人形。

ちなみに軽い衝撃で効果が切れるため、投げたり落としたりしてしまうと効果が切れる。

…余談だが、スキル名以外は特に言う必要はない。


「風理よ!任せたぞ!」

「フフン、任せてよ」


人形を遠くに設置し、人形に相手が近づいて来たら人形を遠ざける。

この簡単な作業だけで、ゾンビは脅威ではなくなる。

Agi.の低いゾンビだからこそできる作戦だ。


「よし…後衛は余力を残しつつ攻撃開始!中衛も出来るだけヘイトを散らす様に固まらずに動け!」


作戦の成功を頭の隅に留めながら、ゆっくりゆっくりと時間をかけてボスを屠りにかかる。

これは目測だが、おそらく次の攻撃パターンの変化はHPが半分を切った時だろう。


「それにしても順調に行くな。『ストップ』もっと誰かから反対とかされたりするかと思ってたんだけど…」


ちょっとした余裕が生まれ始めたことで思考が脱線を始めてしまう。

そういえば何時からだったかな、こんな風に自分を卑下して考えるようになったのって。

思えば、このレイドを組むことになった時だって、俺はリーダーはミィやツッキー♪の方がいいって言った。

なのにみんなが俺をリーダーに押した。


「君の方がこういうのには慣れているだろ?私は初心者だぞ」「ボクはリュートが適任だと思うけどな」「そ、その、ホラーは苦手ですから…」「ミィちゃんがいいなら、私たちもあなたでいいです」


ちょっと前までソロでしか動いたことないって言っているのに、期待された…

今だって期待に応えられない事が怖くて、リニューアルする前に見た指揮官の指示を必死で模倣してるに過ぎないのに。

俺はそんなに立派な人間じゃないと、声を大にして言いたい。


少し前までは、人に嫌われるのが怖くて、自分からは極力関わらない様にしてたのに…今は友達がいて…

最近じゃあの妹も、少しだけ会話してくれるようになった。お金の打診以外で…

きっと、俺は変われていないだろう。

じゃあいったい、何が変わったんだろうか。


「そろそろボスのHPが半分を切るぞ!」

「サクッと殺っちまうですよ!」


仲間の声に脱線していた思考を振り払い、我に返る。

しかし、ボスのHPを見ると、おかしなことに気が付いた。


「え…?は?」


俺には、HPはもう半分を下回っているように見えるのだ。

そう、どう見てもHPは半分を下回っている。

そして、それ以上に目に付くのはいつの間にか増えている10体のゾンビ達…


「な、にが…」


俺は少しの間目を離していただけだったはずだ。

なのに、いったい何があった。

それに…何だろうか、この違和感は…


「まさか…気付いてないのか?」


ゾンビが段々と寄って来ているのに誰も見向きもしない。

誰も彼もがゾンビなんていないかのように動いている。

つまりは俺だけに見えている?

パッと思いつくだけでも幾つかの可能性が浮かんだが確実に言える事は、みんながおかしくなっているか、俺だけがおかしくなっているかの完全な二択であるということと、この状態異常が精神系の異常状態であるということだ。

