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R氏の体験談:「霧の中のコンビニ」

 お久しぶりです、佐藤です。

 知り合いのR氏から、似たような話を聞けたので、ここに書いていこうと思います。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 久しぶりじゃないですか、いつ以来ですっけ。あ、そういえば、飲みに行きましたね。

 えっ……。あの時に話してたこと?

 ……あー、確かに話しましたねぇ。


 あれでしょ?『変なコンビニに行ったんですよ~』って話したやつ。


 俺が多分ガキの頃なんで……十年ぐらい前の話なんすけど。小学校の高学年くらいだったはずっすね。

 俺そん時変なやつらとつるむようになっちゃって。DQN?ですっけ、今だと。

 と言っても、仲間というよりかはパシリみたいな。

 コンビニで万引きしてこいって言われたんすよ。「初心者だから、ちっちゃいのでいいよな」とか意味わかんないこと言ってたんすけど。

 放課後に、学校から一番近いコンビニに行ったんすよ。

 確か年寄りがやってるコンビニが何かで、結構ゆるかったんです。色々と。

 万引きしようぜみたいな話をしてて、そいつらに連行されて。何時かな?多分、学校終わりだったんです、午後3~4時ぐらい?

 ただなんか、その時おかしくて。

 天気がおかしかったんすよ。

 確か晴天だから、雲一つない晴れ模様だったんすけど。

 なんか、その時だけ、急に霧が出てきて。

 あーそうです、まじそう、この前も霧すごかったじゃないですか?

 飲みに行った時に、あんな感じで、もうそもそもなんかすぐ近くも見えないみたいだ


 で、まぁ断れないじゃないっすか、やっぱり、そのなんていうの?

 ま、当時は悪いやつらではあるけど、友達って認識だったし。

 ハブられる方が、学生ってやばかったじゃないっすか?

 ただ、こっそりとポケットに金持っていきました。100円。

 レシート貰わなきゃ、ばれないかなって。


 いつものコンビニに入ったんですけど。あの、学校の近くにある。

 なんか、人がいないんすよね。

 午後の時間なら、人いるし。というか、俺らみたいなガキもいるはずなのに。

 誰もいなかったんですよ。

 なんなら、店員の爺さん婆さんもいなかった。


 そこはあまり気にしていなかったです。爺さん婆さんが出てくるのって、レジにあるベルを鳴らしたときだけなんで。

 何もないままに戻ると悪い奴らに何されるか分からないし。

 コンビニ入って、棚見て。

 しゃがみながら物色しているときに、気づいたんすよ。


 そういえば「いらっしゃいませ」って言われてないな。


 年寄りなんで声、でかいんすよ。

 耳が聞こえにくいのか、すっげぇでかくて。

 でも、そのとき何も聞こえなかったんですよ。

 ほら、コンビニってCMとか音楽とか流れてるじゃないですか?

 あと、ドアくぐると「いらっしゃいませ」とか音楽が流れるじゃないですか。


 一切、聞こえないんですよ。


 いや、男の声は聞こえてたかな。ただ、歌っているのか喋ってるのかは記憶ないっすね。

 なんとなく、居心地悪くなっちゃって。

 さっさと戻ろうと思って、チョコをポケットに入れたんすよ。


「坊やぁ、ポッケに間違って入れた物。出しな」


 冷たい女性の声だったはずっす。

 ぞっとしました。

 誰もいなかったはずなのに、背後から声が聞こえてきたんですから。

 当時の俺の身長よりも高い場所から声が聞こえてきたんで、「天井に何かいる!?」と思いましたからね。

 冷や汗ダラダラっすよ。

 万引きもダメですけど、それ以上にやばいなって思ったことあるんすよ。


 俺、小さいころから使ってたコンビニなんすよ。

 初めて聞いた声なんすよ。

 なんというか……。さっぱりした女性の声というか。

 新しい人でも雇ったのかな?と思ったんですけど、そんな余裕がある店に見えなかったんで。


 で、目の前の棚を見つめることしかできなかった。

 振り向けなかったす。振り向いたら、ダメな気がして。

 ちょうど、「古事記」の授業やってたんで。

 小学生で?って今なら思いますよ。先生が、古典好きで。脱線してたんです。


「形式上、金を払ってもらわなきゃね。出せないからさぁ」


 ぐるぐると考えが回ったんですけど、これ払わなきゃダメだって。


「すいません……」


 ポッケに手を入れながら、振り向こうとしました。

 ガキだったんで、謝るときは顔を見なきゃって。

 ただ、その人が俺の頭に手を置きました。


「ちょいまち。振り向かずに、レジに来な」


 いや、なんでだよ。

 そう思いつつも、言葉に従いました。

 立って、横歩きで棚を通り過ぎて、通路が見えたら歩いて。

 で、レジに行きました。

 多分、さっきの人でしょうね。細目で、ニコニコしてて、メガネをかけて、背が高い女性が手を振ってました。


「お、偉い偉い。ほら、出しな」


 そのまま普通に買い物しました。でも、問題があって。

 足りなかったんですよ、金。

 で、どうしようと思って。


「すいません……あの……お金なくて……」

「ん?じゃあ、ある分だけでいいよ」

「え、でも」

「いいんだって。形式上だから、いくらでも」


 言われて、ポケットに入れておいた100円出しました。

 値段?……多分、税金の分じゃないすか?今もやっちゃうんですよねぇ。……はい、気を付けます。

 この話は終わりです。

 ……え、最後どうなったか?

 あんまりいい話じゃないっすよ?


 俺は戻れました。チョコ渡して、レシートは渡さずに。

 なんとなく、食べたくなかったんで。


 いや、怖いじゃないですか!

 何が入っているかもわからないのに。

 だから、そいつらに渡しました。普通に食べてましたし、何もなかったはずです。

 ……はずってどういうこと?ですか……。


 俺がコンビニ行った翌日、そいつらいなくなったんですよ。


 最後に会ってたのが俺だったんで、警察とそいつらの親が来ました。

『どこに行ったか、知ってる?』

 で、知らないって答えました。マジで知らなかったですし。


 ただ、あいつらは多分コンビニにいるんじゃないですかね。

 万引きってことは、「対価を払わない」ってことじゃないですか。

 仮説ですよ?仮説。


 あのコンビニは、「対価を払わないと、出られない」んじゃないかなって。

 命じゃなくて、「金」金額はいくらでもいい。

 もしかしたら、まだコンビニの中にいるんじゃないですか。

 もう関係ないですしね、俺には。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


以上がR氏の体験談です。

次ページで、ここまでの情報をまとめようと思います。

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