大将戦:ナナイ vs カイリ
「大将戦! 白嵐流、ナナイ! 炎流、カイリ・フェルナー!」
小柄な少年が場に立つと、観客席からざわめきが広がった。
「子どもじゃないか……」
「いや、あの名を聞いたことがある」
対するカイリは炎流師範カロスの甥。堂々たる体躯を誇り、長剣を振るう姿は、まさに炎の猛者そのものだった。
「こんなチビが大将だと? ちびっ子剣術と間違えたのか?」
カイリの挑発に、炎流の練習生たちも嘲笑を重ねる。
試合開始。
「来い、小僧!」
大地を震わせる一撃。ナナイは長剣で受け止める。技は冴えていた。しかし――
「重い……っ!」
次第に腕に痺れが広がり、体が悲鳴を上げる。
観客がざわめく。
「無理だ……体格が違いすぎる」
「剣の方が大きく見える……」
カイリの猛攻に追い詰められ、ナナイはついに長剣を捨てた。
両腰の短剣を抜き、静かに構える。
「短剣……? そんな邪道で勝てると思うなよ!」
カイリが怒声を上げる。
ナナイは深く呼吸し、目を細めた。
「僕には、これしかない。」
次の瞬間、ナナイの体が疾風のごとく動く。
二本の短剣が閃き、交差する一閃がカイリの防御を切り裂いた。
「なっ……!?」
カイリの長剣が宙を舞い、巨体が崩れ落ちる。
「勝者! 白嵐流、ナナイ!」
広場は爆発するような歓声に包まれた。
「すごい……!」「あの小さな体で……!」
「短剣だぞ……? 新しい剣だ!」
ナナイは息を切らしながら短剣を収める。
大歓声が渦を巻き、白嵐流の若き剣士が炎流の猛者を退けた事実に、観客たちは興奮し、口々にナナイの名を叫んでいた。
だが、その熱狂の中で、別の声が混じり始める。
「……短剣だと?」
「いや、あれは剣術ではない。反則まがいだ」
「白嵐流も地に堕ちたか……」
次第に囁は広がり、歓声とざわめきが入り交じる。
炎流の師範カロスは顔を紅潮させ、怒声を張り上げた。
「ふざけるな! 短剣など剣ではない! 小手先の小細工で勝ったつもりか!」
彼の言葉に、炎流の弟子たちは一斉にうなずき、観客の一部も同調する。
だが、倒れ込んだカイリだけは、荒い息の中で呟いた。
「……いや……あれは……確かな剣だ…俺の完敗だ…」
白嵐流の弟子たちにも動揺が走る。
「本当に認めていいのか……?」
「正統の白嵐を汚すことにならないか……」
ルークは腕を吊ったまま、気絶から目を覚まし、ナナイにかすれた声をかけた。
「……お前の剣は……俺たちを救った……それで十分だ……」
ヘイク・ノウルは弟子たちを見渡し、静かに口を開いた。
「……白嵐の型は長剣が本流。短剣はあくまで支流の型。故に邪道と呼ぶ者もおろう。だが剣は心を映すもの。道を選ぶのは己自身だ」
ナナイは観客の冷たい視線を感じながらも、両腰の短剣を握りしめた。
胸の奥から湧き上がる確信――
――たとえ邪道と呼ばれても、この剣は僕の道だ。