だとすれば、まず怪しむべきは自分自身だ。

精神異常系の回復薬、これを飲めばいい。いい、のだが…この薬、とんでもなく不味い。

コーラを食パンに染み込ませて、上からチョコレートをかけた後、トーストにした物位不味い。


「う、ううっ…」


それを少しだが、ごくりと音を立てて一気に飲み下す。

すぐにみんなの方を見る。

どう見ても、さっきと何も変わらない光景だけがそこにあった。


「…ということは、みんながおかしいわけだ」


それにまともに見えなくなっているのはボスのHPとゾンビだけの様で、ボスの攻撃にはしっかり反応してるように見える。


「ならまずは――!!」


後衛に向かって進みだしているゾンビを倒す。

一番近くにいるゾンビに向かって『ストップ』を使い、剣で首の辺りを6回ほど切り裂き、ポリゴンになって消えるのを横目で見ながら、次のゾンビに切りかかる。

ゾンビが振り返るのに合わせて常に後ろに動き、止ることなく切り続ける。

そして、最後の1体に一度だけ切り付けて、そこから一番遠くにいたユーリスに『ストップ』をかけ、薬を口の中にねじ込む。

動けなくした少女の口に異物をねじ込むのは、絵的にも文章的にもやばい気がしたが背に腹は変えられず、躊躇わずにやった。

ストップで止まっていたユーリスが動き出すと薬の入ったビンを噴出し、ゲホゲホと(むせ)だした。


「ゲブッ!?何これ…酷い味だよ…」


涙目で(むせ)ながら抗議の目を向けてくるのはよしてほしい。


「早速で悪いけど、ボスのHPはどれくらいに見える?」


一応確認の為にボスのHPを確認してもらう。


「し、仕方ないな、友の頼みとあらば見てやr…あれ?い、いつの間にあんなに減って…」


仕方が無いと疑わしげにボスの方へ向くと、自分の目が信じられないのか目を擦ったり何度も瞬きしたりと忙しなく動き始めた。


「よかった。初級ので解除できるみたいだ。この薬渡すからみんなに飲ませてくれる?」

「よ、よくわからないけど、わかった、ぞ?」


どう見ても理解が追いついていない顔をしているのにやってくれるらしい。

そんな風に疑いもせずに言われると、暗に信用していると言われているかのようでこそばゆい。

自意識過剰かもしれないけど…


何はともあれ協力してくれるらしいユーリスに5本のビンを渡してすぐにその場を離れる。

長く話しすぎたのか振り返れば、すぐ後ろまでゾンビが来ていた。

次の目標はここから一番離れた中衛の子。

またしても『ストップ』をかけて、口の中にビンの口を開けて放り込む。

これまた、繰り返し作業よろしく確実に飲ませていく…


それにしたって俺以外の全員が状態異常になるなんていったい何が…

いや、まあおそらくだけど何が起こったかの予想は付いてはいる。

それが起こった瞬間は、俺が自問自答なんて馬鹿らしいことをしていたときで間違いない。

その間に起こったであろう事で俺が知っていることは――


・ボスのHPが半分以下になった

・俺以外のみんなが状態異常にかかった

・いつの間にかゾンビが再召喚されていた


――この3つ。


もうほとんど状況証拠と強引な憶測だけど、事の起こりはボスのHPが半分以下になったこと。

つまりは攻撃のパターンが変わり、何かしら違う行動を起こすようになった。

その何かしらの所に状態異常を引き起こす技があったと考えられる。

さらに、もしそうだとすれば状態異常を引き起こした方法も想像出来ない事はない。


俺になくてみんなにあったこと、もしくは俺しかしていなかったこと。

ボス戦中にボスから目を逸らす様な事は普通しない。

あの時俺は考える為に自分以外に目を向けていなかった。

だからこそ俺は状態異常にかかっていない。


俺はそういう風に結論付けることにした。

ウダウダと考えても動きが鈍るだけだし、何か強引にでも答えを得ているのといないのとでは考えられる範囲が違ってくる。


例えば、状態異常にする技は一度しか使えない、もしくは使ってくるのに制限がかかってるなんてことも考えられる。

そう思った理由は俺の後ろから付いてくるあのゾンビ。

1体だけ残していたにも拘らず、いつの間にか再召喚されていた。

しかし、再召喚されるには召喚されたものが全滅していなければならない。

そうなると、残しておいた1体を誰かが倒したとしか考えられず、この状態でゾンビを倒すなんてことをできるのは、このレイドのメンバーしかいないわけだ。

でも、1体だけ態々残しておいたゾンビを倒す様な馬鹿はいないので、状態異常にかかった誰かが何かと間違えて屠ったとするのが一番自然な気がする。

要するに、だ。あのゾンビが倒されない限りは、新しく状態以上になった味方はいないってことだ。


以上、考察終わり。


「よっと。…もう前衛以外で薬を飲んでないのはいないよな」


ようやく追いついた風理に『ストップ』をかけて、薬を流し込みながら回りを見渡して、苦虫を噛み潰した顔をしていない人物がいないことを確認する。

ユーリスも二人に飲ませてくれたようで中後衛には状態異常にかかっているメンバーは見受けられなかったので、後飲んでいないのは前衛だけだと見切りをつけて、前衛に1人ずつ後ろに引く様に指示をだす。

しかし――


「おいユースケ?聞こえてるだろ!後ろに引いてくれって!おい!」


どういう訳かこちらに視線を向けることすらしない。

…今までと同じように『ストップ』かけて無理やり飲ませよう。そうしよう。


「反応しないやつが悪いんだよな…中後衛で回復が使えるのはいるか!前衛に1人ずつ薬を飲ませるから残った前衛の回復をできるだけ優先してくれ!」

「は、はい。そんなに使ったことないから、ちょっと時間がかかるけどやってみましゅ!」


少し噛んだけれど、後衛の子に1人だけいたらしい。

自分が重要な所で噛んでしまったのを理解したのか、みるみる顔が赤くなっていく。

どうしよう。すごい不安だわ…


「背に腹は云々だな…」

「え?」

「いや、なんでもない。お願いするよ」

「ひゃ、ひゃい!」


……………

……


やっぱり不安だわ。


「さてと…」


ボスの攻撃が終わった瞬間を狙って、一番HPが減っていたユースケに『ストップ』をかけて引き摺る。

そしてさっきまでと同じように、無理やり口の中に薬を瓶ごとねじ込む。

6秒たってユースケが元に戻ると…


「エ゛!?グ ウッ?エェェェェ…!???!!!?」


相当不味かったのか、必死の形相で吐き戻そうとして失敗して気管に詰まりそうになったらしくもがいて酷いことになっていた。

とりあえず無事そうなので、他の前衛メンバーの方に振り返ると、さっきまでと変わらずに攻撃を防ごうとしていて、どう見てもユースケがいなくなっているのを気にしていない、もしくは気付いていない様に見えた。


「あぁ、いったいなんでこう…面倒くさいボスに当たるんだろうな…」


一瞬で全体に状態異常、しかも精神や五感にくる様なものなんて、普通はもっと高レベルなダンジョンで出るべきだろ?

もうこうなってくると初見殺しを疑うね。

初めてここに来たプレイヤーを全滅させてやろうという意気込みを感じるよ。

引っ掛からなかったプレイヤーがいないと、何が起こったのか分からないままにゾンビにゆっくり殺されそうな気がする…


「次はツッキー♪に飲ませるか…」


未だユースケがいないままでボスの攻撃を受け続けている残り3人の前衛を見ながら、次に飲まし易い人物を選んで薬のビンを取り出そうとしたときだった。


――ボスのHPが4分の1を切った。


きっとそのときその場にいた全員が――いや、前衛の3人を除いた。だろうか?

前衛の3人だけはその大きな異変に気が付いていない様だった。

その3人を除いた全員がきっと、一瞬訳が分からなくなっていたと思う。


まだボスのHPは残っているというのに、人形が――


――崩れ去っていた。


感想や言いたいこと、もっとこうしたら良いなどのアドバイス、果ては辛口なコメント、評価まで、心待ちにしておりますゆえドシドシ頂けると嬉しいです。


尚、キャラクター人気投票は次話掲載の1日後に締め切る予定なので、入れてくださる場合はなるべくお早く入れてくださるよう伏してお願い申し上げます。

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