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果たし状
市場での一件から数日。
村は噂で持ちきりだった。
「小柄な少年がマスタルを止めたらしい」
「しかも、剣を握ったこともないとか」
話は尾ひれをつけて広がり、ナナイの名は一夜にして知られるようになった。
だが、本人はいたって冷静だった。
噂など気にしても仕方がない――そう自分に言い聞かせていた。
そして――。
ルヴェイン家の戸口に、一枚の紙が突きつけられる。
大きく、黒々とした文字。
果たし状。
挑戦者はマスタル・デラクロワ。
場所は白嵐流 剣術道場。
木剣を用いた一騎打ちを申し込むとあった。
リアは顔を青ざめさせ、震える声で言った。
「ナナイ、行かないで。あの人、本気で傷つけるつもりだよ……!」
ナナイは紙を握りしめ、手のひらの熱を感じながらも、静かに首を振った。
「逃げられない。あの時、僕はもう立ち向かうって決めたんだ」
言葉に迷いはなかった。胸の奥で、何かが確かに弾けた感覚があった。




